アテンションプリーズ!│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#077

アテンションプリーズ!

2017-06-19 12:36:00

 今、空の上でこの原稿を書いています。羽田空港を出発して、飛行機はシャルルドゴール空港に向けて順調に飛行を続けております。今回は仕事ということで、こんなあたくしがビジネスクラスでふんぞり返っています。いや、本当はCAさんに失礼のないよう小さくなっています。ビジネスクラスにはこれまでも何度か乗ったことはありますが、当然自腹ではないのでいつも何となく肩身が狭いというか、偽りの身分というか、うーん、わかりやすく言うとドラゴンクエスト4のフレノールの町で誘拐事件に巻き込まれる偽物のお姫様の気分なのです。女子力がまったくないお姫様。しかしながら本当に快適。フルフラットなのでゆっくり眠ることもできますが、貧乏性の私としてはフルにビジネスクラスを堪能するために羽田到着まで起きているんだろうなと思います。

 前回ビジネスクラスに乗ったのは3年前の羽田―ヒースロー便でありました。その時はラッキーアップグレード。搭乗30分前ぐらいに「××便にご搭乗の西山繭子さま」というアナウンスが空港内に流れました。あら、やだ。またパスポートでも落としたかしら?(ヒューストン空港で経験有り)と思い、いそいそカウンターに行くと「本日満席のためビジネスクラスをご用意させていただきました」という宝くじ当選級に嬉しいお知らせ。エコノミーが満席でビジネスってどういうこと?しかもどうして私が選ばれたの?外出先のトイレでトイレットペーパーがなかった時、きちんと新しいものに変えるという善行をしているから?それとも家着のアディダスのジャージが考えたら17歳の時に買ったやつで、どんだけ物を大切にしてるんだよ!というか、むしろ20年履いても膝が出ないアディダスの品質の良さに脱帽だよ!だから?しかもこの時はマイルの特典チケットだったので、私が支払ったのは燃料費のみ。それでビジネスクラスなんて、バチが当たるのではないかと思いました。案の定、バチではないけれど慣れぬビジネスクラスだったために、ベッドパットを身体の上に乗せて横になるという始末。なんか固いな、ごわごわするな。でもきっと人間工学に基づいた寝具なのであろう。と自分を納得させていたのですが、見かねたCAさんが「お客様、こちらお身体の下に敷かれますと、ゆっくりお休みになれますよ」と笑顔で言ってくださいました。恥ずかしいったらありゃしない。

普段は当然のことながらエコノミーであります。いまだに海外で6人部屋ドミトリーなんかに泊まっちゃう私が何十万円もするビジネスなんてとんでもない。ただ、年々長時間のフライトがしんどくなっているのは女子力のせいではなく完全に老化による体力の低下でありましょう。その長時間のフライトを少しでも快適するためには念入りな準備がかかせません。定番のネックピローやスリッパはもちろんのこと、私は毎回登山用ヘッドライトを持って行きます。なぜならエコノミーのライトって、天井から灯りが降り注ぐので隣の席まで煌々と照らしてしまうのですよね。私は時差ぼけ対策も兼ねて基本的に機内では寝ないので、読書をするためのこのヘッドライトは必須なのです。みんなが寝静まった機内で一人、頭にライトをつけている姿に女子力は微塵もありませんが、隣の方への思いやりと考えれば女子力高めの行為ではないでしょうか。たまにCAさんの「お飲み物いかがですか?」という声に顔をあげ、光がCAさんの目に入り、眩しそうな顔をされたりもします。このお飲み物もですね、私は必ず自分でギャレーに取りに行きます。身体を動かしたいというのもありますし、とにかくCAさんの仕事を無駄に増やしたくないのです。これは私の姉がCAだからということがあるのかもしれません。みんな笑顔でサービスをしていますけど、想像以上にきつい仕事なんですよね。飛行機に乗っていると、サービスされるのが当たり前みたいな勘違いをしている人を見かけますが、それをやっていいのはファーストクラスに正規料金で乗っている人だけだと私は思っています。エコノミーに乗るときの私のスタンスは『貨物』です。その貨物の機内持ち込み荷物(ややこしい)に、最強のアイテムが加わりました。それは今年の誕生日にゲットしたBOSEのノイズキャンセリングヘッドホンです。もうこれ本当にすごい!すごすぎて前回のフライト時に『ララランド』を4回半観ましたから。今回のフライトでは5回に挑戦!と思いましたが、残念ながら(当たり前だけど)やっていませんでした。ということで今回は『美女と野獣』の実写版を観ております。これ、実は3月にマンチェスターの映画館で観ているんです。その時は「まあアニメ見てるし、子ども向けだし、字幕なしでも余裕っしょ」と思っていたのですが、ほぼ聞き取れなかったので英語の勉強も兼ねてのリピート鑑賞。BOSEから聞こえるユアン・マクレガーの声が最高だわ。

image2

最近のコラム

西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website