ハーゲンダッツ│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#221

ハーゲンダッツ

2023-06-26 10:43:00

 ほんの少し前まで、私は行く先々のセブンイレブンを覗いては肩を落としていました。都内で40軒以上はまわったと思います。何故そんなことをしていたかと言えば、セブン限定販売のハーゲンダッツ『クリーミーコーンキャラメルミルクティー』を探していたからです。17歳の夏、初めてアルバイトをして得たお給料で私はハーゲンダッツを爆買いしました。それから約30年の月日が経ちましたが、私のハーゲンダッツ熱が冷めることはなく、その温度管理はハーゲンダッツ社同様一定を貫いています。季節限定商品を見かければ即購入。このセブン限定商品も発売前から情報を得ていたので楽しみにしていました。ただ、一部店舗での取り扱いということで、発売日を過ぎてからもしばらく見かけることがありませんでした。それを仕事の合間に寄った世田谷区某所のセブンイレブンで発見。喜びのあまり叫び出しそうになりましたが、大人ははしゃいではいけないという父の教えを守り、リーアム・ニーソンばりのクールと悲哀を装い「支払いはクオカードで。残高が足りない分はパスモで」と静かに手に入れたのであります。はやる気持ちを抑えて慎重に包装紙をあけると美しいキャラメルのコーティングが顔を出しました。今はなき、というか日本では食べられなくなったデイリークイーンのキャラメルソフトを彷彿とさせます。そして一口齧ればミルクティーのほんのりとした香りと甘さが口いっぱいに広がり、さすがのリーアム・ニーソンも正気を保てません。「あああああああ!美味しいいいいいい!」もうこれ、見かけたら即買い!そう心に誓ったのが5月下旬のこと。しかしそれ以来、どこのセブンを探してもまったく見当たりません。たまにアイスの陳列ケースに値札が貼ってあり、鼻息荒く店員に尋ねると「売り切れです」とのこと。手に入れることができた世田谷区某店に再び訪れるものの、そちらでも売り切れ。1度など目黒区某店の店員さんに「明日入荷があるので16時には店頭に並ぶと思います」と言われ、狂喜乱舞。喜びのあまり眠れぬ夜を過ごし、日中は仕事も手につかなかった私。16時きっかりに店を訪れ『リービング・ラスベガス』のニコラス・ケイジばりに震えながら「あの!例のハーゲンダッツは!?」と声をかけたところ「申し訳ありません。今、発注すらできない状態で」と店員さん。ガーン。ううううう、誰だ。この美味しさをSNSで拡散した奴は誰だ。はしゃいでしまった大人は誰だ。怒りにまかせて検索したところ、やはり私同様手に入れられない人続出。しかし、その中に群馬県には在庫がたくさんあるとの情報を見つけました。なぜ群馬なのか。それはハーゲンダッツの工場があるからだそうです。真偽のほどはわかりませんが、さすがに群馬まで行くことができず、キャラメルミルクティーを味わえたのはまだ1度きりなのです。
 それが少し前のことで、今の私はうってかわって厳しく食事制限中。17時以降は何も食べない日々を過ごしています。お菓子も禁止。パンも禁止。お肌のことを考えてカフェインも断っています。それはもちろん仕事のため。現在私は、会社員、女優、作家、オフィス伊集院の経理(という名の奴隷)、という四足の草鞋を履いていますが、一番大切にしているのは、やはり女優業。今は7月7日から放送が始まる『初恋、ざらり』の撮影も佳境に入っているので、目まぐるしいほどの忙しさです。それでも撮影現場にいる時は、本当に幸せです。もちろん芝居で悩むことはたくさんありますし、次に繋げられる仕事をしなくてはというプレッシャーもあります。それでも続けていけるのは、もちろんこの仕事が好きということはありますが、25年間お世話になっている所属事務所フラームの支えがあるからこそ。私は売れっ子でもないし、CMをばんばんやって事務所に貢献なんてことともほど遠い状態です。そのくせ毎年誕生日には嬉々として社長にプレゼントをリクエストするという、図々しさだけは抜群の古株さん。いつまでもしがみつくなよ。いい加減あきらめろよ。どこからかそんな声が聞こえてくる時があります。それでもへこたれずに頑張れるのは、社長が常々言葉をかけてくれるから。「前に進んでいこう」「必ず見えてくるものが有る」「新しい仕掛けを考えていこう」私は、そんな社長に、いつの日か必ず恩返しをしたいと思っているのです。ここ最近は、その気持ちがますます強くなりました。そのためにもまずは自分の仕事をきちんとすべくの食事制限です。仕事がひと段落つくまであともう少し、それまでは徹底して頑張るぞ。そして、今抱えている撮影がすべて終わったら…、もちろん群馬へGOなのであります。

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2023.6.26 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website