女子力は足元から│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

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女子力は足元から

2014-06-09 11:02:00

 先日、女3人で宮古島に行ってきました。20代の頃から何度も一緒に旅行をしているメンバーですが、年々早まる就寝時間と起床時間に老化を感じざる得ませんでした。真っ白い与那覇前浜ビーチに、やや無理のあるビキニ姿で横たわりながら妙齢3人(1人は既婚者なので3人合わせた総合力はゼロではない)で女子力について談義していたのですが、ひょっとして女子力というのは成長ホルモンのように体内で作られる物質で、それは例えば15~25歳の期間の女子にしか生成されないとか医学的なものかもしれない、だとしたらもう手遅れではないか、などと話していました。そのうちそんな論文が理化学研究所から発表されるかもしれないですね。そうなったら諦めるまでですが、今はまだ女子力向上の可能性を信じ努力して、カラオケで『逢いたい』とか『切ない』とか『眠れない』とか歌って可愛いと思われたい。

 その宮古島旅行で気づいたのですが、「最近抜け毛が激しい」「夕方のまぶたのくぼみが半端ない」と上の方ばかり気にしていた女3人の足元を見ると誰もヒールを履いていませんでした。もちろんビーチに行く時はビーチサンダルですが、以前だったらみんな1足はヒールを持ってきていたのですよね。それが昼も夜もぱたぱた、ぺたぺた。だって楽なんだもん。全員ハワイアナス。ちなみに私の中でハワイアナスはよそゆきのビーチサンダル。以前母が私のハワイアナスを履いて近所に買い物へ行こうとした時に「それ、よそゆきだから、こっち履いてくれる?」と他のビーサンに差し替えました。「ビーサンによそゆきなんてない」と言う母にハワイアナスはそんじょそこらのビーサンではないんだ、何しろ高価なんだという説明を懇々としましたが、説明しているうちに私も、まあ所詮ビーサンはビーサンだよなと納得。そういえば、以前スペイン語学校に通っていた時『毎回ビーサンでやってくるこの女は何なんだ』とクラスメイトは訝っていたそうです。足元って大切ですね。

 この1年、靴を買った記憶がないのですが長靴から草履まで私の持つ全ての履物をざっと数えたところ約40足。ネットで調べてみると女性の靴の平均保有数は14.4足だそうです。私、倍以上じゃないか!靴をたくさん持っているなんて、女子力高そうじゃないか!しかしその内訳をみるとそんなことはないのです。

 28歳の誕生日の時でした。私はめっぽう人望がないので今まで誕生日パーティーというものを開いてもらったことがありません。その日も西山セコムと化して自宅警備をしていたところに宅配便が届きました。エレベーターのない3階の自宅にお兄さんがぜえぜえ言いながら「何が入ってるんですかね」と置いていった巨大で重たいダンボール開けると、なんとそこには28足のコンバースが…。まじか…。確かに送り主の方にコンバースが好きとは言ったけれど、まじか…。ハイカットだったり、ローカットだったり、レザーだったり、28種類のコンバース。100歳の誕生日だったら全てを履く前に死んでいた。若き日の誕生日で良かった。つまり私の保有している靴のほとんどがコンバースなのです。

 とはいえ冠婚葬祭もあればデートだってある。コンバースだけを履いて生きているわけにはいかない。ちゃんと女っぺえパンプスだって持っています。ただね、うん、皆さんの予想通り、あまり履かないです。だって足が痛くなるんだもの。ピーコさんが「お洒落はガマン!」とおっしゃっていましたが、ダメ。私、女子力もさることながら忍耐力もないんだもの。サウナなんて1分で出る。なのでしかたなくパンプスを履く場合、往復はペタンコ靴を履いて途中で履き替えます。だから荷物が多くなってしまう。クラッチバッグにパンプスでSATCのキャリー・ブラッドショーのように颯爽と外出してみたい。例えがおばさんですみません。でも本当にマノロやルブタンは、見ているだけでほわ~っとなりますね。以前パリのクリスチャン・ルブタンでスワロフスキーの美しいパンプスがあって、素敵!と思ったのですが値段を見たら2300ユーロ(約32万円)だったので、「ふーん」とたいして欲しくないって顔をしました。本当は喉から手がボンジュールするほど欲しかったです。

 そういった美しい靴を履くとテンションもあがるし、背筋ものびるので、パンプスは女子力をあげる必須アイテムだと思います。ただこれは履き慣れていないと格好がつきませんね。私なんてパンプスを履くと歩き方が完全にASIMOです。カックンカックン、ドモドモ、ニシヤマデース。数年前には履き慣れない高いヒールで足首を捻って、しばらく松葉杖になりました。その時に行った病院の先生は私が子どもの時から診てもらっているのですが、捻った足首を診ながら「ここ、高校生の時もやってるよね?もうクセになっちゃってるから、ヒールの靴はやめてこれからはウォーキングシューズにしなさい。もういいでしょ」といわゆるおばあちゃまたちが履いているお散歩靴を薦められました。絶対にイヤだし、「もう」って何よ。

よし。この夏は、足元から女子力をあげるために新しい靴を買おう。シンプルで合わせやすいのが良いなあ。で、痛くならなくて疲れなくて歩きやすいやつ。つまりウォーキングシューズということか…。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website