ようこそ日本へ!│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Guest

西山繭子

#079

ようこそ日本へ!

2017-07-24 12:20:00

 2017年、日本政府は年間2000万の訪日外国人旅行者を目標に掲げていますが、上半期の統計ですでに1200万人を超えているそうです。東京に住んでいるとどこもかしこも外国人観光客だらけ。渋谷、銀座などは外国語を耳にする方が多いような気もします。先日もパリから羽田空港に戻った時、入国審査の外国人レーンの長蛇の列に驚きました。それと同時にとても誇らしい気持ちにもなりました。だって我が国ニッポンに魅力を感じて、こうしてはるばる来てくれるなんて嬉しいじゃないですか。そんな中、マンチェスターの学校でクラスメイトだった友人もバカンスで日本に来ることに!19歳のスイス人青年エリオットは、年齢を倍にしても私の方がまだ年上というクラスメイト。そもそも日本人ですら19歳の男の子が行きたい場所なんてラウンドワン以外思いつかないのに、スイス人の彼をエスコートできるのだろうかと一抹の不安を感じつつも、ここは大和撫子の女子力のみせどころだわ!ってことで、滝川マユステルなりの「お・も・て・な・し」(なんか古いし、エロい)をしてきました。

 彼らの滞在は2週間。しかもずっと東京。東京でそんなにすることないだろうと思ったのですが、人の旅には口出しせず。私自身、旅が好きなのでわかるのですが、自分の旅に人が介入してくるのってとても鬱陶しいんですよね。「どこどこのお店が美味しいよ!」と言われるだけでイラっとします。なんで遠路はるばる旅に出て、あんたの足跡をなぞらなきゃいけないのよって思うのです。というわけで今回も「SuicaかPASMOを買った方がいいよ」というアドバイス以外は何もしませんでした。本当はさ「ホテルはどこにするの?」「食べたいものある?」「行きたい場所ある?」「スイスは海がないから、海とか行っちゃう?19歳だったら新島だよね!」と、おばちゃんはお節介をやきたかったのですが、ぐっと堪えましたよ。ああ、新島に行ってFineスナップに載りたかったなあ。ということで、その夢は未来にお預けで、ひとまず夕飯を一緒にとることになりました。場所は彼らの都合に合わせて新宿だったのですが、待ち合わせはバスタ新宿にしました。ここはフリーWiFiですし、ツーリストインフォーメーションもあるので外国人との待ち合わせには良いかと思います。指定した場所に行くと、大きな青年が3人、楽しそうに新宿の明るい夜空を見上げていました。「ハーイ!エリオット!」と4ヵ月ぶりの再会にハグハグ、そして頬と頬を合わせてチュッチュッ。続いて友人1のアントニオともチュッチュッ、そして友人2のマチュアスともチュッチュ。19歳の男の子たちとキスするたびに、ドラクエのホイミの音が脳内再生され、勇者まーたんのHP(ホームページじゃない)は満タンになりました。末広通りにある『呑者家(どんじゃか)』という居酒屋に行き、唯一日本語が読める私が色々とオーダー。彼らは「日本は想像以上に英語が通じないし、店に行ってもメニューが読めないから嬉しい」と言っていました。「特に僕たちが借りてる部屋の近くなんて、僕らにとっては異次元だよ」「どこに泊まってるの?」「ウグイスダニ」「そこは、東京生まれの私にも異次元だわよ」彼らは目の前に並んだ居酒屋メニューに興味津々。一番のお気に入りは、なんと、えいひれでした。わからないもんだなあ。その後は、外国人に人気のゴールデン街に足をのばしてみましたが、テンション高めの欧米人ばかりで、バンコクのカオサン通りのようになっていました。19歳の彼ら、ガタイは良いのですが若者には珍しく物静かな男の子たちで、酔ってバカ騒ぎをしているアメリカ人(たぶんアメリカ人、いや、絶対にアメリカ人)たちにビクビクしておりました。その様子を見て、ほろ酔いのおばちゃんは、この子たち全員童貞かもなとぼんやり考えていました。別の日は彼らのリクエストでカラオケボックスへ。この時は、私の仲良しのRちゃん(ロンドン在住経験あり、英語堪能)も誘って行ったのですが、行く前に二人で「私たちが歌える英語の歌って、カーペンターズとかアバだよね…」とやや不安。しかし、そんな心配をよそに彼らが歌う歌は何故かQueen、Radiohead、Princeと古い曲ばかり。たまにフランス語(ジュネーブ出身の彼らの公用語)のよくわからない歌も歌っていたけれど、何よりもみんなが楽しそうでおばちゃんは大満足でした。ただスイスは16歳からお酒が飲めるのですが、日本は20歳からなので2時間ソフトドリンクでカラオケという高校生以来の体験もしました。帰りの電車の中でRちゃんに「あの子たちって、絶対童貞だよね」と言うと「…どうでもいいけど、ありえなくもないね」とのお答え。うーん、気になる。そして滝川マユステルの最後のおもてなしは、野球観戦。これも彼らのリクエストだったのですが、ルールを知らない彼らに英語で説明するのも難儀しましたが「どうして選手は長ズボンなの?」という質問には、さすがに「I don’t know…」でした。当日、来場者全員に配っていたバスケシャツに身を包む彼らはまるでバスケットボール選手のようだったのですが、フィールドに登場したピカチュウの着ぐるみに盛り上がっていたあたり、やはり童貞かもなと思いました。あれ?もしや滞在先に鶯谷を選んだ理由って…。てか、何の話よ!これ女子力のコラムなんですけど!

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website