世界平和│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#050

世界平和

2016-05-05 17:27:00

 この連載も今回で50回目を迎えました。ゼロだった女子力も着々と上がっており、今では7ぐらいになっています。マックスを100とするとあと715回書けば女子力マックスということですね。隔週での連載なので、年数にしたら29年。70歳になるまでには間に合いそうです!希望の光が見えてきました。女子力を上げて自分がどんな人間になりたいか、そう考えた時、実際に自分が憧れている女性を思い浮かべてみましょう。その人に近づくためには、どうすれば良いか。紗栄子さんみたいになりたければ、ピーチ・ジョンの下着をつけてみる。石原さとみさんみたいになりたければ、くちびるをプルップルにさせてみる。有村架純ちゃんにみたいになりたかったら、彼女の事務所の先輩である西山繭子に多額の献金をしてみる。とか、それぞれ道があるはず。私の場合ですと、憧れている女性は黒柳徹子さんと緒方貞子さん。スケールが大きすぎて、近づきようがないのですが、そこは少しでも努力せねばということで、西山繭子、ニューヨークの国連本部に行って参りました!

 私は常日頃、世界平和のことを考えています。毎朝NHK-BSのワールドニュースを見ては世界で起きている紛争に胸を痛めています。どうしてここまで平和について考えているのか、それは私が善良な人間だからではなく、「暇」で「平和」だからなのだと思います。数年前、マイケル・コースとWFP(国連世界食糧計画)がコラボした時計を買いました。購入すると時計一つにつき、100食分の学校給食が寄付されるというもの。私はこの時計をさらりとなんてつけません。あわよくば、この時計をしてWFPが活動している土地に行き「ねえ、ねえ、私の学校給食美味しかった?」と恩着せがましく訊いてみたい。また、私は毎月『国境なき医師団』に少額の寄付をしています。テレビで国境なき医師団の病院施設が誤爆されたというニュースを見た時は、『私が寄付した病院で、私の寄付で頑張っているスタッフが、私の寄付で助かるはずだった患者と共に殺された』とはらわたが煮えくり返る思いでした。もう一度言いますが、私の寄付は少額です。何の助けにもなっていないかもしれません。それでも、世界平和を考える私としては、どこかで少しでも繋がっていたいのです。私には、アンジェリーナ・ジョリーや藤原紀香さんのように公に活動できるような力はないし、ましてや機関に関われる知性もない。だから22ドルを払って国連本部のガイドツアーに参加するのが精一杯。それでも本当に行って良かったです。ニューヨークに行かれる方にはぜひお薦めいたします。

できれば日本語ツアーに参加したかったのですが、私の滞在期間中は開催されておらず泣く泣く英語ツアーに参加。私が参加した回は総勢20名ほどで、英語ツアーだけあって私以外はみな欧米人。ツアーガイドはセネガル出身の青年でした。まず、国連本部正面に並べられた国旗を前にガイドが言いました。「ここには国連に加盟している193カ国の国旗がアルファベット順で並んでいます。さて、一番最初の国はどこでしょう?」いきなりの質問形式に困惑の私。隣のおばさんが意気揚々と「アブダビ」と言いましたが、アブダビ、国じゃないし。えー、どこだろう?「オーストラリア」「アメリカ」と首を傾げる大人たちの中で、一人の少年が腕を組みながら「アフガニスタン」と答えました。「Exactly!」ガイドの言葉に少年はにやり。「じゃあ、最後の国は?」皆が固唾をのんで少年を見ます。少年はかけている眼鏡を指でくいっと動かし「ジンバブエ」と答えました。どよめく大人たち。天才少年あらわる!少年の後ろでは、一緒に参加したおばあちゃんが誇らしげな笑顔を浮かべていました。1時間ほどのツアーではガイドが説明しながら、常に「Anything question?」と私たちに問いかけてくれるのですが、まさかここで「Do you like Japanese food?」と訊くわけにもいかず、私は始終だんまりでした。逆に欧米人の方々は、ガイド青年がひるむぐらいに、ぐいぐいと切り込んでいきます。もっと英語が堪能だったらなあ。そんなことを考えながら、国連本部内を回っていきます。とある会議場でガイドの青年が「ここの天井を見て何か気づくことはありませんか?」と再びクエスチョン。天才少年は天井を隅々まで見渡しながらも答えがわからないようで、焦りの表情を見せます。その時、ツアーに参加していた別の少女が小さな声で「Unfinished?(未完成)」と答えました。まさかの正解に、悔しげに自分の太腿を叩く天才少年。少年よ、勉強だけじゃダメってことだ。まあ、おばちゃんは勉強もできないけどな。こんな風に進んでいくツアー、国連は様々な形で世界平和への道を模索していることがわかります。途中、人権をテーマにした展示にはホロコーストの年表と写真がありました。私たちのツアーには頭にキッパをつけたユダヤ人の姿もあり、彼がどんな気持ちでそれらを眺めているのかと思うと胸がつまりました。また、一角には原爆のコーナーもありました。長崎から運ばれてきた被爆したマリア像、それをじっと見つめている私の背中にそっと手を添えたのは天才少年くんのおばあちゃんでした。うわーん!おばあちゃん、女子力高すぎ!ヘンリー・ベンデルでもサックス・フィフス・アベニューでもブルーミング・デールズでもなく、ニューヨークで本物の女子力にふれたのは国連本部なのでありました。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。

 
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