スポーツの女神│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#005

スポーツの女神

2014-06-23 12:23:00

 W杯が開幕し、連日の観戦に寝不足の西山です。今日も午前4時からのスペイン対チリのために目覚ましをセット。むくりと起きてmi novio(私の恋人)であるスペインの21番ダビド・シルバ選手の応援。ハーフタイムには「もう5時だから朝食だよね」と自分に言い聞かせて納豆ご飯をもぐもぐ。そして午前7時からのカメルーン対クロアチアが始まる頃に起きてきた母と一緒にまた朝食。もう歳だから、ご飯を食べたことを忘れちゃうんです。私は仕事が主に自宅警備なのでまだ良いですけど、会社勤めの方は大変ですよね。先日、会社員の友人に「会社のデスクに突っ伏して寝てたら怒られる?」と尋ねると「…当たり前だよね」と言われました。そうだよね、学校じゃないもんね。あ、学校でも怒られるか。こんな時は自宅警備で良かったなと思います。全試合といわないまでにも気になる試合は今のところ全て観ています。観ながらツイッターで感想をつぶやいたりもするのですが、先ほどちらりと読み返してみたところ、女子力が低いどころか、どこのおじさんが書いているのかと思いました。

 女子力が高そうなスポーツといえば、パっと思いつくのはラクロスですかね。ミニスカートにポロシャツにポニーテール。電車の中で、日焼けした健康的な女の子がラクロスのラケットを持っているのってすごく可愛いし、帰国子女っぽい。躊躇せずにスタバに入って細かいオーダーができるっぽい。チアもその部類。しかもチアに関しては彼氏がクオーター・バックですから鬼に金棒ときたもんだ。でも、これはあくまでもイメージです。私が考える最強の女子力を持ったスポーツ選手は谷亮子さんであります。柔道というと一見女子力が低そうに思われがちですがヤワラちゃんは凄い!選手としても一流、野球選手と結婚、パリの教会で挙式、ベールの長さは10m、田村でも金、谷でも金、ママでは残念ながら銅でしたが、その後は議員にまでなって持ち前の女子力を世間に知らしめてくれました。スポーツにひたむきに向き合い、極める女性は強く美しいということですね。しかし36歳の私に今からスポーツを極めることは到底難しいので、やはりここは観戦を通して女子力を高めていこうと思うのです。第5回目にしてすでにテーマが無理矢理っぽくなっていることは気にしないで下さい。W杯を観ていると世界各国の美女サポーターがテレビに映し出されます。きっと美女探し担当のカメラマンがいるのでしょうね。いわゆるブス専といわれる方には遂行できない任務だな。その美女たちはユニフォームだったり、自国のカラーのスケベな服を着ていたり、自分たちの美しさをここぞとばかりにアピールしています。これぞ女子力!渋谷に集まる女子サポーターたちもユニフォームにミニスカートを合わせたり、裾を結んでお腹を出したりと努力この上ない。まあ私に言わせれば、日本戦の時の渋谷は規模の大きな合コンみたいなものなので、女の子たちはそりゃはりきりますよね。この時に大切なのは「今のってどうしてファウルなのぉ?」と男の子に可愛く質問を投げかけたりすることですね。決して私のように某サッカー番組で「DFの連携の甘さがいつも失点に繋がる」などと言わないことです。元日本代表の都並さんも若干ひき気味でした。

 とここまでサッカーの話になりましたが、コラムの第1回目に憧れの選手は大洋ホエールズのポンセと書いたように私のスポーツ観戦の原点は野球です。巨人戦は人気があってチケットがなかなか取れなかったので、母が連れて行ってくれたのはきまって神宮球場でした。球場を初めて訪れた時の感動は今でも鮮明に覚えていますし、球場に足を運ぶわくわく感は今も昔も変わりません。そして今も昔も変わらないことといえば、必ずグローブを持って行くということです。よく子どもたちがフェンス越しに「ボールくださーい!」と選手たちにボールをねだる光景を見かけますが、目を凝らして見てみるとその中に一人おばさんがまじっている時があります。もちろん私です。でも悲しいかな、選手が私にボールをくれたことはありません。子ども優先。いいなー。私にくれたら電話番号を書いて投げ返してあげるのに。バレンティン、チャンスだぞ。もちろんグローブを持って行く本来の目的はホームランボールを取ることです。夜空に放物線を描く白球、真っ直ぐにグローブをかまえる私。「女になんてとれるか!引っ込んでやがれ!」ビールを持った中年男が怒号を飛ばす。白球はぐんぐんと私に近づいてくる。そのスピードは隕石のようだ。しかし私は怯まない。次の瞬間、グローブを通して私の全身に大きな衝撃が伝わる。呆然とする中年男は手にしたビールが傾きこぼれていることにも気づかない。しばしの静寂、そしてスタジアムに鳴り響く拍手。見事ホームランボールをとった私のもとに一人の少年が駆け寄ってくる。「すごかったです!握手してください!」私は微笑みながらすっとホームランボールを彼に差し出す。「坊主、大人になったら君のホームランボールで返してくれよ」「は、はい!」20年後、その少年がヤンキースタジアムでバッターボックスに立つ姿を見つめている老婆が一人いた。え?なんだ、これ?

 何はともあれ(便利な言葉)、スポーツにはドラマがあります。観戦する人間にもそれぞれのドラマがあります。写真は子どもの時からずっと使っている私のグローブです。このグローブをドラマにした小説『緑色のグローブ』は短編集『色鉛筆専門店』におさめられております。ちゃっかり自著の宣伝をする、これぞ女子力!
 

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website