ルート66アゲイン│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#132

ルート66アゲイン

2019-10-07 12:24:00

10月になりましたが何だか夏のような気候ですね。それに甘んじてまだ衣替えをしていない私は、うっかり白いリネンシャツでお出かけ。すでに秋のおしゃれを楽しんでいる女子の隣でうつむくしかありません。しかし最高気温が29℃もあるのにファーのベストを着てブーツを履いているなんて、女子力が高いかマタギかって話ですよね。ちなみに私のいとこは山形で銃砲火薬店を営んでおります。猟銃からダイナマイトまで各種取り揃えておりますのでご入用の際はぜひどうぞ。まあ、そんな人はそうそういないでしょう。実際、私のまわりでも銃免許を持っている人って一人しかいないなあ。その人はシェフをやっていて自分で調理するジビエを仕留めたいということで猟銃免許をとったそうです。そんな人がいる一方で、知人であるアパレル系チャラ社長は「最近、合コンとか行くのも飽きちゃってさ~。銃の免許とりたいんだよね~」と言っていて、銃規制されている国に生まれて良かったなと心底思いました。銃社会といえば、真っ先に思い浮かぶのがアメリカです。NY、LA、グアム、サイパン、ハワイと訪れたことがある人も多いでしょう。しかしそれらの場所はアメリカであってアメリカでない。いや、アメリカなんだけどアメリカっぽくない。では本来のアメリカはどこなのさ?ということで先日行ってきたのは3年ぶりとなるルート66の旅。(第61回『ルート66』参照)今回はシカゴからオクラホマシティまで約1300㎞を車で走行いたしました。あ、もちろん私は後部座席専門ですけどね。しかもうたた寝多め。
 旅のスタートであるシカゴは言わずと知れた大都会。「シカゴといえば?」と訊かれたら「マイケル・ジョーダン」と答える世代でありますが、2019年のシカゴではマイケルのマの字も見つけることができません。そして彼が在籍していたこともあるホワイト・ソックスの帽子をかぶっている人もまったく見かけません。体感として99.9%の市民がシカゴカブスのファンのようでした。ダルビッシュ選手、良かったですね。ちょうど到着した日にナイトゲームがあったのですが、どうしても名物のシカゴピザが食べたくてレストランへと急ぎました。このシカゴピザ、分厚いタルト生地にしこたまチーズが詰め込まれているというシロモノで、1ピースで2万カロリーはありそうなヘビー級。シカゴでこれを食べたイタリア人の友達は「あれはピザじゃなくて石だ」と言っていました。そのSサイズの石を2つ頼むものの、中年ジャパニーズ3人は完食できず。この66の旅、前回にならって怒涛のハイカロリーミールが続くことは想定していましたが、3年を経た私たちの加齢による胃腸の弱り具合は相当なものであったため、途中は無理をせず中華などもはさみ老体をいたわることにしました。まあ、それでも随分と太りましたけどね。しかし高層ビルが立ち並ぶ摩天楼の街シカゴですが、少し走ればそこはもう貧困層の黒人が暮らす地区が広がっており、昼間から仕事のない人々がうつろな目で佇んでいます。前方を走っている車の後部座席から黒人の女の子が転げ落ちてきた時など、何事かと思いましたよ。唖然としている間に、彼女は道路の真ん中にサンダルの片方を残したまま走り去って行きました。シンデレラだったのかしら…。悶々としているうちに車窓はまた裕福な白人居住地区へと変わっていきます。建物や歩いている人の様子が違うのはもちろんなのですが、貧しい地区と裕福な地区で決定的に違うのは「緑」なんですよね。裕福な人々には芝生や木々の手入れをする金銭的、精神的余裕があるのです。貧しい地区は道端もゴミだらけ。かつてNY市長であったジュリアーニ氏が提唱した割れ窓理論に通ずるものがあるかもしれません。こんな風にルート66の旅はアメリカの様々な顔を見せてくれます。イリノイ州の州都であるスプリングフィールドではリンカーンの家に行きました。「この時間、リンカーンの家の中は入れないけどディーンの家は入れるよ」と係のおじさんに言われ「さんきゅー」と足を運んでみましたが、私たちはディーンが誰なのかまったく知りません。「ジェームス・ディーン?」「ディーンフジオカ?」家の中の展示を見て「たぶんリンカーンの政治秘書的な人であろう」という結論にいたりました。お勉強って本当に大切です。反省をした私は帰国後、学研まんが『世界の歴史』でアメリカ史をざっくりおさらい中であります。これで次回の旅はさらに楽しめることでしょう。写真は今回の旅で食べたものの一部です。見事に茶色い!そりゃ、これだけ食べていたらアメリカンサイズになりますわな。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website