バレエの発表会だよ!│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#136

バレエの発表会だよ!

2019-12-09 16:00:00

 あっという間に12月。私が1年で1番大好きな日、大晦日も目前であります。しかし今年はあまり心穏やかに過ごせそうにありません。なぜなら1月5日にバレエの発表会があるからです。さすがに大晦日、元旦はお休みですがそれ以外はひたすら練習。ちなみに今週は日月火水金と練習がありました。正直言って、うんざりしていますがここまできたらもう耐えて頑張るしかない!と自分を鼓舞して寒風吹きすさぶ中、電動自転車を走らせてスタジオへ向かう日々です。今回の発表会は無謀なことに『ドンキホーテ』を全幕やります。スペイン人作家ミゲル・デ・セルバンテスの小説をもとにしたもので、バレエの演目としてはとーっても有名な作品です。常に世界中で名だたるバレエ団が上演しています。激安量販店とはまったく関係ありません。上演中に「ドンドンドン、ドンキ~♪ドンキ、ホ~テ~♪」なんてかかりません。レオン・ミンクス作曲の素晴らしい舞踊音楽であります。ちなみに量販店のドンキホーテは自宅から自転車で5分のところにありますが、最近ではまったく行かなくなりました。おばちゃんは、あのごちゃごちゃしたディスプレイの中で欲しい物を見つけられる自信がありません。そして、あれだけ品物が山積みになっていると、不思議と物欲がなくなってしまうんですよね。20代の頃は歌舞伎町で朝まで飲んでドンキでMDコンポを買って帰るというヤンチャなことをしていたのだけどなあ。年月が経って、もう今ではその時間は完全に起きる時間。そしてMDに関しては最後に売り出されたタイトルは2009年の倉木麻衣『ALL MY BEST』だそうです。
 話をバレエに戻します。今回は私が通うバレエスクールの発表会ではありますが、もちろん生徒だけでドンキ全幕などはできません。そこでお力を借りるのがゲストの方々。主役のキテリア&バシリオ(キトリとバジルの呼び名の方が有名かな)を演じるのは、東京バレエ団の秋山瑛さんと池本祥真さん。バレエに興味がない方には伝わりにくいかもしれませんが、これってものすごいことなのですよ。町内会の草野球チームに大谷翔平がいるみたいな感じです。秋山瑛さんは12/15に東京文化会館で上演される『くるみ割り人形』で主人公マーシャを演じられます。お二人とは何度か一緒にリハ―サルをさせていただきましたが、あまりの素晴らしさに毎回うっとりしてしまいます。実際はガヤとして一緒に舞台に立っているので、お芝居をしていなくてはいけないのですが完全に棒立ちで見とれてしまう。本番までに何とか慣れたいとは思うのですが、本番なんて練習よりも美しいに決まっているのだから困ったもんだ。他にも今回はワシントンバレエ団から滝口勝巧くん(一緒に練習していた頃は中学生だったのに!)やNBAバレエ団から阪本絵利奈さんが出てくださいます。それだけでも豪華なバレエ公演なのでありますが、今回はなんとお芝居が入ります。本来、バレエというのは言葉を使わずに踊りとマイムで感情を表現するものなのですが、先生が「初めてバレエを観る人のためにわかりやすくしたい」ということで、合間にお芝居が入ることになりました。当初「西山さんもお芝居メンバーに入って下さいね」と言われたのですが、丁重にお断りしました。何故ならお芝居に関しては、私はプロなのでギャラをいただくことになってしまうから。何を売れない女優が偉そうに!って感じですが、まあ仕方がない。売れていなくても女優だからさ。でもバレエ教室の生徒として参加するのであれば、ギャラはもらうものではなく払う側になります。経験された方はご存知だと思いますがバレエの発表会というのは非常にお金がかかります。私も今回の参加費はレッスン代、衣装代と諸々合わせると優に10万円を超えています。10万円も払って「疲れた」「しんどい」「もうやめたい」などと思っているのだから、もう常軌を逸したマゾですよ。その参加費から会場費といった諸々の経費、そしてゲストのギャラを支払います。今回はお芝居をやってくださるのは主に劇団『ショーGEKI』の皆様です。スタジオの隅で芝居パートの稽古を見ていると何とも懐かしい気分になります。私が、初めて舞台に立ったのは2002年の『フォーティンブラス』。V6の長野博さんが主演で、私は村上信五くんと恋人同士の役でした。演出家にも先輩役者さんにもたくさんのことを教えてもらったなあ。2008年『きみがいた時間ぼくのいく時間』では上川隆也さんの相手役としてヒロインをやらせていただきました。観に来た義兄が「繭ちゃんがあんな子だったら良かったのになあ」と言うような女子力の高い素敵な役でした。53公演という長丁場で千秋楽を迎えた時にはぽっかりと穴が開いたように寂しかったことを憶えています。そして今回の『ドンキホーテ』であります。私にとっては最初で最後のバレエの発表会。つまり西山繭子の引退公演です。みなさん、1月5日はぜひ調布グリーンホールにいらして下さい。そして群舞の中で必死に踊るおばさんを見つけて下さい。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website