福袋│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#042

福袋

2016-01-11 18:05:00

 あけましておめでとうございます。年末ジャンボで300円当たった西山です。年末ジャンボは毎年買いますが、最高で3000円しか当たったことがありません。それでも買い続けるのは、やはり夢を見たいから。今回は10億円当たったら、よく自転車で通る道を自腹で舗装しようと思っていました。原宿の東郷神社裏手の細い道と、東松原駅近くの坂道。すんごくボコボコなので、自転車で通ると脳天までガタガタ響きます。車椅子やバギーは、もっと大変だろうなあ。10億円当たったら直したかったけど、来年に持ちこしですね。そんなこんなで2016年の幕が開けました。昨年は新年を迎える前に寝てしまうという痛恨のミスを犯しましたが、今年はきちんと起きていました。テレビ東京で中継していたシルヴィ・ギエムの『ボレロ』に胸を打たれ、感動に震えたまま0時10分に消灯。元旦、6時に起床した私は、混む前に初詣に行ってしまおうと、いそいそ身支度にとりかかりました。暖冬とはいえ、朝は冷えるのでデニムの下にはレギンスをはきます。着替え途中、鏡に映った自分を見て「お、シルヴィ・ギエム!」と、しばしボレロを舞ってみる。しかし最初のステップがどうにもドリフっぽい。足も全然上がらない。何よりも上半身裸+黒レギンスは、シルヴィ・ギエムではなく江頭2:50。2016年もこんな女子力ゼロからの発進となりました。

 郷里に戻り久々に家族と会う正月、自由気ままに一人でごろごろ過ごす正月、元旦から仕事に精を出す正月、さまざまな正月の過ごし方がありますが、多くの人が楽しみにしているもの、それは『初売り』であります。不景気だなんて言っても、何が入っているんだかわからない福袋が飛ぶように売れていくのだから、みんな実は貯めこんでいるのでしょうね。私にくれたら悪いようにはしないのになあ。まずは道路の舗装に使いますけどね。みなさんと違って貯めこむものすらない私はここ15年、福袋を買ったことがありません。15年前に買ったのは、近所の化粧品店でした。商店街にある個人経営の店で、店頭には資生堂やKOSEの紙袋に入れられた福袋が並んでいました。当時は、今のように使う化粧品も決まっておらず、色んなものを試してみたいという欲があった私。売られている福袋は2000円。そこの店は、以前化粧品を購入した時にたくさんの試供品をくれたので、まあ悪くはないだろうと買ってみることにしました。並んだ福袋は、どれも蟻が忍びこむ隙間もないほどにびっちりと封がされています。私は一つ一つ手に取って、重さを感じてみました。どれもけっこうな重量で、思わず顔がニヤける私。その中でも一番重かったものを選び、意気揚々と家へ戻りました。そしてわくわくしながら開封!じゃじゃーん!わーお!どおりで重かったはずー!わーお!福袋の中には、体重計と目覚まし時計が入っていました。化粧品じゃないのかよ。化粧品店の福袋なのに、化粧品じゃないのかよ。一番重いものを選んだ自分は、完全に舌切り雀の欲張り婆さんだけど、あの福袋、重量からして他も体重計と目覚まし時計とみた。もちろん、その化粧品店に二度と行くことはありませんでした。そしてそれ以来、福袋を買うこともありませんでした。

 2016年も結論から言いますと買っていないのですが、どんな福袋があるのか年末から調べてはいました。リサーチの結果、女子力が高い子には『ジェラート・ピケ』のものが人気のようです。「もふもふ」とか「ふわふわ」とか女子力が高いオノマトペで表現されるルームウェアのブランド。女の子たちはここの福袋に入っている「もふもふあったかショートパンツ」を可愛いと絶賛するのですが、「ショートパンツ」で「あったか」ってどういうことですか?太腿が寒いに決まってるでしょ。ということで却下。アパレル系福袋は好きなブランドがある人には良いけれど、私みたいにオートクチュールしか着ない人間には、難しいですね。他に買おうか悩んだのは、カルディの食品福袋、チャコットのバレエ着福袋、そしてデューブルベの福袋。3つ目はワコールのセミオーダーショップです。ワコール信者のあたくし(『大パンティー祭り』参照)、お店の存在は知っていましたが福袋はノーチェックでした。気づいたころには時遅し、お店に行くともうLサイズしか残っていませんでした。うーん、残念とそのまま正月の渋谷をぶらぶら。街行く人の多くは、ほくほく顔で大きな紙袋をいくつも抱えていました。私も百貨店を覗いて洋服を試着したり、靴を履いてみたりしたけれど、何だかどれもピンとこず。2016年の『初買い』で変なものは買いたくないなあと悩んだ末に私が向かったのは、文房具専門店の伊東屋でした。そこで鉛筆削りを購入。100円の品物だけど『初買い』としては悪くない。女子力という点から見ると、やはり今年も前途多難ではありますが、本年もよろしくおつきあい下さいませ!

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。

 
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