アップルとファンデ│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#122

アップルとファンデ

2019-05-13 12:41:00

 私が苦手な場所の一つにアップルストアがあります。これまで仕方なく数度足を踏み入れましたが、行くたびに疲れてしまいます。あの店員が醸し出す「私たちって何にも縛られていなくて素敵でしょ?自由最高!アメリカ最高!」みたいな空気感がとにかく苦手。以前、海外で使えるようにSIMフリーのiphone5Sを買いに行った時も、商品を前にした私に「では、お客様の手で箱を開けてください」とシャレオツな男性店員さんが意味ありげに言いました。そして私が箱を開けた瞬間、彼は私の横で「おめでとうございまーす!」と拍手をしたのです。私が「え?何ですか、急に?」と怪訝な顔をしたところ、彼は笑顔で「iphone5Sとの新しい出逢いに!」と答えました。思わず「それ全員に言ってるんですか?喪中の人がいたら大変ですね」と冷静に言ってしまいました。はたまたケーブルを買いに行った時は、私を担当してくれたのは外国人の店員さん。日本語がややカタコトだったので、英語を交えての会話になりました。どうして日本で買い物しているのに、こっちが気を遣わなきゃいけないのさと思ってしまいます。なので極力足を踏み入れたくないのですが、以前コラム『みんながつけてるやつ』でも書いたように、Airpodsの片方を買うために泣く泣く向かうことに。しかしまずはネットでGeniusBarの予約をしなくてはいけません。昔、予約システムを知らずに直接店に行った際、虫けらのような扱いを受けたのでここは要注意であります。当日は予約時間ちょうどに店に到着しましたが、Barは満席で予約時間を過ぎてからも傍でしばらく立って待っていました。よく見たら、座って対応している店員が数人いて途端にお客様を神様のように敬ってくれる日本の百貨店が愛おしいと心の底から思いました。自分、昭和の人間なもんで、わがままですんません。そして、やっと席が空き座って待つことになったのですが、当然のごとく待っている人はみなiphoneをいじっているわけですよ。何だかそれを見ていたら、私の心の中にメラメラと反骨心がわいてきましてね、ポケットから愛用のガラケーを取り出してパカッ!と格好良くひらいて、せっせとメールを打ち始めてやりましたよ。アップル信者からすると、令和になったこの時代に信じられない光景でありましょう。その後、無事にAirpodsの片方を購入して帰宅したのですが、アップル渋谷店に恐ろしくハンサムな店員さんがいたので、もう1回ぐらいなくしても良いかなと思います。そんな女子力ゼロな発言ばかり繰り返している私ですが、最近はめずらしく美を追求することに情熱を注いでいます。そのうちの一つがファンデーション選びです。以前はめったにお化粧をすることがなかったのですが、会社で働くようになってからというもの、週に4日もファンデーションを塗らなくてはいけなくなりました。ここ2年ほどはカネボウmediaのクリームファンデーションを使っていたのですが(1100円と激安)、たまにはデパコスでも使ってみるかと一念発起。お休みの日にはすっぴんで百貨店へと向かい、タッチアップ(洋服で言うところの試着ですね)をしてもらっています。昔はタッチアップしてもらうのは買うのが前提と思っていたのですが、この歳になって図々しさが増したのか、タッチアップ後に「ありがとうございます。1日様子を見てから検討しますね」と言えるようになりました。そうして西山繭子41歳は、ランコム、ディオール、ローラメルシエ、スックとツヤ肌を求めて渡り歩きます。しかし私は、ここで衝撃の事実に気づいてしまったのですよね。もうね、どんなにファンデーションが良くても41歳になるとツヤは出ないんです!これは長年お付き合いのあるヘアメイクさんも言っておりました。ツヤを出すには基礎化粧品を含めたベースから入念に作りこんでいかなくてはいけないと。そんな中、今回私が一番ビビビときたファンデーションがゲランのレソンシエル。三越銀座店のお姉さんが親切かつ丁寧だったというのも大きいですが、さすが『16時間続く素肌のようなツヤ感のある仕上がり』をうたっているだけあるぜ。ファンデの前に塗ってもらった基礎化粧品もゲランは素晴らしかったので、色々とパンフレットをいただき帰ったのですが、その中に驚愕の商品を発見。「オーキデ・アンペリアル・ブラック・クリーム・ベルナルド」というとてもじゃないけど暗記できない名前のクリームなのですが、そのお値段、なんと16万円。もう家賃やんけ。いったい、どんな人が使っているのでしょうか。ふう、美への追求はお金がかかってしかたないぜ。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website