いじってなんぼ?│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#011

いじってなんぼ?

2014-09-22 14:46:00

 9月初旬、満喫できなかった夏を取り戻そうと友人と二人、下田市の吉佐美大浜に行きました。お天気にもめぐまれ、がしがし泳いではビーチでごろごろ。しっかりと残暑を楽しみました。日が暮れる前には海からあがって市内にある銭湯へ。すごく古い銭湯で、カランには赤マークと青マークの蛇口のみ、回転寿司のお茶用みたいに押すと出るタイプでした。シャワーなしで髪の毛を洗うのってこんなに大変だったっけ?と、友人と話しながら、お互い長い髪の毛を桶の湯で流しました。カコーン。(銭湯っぽく桶の音)生け簀のような浴槽に入って「日に焼けちゃったね~」なんて女子力の高い会話をした私たち。風呂上りには、脱衣場の鏡前で「お尻がね」「くびれがね」「おっぱいがね」とお互い全裸をチェック。彼女は美しいハーフ女子なのですが、ハーフだろうがクォーターだろうが女である以上、身体の悩みは一緒なんだなあと思いました。彼女とは数年前にも一緒に海に行ったのですが、夏の開放感が何かを狂わすのか私たちはビーチでナンパされてしまいました。「どこから来たの?」なんて言っている殿方に、彼女が「私、おかまだよ?」と自己紹介。そう、彼女は美しきニューハーフ。「……へぇ~、そうなんだ」と僅かに顔を強張らす殿方は、隣にいた私にちらりと目を向け「見えないね~」と感心したように腕を組みました。おいこら、こっちは違うぞ。でも私って男顔なのかなー?とも思います。

 初回でも書きましたが、私の小さい頃の一番の喜びは男の子に間違われることでした。そう見られるために振舞っていたからかもしれないけど、かなりの確率で男の子だと思われていました。で、間違われたあとに「私、女の子です」と言うとほとんどの大人が慌てて謝るんですね。「女の子を男の子に間違う=傷つけちゃった」と思うのでしょうね。私にとっては、喜びだったからむしろ嬉しいんですけど、ここはやはり子どもらしく大人の期待に応えて「いえ、大丈夫です」と少し落ち込んだ声を出していました。でも、私は男の子に間違われたかっただけで、男の子になりたかったわけではありません。幼稚園で初めて好きになったのもMくんという背の高い男の子だったし。Mくん、元気かなー。今逢ったら「大好きすぎていつも殴ってばかりでごめんね」と謝りたい。小学校の時に好きだったSくんにも怪我させて母と一緒に謝りに行ったなあ。Sくんのお母さん、「いいの、いいの!もっとやっちゃって」と笑っていたなあ。あの時のSくんの憎悪に満ちた目を私は忘れない。私の名前は本名なので、偶然にもどこかで私のことを見つけて「酷い女だった」と言われていなければ良いけど。でもね、その前に同一人物だと思わない可能性の方が高いと危惧しております。仮に同一人物だとわかっても「あいつ、絶対にいじった」と吹聴されているはず。いじってないんだけどなー。まあ、いじってても言わないけどさ。

 大学の時に『変身論』というゼミをとっていました。どんなゼミだったのかざっくり説明したいのですが、自分でも驚くほどに何を勉強していたのか記憶がありません。必読書が河合隼雄著『とりかえばや、男と女』ということと、ゼミの小林先生がカラオケでは必ず『五番街のマリーへ』を歌うということは覚えているんだけどなあ。そのゼミで、ある日のディベートが『美容整形はありか、なしか』というテーマだったことがありました。私は美容整形は、当人が望むのならその人の勝手と思っている肯定派なので、「親にもらった大切な身体を」という否定派にその意見をぶつけました。意外なほどに否定派が多かったことにびっくり。そんな中、小林先生が肯定派の私に「じゃあ、西山さんは整形手術をしたいと思うの?」と訊いてきました。当時二十歳、ぴっちぴちの私が「え?思わないですよ。だって、私は必要ないから」と言いきって、教室の空気がおかしなことになったのを今でも覚えています。でも、その空気がさらにおかしくなったのは一人の生徒の発言でした。おずおずと手をあげた彼女は「実は、私……、目を整形してまして」と突然のカミングアウト。ゼミのディベートが突如として、よくアメリカ映画で見る断酒会のような「あたしはアマンダ」「ハーイ、アマンダ」みたいな感じになっちゃった。カミングアウトした女生徒は目を潤ませながら「後悔はしていない」と言いました。そうだよ、綺麗になりたかったんだもんね。いいじゃん、いいじゃん。「アマンダ、話してくれてありがとう。皆さん、アマンダに拍手を」パチパチパチパチ。
 
二十歳の頃が無敵だった私も、実は今、整形に興味がある箇所が一つ。それは鼻です。私の鼻は、少し鷲鼻っぽくて真ん中の骨が出ているんですね。日常生活では気にならないのですが、3D映画を観に行くと自分の鷲鼻ぶりを思い知らされます。3D眼鏡のアタリがきつくて痛くなるし、半日跡が取れないのです。もし世界中の映画が全て3Dになったら、本気に考えなくてはいけないなあ。ちなみに写真でかけているのは3D眼鏡ではありません。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website