トゥース!│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#078

トゥース!

2017-07-10 18:10:00

 こんにちは。高田万由子さん、福田麻由子ちゃん、そしてわたくし西山繭子を勝手に世界三大マユコと思っていたのですが、ここ最近では完全に豊田真由子センパイにその座を奪われてしまいました。私は人様に向かってあんな風な暴言を吐くことはないので、私の方が女子力が高いと思っていたのですが、姉いわく「結婚して子どももいる豊田パイセンが圧勝」とのことです。アラフォー独身女に世間は厳しいなあ。そんな厳しさから現実逃避とばかり、先日2週間ほどフランスとイタリアに行ってきました。

 おフランスのおパリについてはここでも何度か書いていますが(第7回『女子力しゅるぶぷれ』第43回『親不孝モノ』参照)、よく来ている街なので何かと便が良いです。今回も着いた翌日には、いつも行くバレエ教室で汗を流してきました。時差ボケ対策に適度な運動は必須です。もちろんレッスンはフランス語なので何を注意されているのかわかりませんが、とりあえず「うぃ、うぃ」と言っています。しかし以前、レッスン後にレオタードから激しく“はみパン”していたことに気づき、もしかしたら先生はレッスン中にずっと「あなた、パンツ出てるよ」と注意していたのかもしれないなあと思ったことがありました。だから今回、パンツはしっかりイン!パンツインは女子力の証!そのため今回は先生からの注意は始終「アンディオール!(足を外側に回すこと)」に集中。日本でもいつも注意されることです。とほほ。こんな風に、数日のパリ滞在で体調を整えいざイタリアへ。今回で5度目のイタリアでしたが、初めて行ったのは10年ほど前、しかも格安ツアーでの旅行でした。いつもは気ままな一人旅が多いのでツアーに参加することはまずないのですが、その時は母も一緒だったので新聞広告で見かけた某旅行会社のツアーに申し込み。往復直行便の利用で、ミラノ→フィレンツェ→ローマを1週間で回るツアーがお一人様12万円というのはお値打ちだったので、えいやっ!と母にプレゼント。行きの機内で、初めてのヨーロッパにうきうきしている母を見て、連れてきてあげて良かったなあと思ったのですが、とは言えそこは格安ツアー。イタリアでは数々の試練が私を待ち受けていました。1日目、旅程にはミラノ近郊のホテル泊と書いてありました。30名ほどのツアー客に日本人の女性添乗員さんを乗せたバスは、鬱蒼とした山の中にあるホテルに到着。ミラノのミの字も感じさせないホテルでした。まあ寝るだけだしと、その日は文句も言わずに就寝。格安ツアーの試練は翌朝から始まりました。「朝食は1階のレストランで7時からです」と添乗員さんから前日に言われていたので、私と母は7時15分に降りて行ったのですが、レストランはまだ準備中。扉の前には、イライラした様子の人々。見たところ全員日本人でしたが、他の旅行会社のツアー客もいるようでした。そのうち一人のおじさんが「おい!何時まで待たせるんだよ!」と怒鳴り始めました。ああ、やっぱりツアーでなんて来るんじゃなかった。そしてレストランが開き、昔の西武ライオンズの優勝セールかって勢いで、一斉にツアー客たちがなだれこみました。ハイエナのようにビュッフェに群がる彼らに、ここでまた問題発生。ホテルの朝食の必須メニューである卵料理のところに「卵料理は××ツアーのお客様のメニューです。他のツアーの方は食べないでください」との日本語での立て札。イタリアくんだりまで来て、しかも価格の優等生と言われる卵で、格差を思い知らされるとは!ブチきれた格安ツアー客のおやじは「金出すからゆで卵食わせろよ!」と添乗員に食ってかかる始末。もうその地獄絵図に私は涙目。母は「このパンもハムも美味しいよ~」とにこにこしていましたが、こんなツアーにしか参加させてあげられない自分がすごく情けなかったです。朝食を終えた一行は、バスで一路ミラノ市内へ。しかし次の目的地フィレンツェへの移動のためにそこで与えられた自由時間は30分。しかも午前10時前で店なんて開いちゃいない。初めてのミラノはドゥーモを見上げて終了でした。街から街への移動はバス、そしてフィレンツェ、ローマでは半日観光がついていたので日が経つに連れ、同じツアーに参加している人々の顔も覚えていきます。「ウフィッツバカ」「植毛ヴィトン」「牧師」これは、私と母が陰でこっそり呼んでいたツアー客のあだ名です。私もきっと「不愛想独身娘」とか呼ばれていたのだろうなあ。ローマではツアー客みんなで並んで記念写真を撮りましたが、私はぶすっとした顔をしながら、いつか母をこんなツアーではなく素敵なイタリア旅行に連れて行くんだと胸に誓っていました。しかしいまだその夢叶わず、今回も娘だけがスペイン広場でパチリ。この写真を「和製オードリーです」とローマから母に送ったところ「トゥーース!」というオードリー違いな返事が返ってきました。やっぱりもう連れて行かなくていいかな。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website