女学生奮闘中!│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#072

女学生奮闘中!

2017-04-10 12:00:00

 西山繭子39歳、ただいまイギリスはマンチェスターで20年ぶりの学生生活を送っております。今は朝の6時。授業開始は9時ですが、イギリスに居ても〆切があるので早起きをしてこうして原稿を書いています。ああ、美しき勤労学生!と言いたいところですが、本当は昨日書こうと思っていたはずが、学校を出たところでドイツ人学生ニコラスに「繭子、俺たちパブに行くけど一緒に行かない?」と誘われ「じゃあ一杯だけ」とついて行き、もちろんちょいと一杯のつもりで飲んで~♪となってしまいました。いやー、来る前は、安くない学費を払っているのだから、とにかく勉強するぞ!と誘惑の多いロンドンを避けて、わざわざここマンチェスターに来たのですが、20年ぶりの学生生活、はっきり言ってもんのすごく楽しいです。昨日のパブはドイツ人ニコラスくん、スイス人エリオットくん、イタリア人フラビアちゃん、ブラジル人何度聞いても名前が聞き取れないくん、そして日本人繭子ちゃんの5人で行きました。もちろんみんなの共通言語は英語なので、たまに何を言っているかわからないけど、もうこの歳になるとドギマギするようなこともありません。だってみんな私よりスーパー年下のひよっこですから。あ、そういえば日本では有村架純ちゃん主演の朝ドラ『ひよっこ』が始まりましたね!かすみん、ファイト!(そんな風に気安く呼んだことないけど)そう、20年ぶりの学生生活、当然といえば当然ではありますが世界各国から来ているクラスメイトはみなとっても若いです。ズバ抜けて年上の私は、一番若いクラスメイト、サウジアラビア人アフマッドのお母さんより年上という非常事態。しかし日本でも若く見られることが多い私なので、それが外国となるともうそれはそれは。先日、いつもお喋りしているクラスメイトたちに初めて年齢を訊かれ「39歳」と答えると、「えーっと、繭子が言いたいの29歳ってこと?」と、まるで英語で数字が言えない人みたいな扱いになりました。「39歳だってば!ほら!」とパスポートを見せると、みんな化け物を見るような目で私を見て、20歳のフランス人女子は「……何を食べたらそうなるの?」と目を丸くしていました。私は、欧米人からすると22,3歳に見えるそうです。ああ、欧米で暮らしたいわ。でも同じアジア人である韓国人留学生からすると35歳ぐらいに見えるらしいです。ここはやはり違うのね。しかしそれはあくまでも見た目の問題で、中身は立派な39歳。先週金曜日、全てのクラスを終えたイタリア人青年ガブリエルの送別会ってことで、みんなでクラブに繰り出しました。その夜は学生向けのイベントということで、そこはさすが3つの大きな大学がある学生の街マンチェスター、大量の若者が押し寄せておりました。もちろんIDチェックは必須ですが、セキュリティも私の年齢を二度見していました。逆年齢制限がなくて良かったわあ。日本でさえクラブなんてとんと行っていない私、もう人、人、人の嵐に窒息寸前。そして、いたるところでディープキスをぶちかましている欧米、南米の若者にもう目が点。そんな私をよそに若者たちはフロアで大盛り上がりでありました。DJが曲をかけるたびにイントロでみんなが「イエーイ!」となるのですが、ジャパニーズおばさんは残念ながら一曲もわかりませんでした。

 肝心の授業はといえば、やる気は満々なのですが、いかんせん記憶力の衰えが半端ない。5秒前に教わったことをまっさらに忘れたりします。しかし年齢の変わらぬ同年代の先生が、そこは仲間意識で大目に見てくれます。本当だったら先生と飲みに行きたいぐらい。授業自体はたいして難しくなく、日本人なので文法や大まかな単語に関しては優等生です。だからこそ自分よりも英語が話せるフランス人のクラスメイトが「aとanの違いって何ですか?」とかトルコ人が「パンプキンって何ですか?」とかカタール人が「オイスターって何ですか?」と訊いているのを目の当たりにすると、すごく驚きます。逆に『Wok』という単語を知らないのがクラスで私だけで、クラスメイトは「え!アジア人なのに、何で知らないの!?」と驚かれました。Wokとは中華鍋のことだそうです。そんなん、知らないわ!そして授業よりも一番勉強になるのは、滞在している学生寮。450人が暮らしているこの学生寮で日本人は私を含めてたったの2人だそうです。もちろん、もう1人にはいまだ会ったことがありません。部屋は個室ですが、キッチンは6人で使っています。イタリア人、フランス人、ドイツ人、ロシア人、韓国人、そして私。食べ物というのは、一番文化の違いが出るものです。もう毎日がカオスです。冷蔵庫の中もカオスです。私が持ってきたお気に入りのふりかけをみんなが「それ、砂?」と言っていました(写真参照)いやはや、留学ともいえないスーパー短期ではありますが、女子力よりも人間力が上がる日々を過ごしております。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website