手紙をください│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#068

手紙をください

2017-02-09 18:27:00

 ここ最近、勤め先で女子力を求められることがパワハラだとかセクハラだとか、そんなコラムを見かけることがあります。「男性上司に女子力がないと言われ傷つきました」とマユコさん(仮名)は言う、みたいな新聞の真面目な記事、うつむくマユコさんの後姿。そして記事は疑問を投げかける。そもそも「女子力」という言葉自体が女性蔑視でありパワハラなのではないか?もう、もう、もう!そんなに深く考えないでくださーい!私のお墓の前で泣かないでくださーい!この連載、そろそろ70回目を迎えようとしていますが、私、未だにはっきりとした女子力の定義すらわかりません。それどころか言及すればするほど女子力から遠のいている気がします。私でさえそうなのだから、男性上司が女子力の何たるかをわかっているはずがないんですよ。言いたいだけ。おしゃれクリエーターが「コンテンツをローンチしました」って言いたいのと一緒。安部さんが「ウィンウィン」って言いたいのと一緒。コロンボが「うちのワイフがね」って言いたいのと一緒。女子力に関して嫌な思いをされている方こそ、ぜひこの連載を読んで欲しいですね。

 いやはやそれにしても毎日寒いですね。出不精の私が、さらに出不精に。今日は朝から雨が降っているので確実に家から一歩も出ません。あ、いや違う。一歩か二歩は出ます。どんな日でも必ず郵便受けをチェックしに行くのです。私、郵便物って大好きなのです。カードの明細とか確定申告書とか、たまに嬉しくない郵便物もありますけど基本的に自分宛の郵便物はDMでも嬉しいです。そんな嬉しい郵便物の中に、まず映画の試写状があります。それがもともと観ようと思っていた映画だったりするとこの上ない幸せ。はたまた「へえ、こんな映画があるんだ」と自分のアンテナにはまずひっかからなかったであろう作品との出会いも楽しいものです。先日は「トリプルX 再起動」というアクション映画の試写会にお邪魔しました。主演のヴィン・ディーゼルは人間なのに、もはやアベンジャーズの面々を超越したパワフルさを見せていました。あとは作家っぽく以前お仕事をした文芸誌が毎月送られてきたりもします。連載中ならまだしも、短編を載せていただいた程度なので、毎月申し訳ないなと思うのですが「もういいです」って断るのも失礼な気がしてそのままになっています。大人の礼儀がいまだにわからない39歳です。あと寄付をしている国境なき医師団からも毎月、活動報告を記した冊子が送られてくるのですが、ニュースではあまり報じられない地域での紛争を知ることになったりと非常に興味深いです。しかし何と言っても、届いて嬉しいもののNO.1はお手紙。いや、もちろんこのご時世でお手紙なんてめったに届きませんよ。だからこそ、ちょっとした葉書や手紙が届くと本当に嬉しい。読まずに食べる黒ヤギさんとか、考えられない!そして、もらうのも好きなのですが手紙は自分が書くのも好きです。旅先からは必ず家族や友人に絵葉書を出します。言葉の通じない異国で郵便局を探して日本までの切手を買って投函して、ってそれだけでちょっとした一苦労なのですが、だからこそ無事に届いた時の喜びもひとしお。しかし以前、メキシコのグァナファトという街から出した葉書は10枚中半分しか無事に届きませんでした。全部一緒に出したのに何故・・・。あーあ、もっともっとみんながお手紙書けば良いのになあ。この前も合コンで(行ってんのかよ!)、「LINEのIDを」って話になったのですが、何か色気がないですよね。そこで「まずは文通から始めましょう」とか言われたら好きになっちゃうし、いざ文通を始めたら向こうも私のことを好きになっちゃうはず。だって以前、ここでも書いたように(第35回『メールが向かない女』参照)私、手紙の中では別人格になるので。手紙の中の私は女子力ハンパないので。あ、でも手紙以外に最近とっても嬉しかった郵便物がありました。とある寒い日、郵便受けを開けるとそこにはA4サイズの封筒が一通。そっと取り出すと、その封筒には新橋演舞場と書いてありました。お!こ、これは!興奮に震える手でペーパーナイフを握り、慎重に封を切る私。中から出てきたのは台紙に貼られた一枚の写真でした。台紙には「みんなde舟木」の文字。そう!それは年末に行った舟木一夫さんのコンサートで撮った写真でありました!ちょうど私が行った日は、特別企画「みんなde舟木」というイベントデーでした。なぜdeがローマ字なのかは知る由もありませんが、この企画は舞台上の舟木センパイと客席のみんなで記念撮影をするというもの。舟木センパイのはるか後方で手を振る私は、私以外見つけられないでしょうが素敵な記念になりました。これを全員に無料で送る舟木センパイってすごいよなあ。いや、もちろん舟木センパイがせっせと台紙に貼っているわけじゃないんだけどさ。でもこういうところが長年ファンに愛される所以なのでしょうね。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website