大パンティー祭り
2015-04-27 11:58:00
先日、洋服屋さんでレースをあしらった可愛いビスチェを見つけ、カーディガンやジャケットの下に着るのに良いなと思い購入。家に帰ってはさみで値札をはずそうとしたところ、そこに『スカート』と書いてあってびっくり仰天した西山です。洋服のセンス云々ではなく、もうその洋服が何なのかもわからない。加齢ではなく、むしろ赤ちゃんがえりなのではないでしょうか。バブバブ。そんな買い物下手の私ですが、つい先ごろ楽しみにしていたセールに行ってきました。半期に一度のイベント、『伊勢丹春の大パンティー祭り』です。もちろん私がそう呼んでいるだけで、そんな名前ではありません。お洒落の頂点、天下の伊勢丹様がそんなネーミングをするわけはありません。本当は『ワコール ビッグバザール』という名のバーゲンであります。男性はワコールと聞いてもピンとこない人がいるのかしら?ワコールは日本一の、いや私が思うに世界一の下着メーカーなのであります。下着と女子力!これは、やばいよ!またやばいこと書くよ!
実はあたくし、下着が大好きなのでございます。連載開始から一年が経ち、初めて女子力が高い西山繭子が出てきました。昨年末に引っ越しをした時にけっこう処分してしまったのですが、それでも引き出しを開けますとざっと20セットほどの下着が、色別に美しく並んでおります。セットというのは上下セットということ。つまり、おブラジャーとおパンティーですね(上品に言ってみた)。それとは別にセットじゃないものがばらばらと。この『セット』というのが非常に大切なのです。下着屋さんで、美しいセットを見ているだけでうっとり。素敵なものになると同じモチーフのスリップなどもあったりして、揃えたら5万円とかざらなんですよね。そんな高価なものになると、もちろん洗濯機では洗えません。中性洗剤で手洗いして、型崩れしないように形を整えて陰干しをして……となると、どういうことになるか、わかりますよね?そう、面倒くさくてめったにつけません。で、いつも身につけるものといえば履き古してダルダルになったパンツ(決してパンティーではない)に、洗濯機でがんがん回されてワイヤーが歪んだブラジャーなのですよ。これらは昔セットで購入したものが戦力外になり、ばらばらに使われています。なので、お風呂に入る前に服を脱ぐと「あ!今日、上下揃ってた!」とたまにビンゴに当たったみたいな気分にもなります。頻繁に身につけているそれらを見ると、やはり断トツでワコールが多いのです。これまで海外でもたくさんの下着を買ってきました。パリで買った真っ赤なレースのセットなんて、もうため息が出るほど美しいのです。でも、このパンティーがですね、スッケスケのエッロエロで私が考えるパンツとしての機能を一つも果たしていないのです。もうどこも隠れてない!みたいな。しかも食い込みがパねえ。ハンパねえ。欧米メーカーのおパンツをたくさん身につけてきて思ったのですが、やはり欧米人と日本人ではお尻の形がだいぶ違うから、心地良くはけないのですかねえ。もちろんおパンツの形によりますが、私の経験上、可愛ければ可愛いほど食い込みます。可愛さと食い込みが比例するのです。女子に人気のヴィクトリア・シークレットも、私が持っているものはがっつり食い込みます。これってやはり日本人だからなのかなあ。だってミランダ・カーが「キョウモ、メッチャクイコンデンネン」って言うところなんて想像がつかないもの。食い込んでないのか、はたまた食い込みに耐える力が備わっているのか。んー、謎だわ。しかし、後にも先にもこんなに「食い込む」と書く原稿はないだろうよ。
ということで、身体に心地良いワコールの新しい下着を買いに『伊勢丹春の大パンティー祭り』へ。私は初日の午後に参戦したのですが予想以上にそこは戦場でした。平日の午後ということもあってマダムが多かったです。彼女たちのワコールに対する信頼感たるや、若者の非ではないのでしょう。女性たちはみな、下着が積まれたワゴンを鬼の形相で物色します。おブラジャーとおパンティーは別々のワゴンに置いてあるので、そこから自分でセットを見つけ出さなくてはいけません。もちろんセットで買わない人もいるし、サイズの問題もあるしで必ずしもセットが揃うわけではありません。だから、もうみんな必死。私もいくつか目ぼしいものをチョイスして試着室へ。『大パンティー祭り』だけあって催事場の試着コーナーには40ほどの試着室がずらりと並び、そしてそこにはメジャーを首からかけた『オッパイ測り隊』の姿も。私は自分のサイズを把握しているので、測ってもらわなくていいのですが、選んだブラジャーが想像以上に良くて、思わず誰かに見てもらいたくて試着室のカーテンを開けて外に飛び出しました。「すみませーん!これ、サイズ大丈夫ですかね?」他のお客さんが行き交うなか、私はブラジャー姿で堂々と両手を広げました。みんな見て!ぴったりよ!ワコールってやっぱり最高よ!私は心の中で叫びました。そんなこんなで『オッパイ測り隊』のおばさまにもお墨付きをいただき、大満足の大パンティー祭りなのでありました。写真は下着の引き出しに入れているリバティのラベンダー・サシェです。
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。
西山繭子さんの新刊
【バンクーバーの朝日】
~フジテレビ開局55周年記念映画 公式ノベライズ~
戦前のカナダ・バンクーバーで生き抜く
青年たちの葛藤・奮闘・友情を描いた最高傑作!
バンクーバーの朝日
西山繭子
マガジンハウス文庫
320p 620円(税別)
オフィシャルサイト→FLaMme official website