青野サンバ
2015-09-07 11:45:00
先日このTV&smileさん主催のお疲れ様会があった。小宮山雄飛さんをはじめ、コラムを書いている作家さんやお世話になっているスタッフの皆さんとわいわいという素敵な宴。個々に連載している作家さんとお会いする機会というのはなかなかないので、ふむふむとお話を伺う。「ハリスさんの連載って、月1ですか?」「いやー、最近全然書いてないなー。あはは」「さなえちゃんの連載、毎回ネタ探し大変だね」「7月、書くの忘れててん!」「田中さんも連載やってますよね?」「もうずいぶん書いてないです」何だよ!私だけ超真面目じゃん!生徒会長レベルだよ!自由学園TV&smileだな。まあ、その校風の緩さがTV&smileの良さであったりもします。その自由学園TV&smileの生徒たちが一同に会したのは、とあるカラオケスナック。カラオケがある場所に行くのはたいそう久しぶりでした。カラオケで歌う曲って、世代や人となりが出るから面白いですよね。私は、知的な連載をされている青野さんが歌う『お嫁サンバ』が大好きで、この日もそれを聴きたいがために行ったと言っても過言ではない。青野さんに初めてお会いしたのもこのスナックだったのですが、青野さんってば、物静かだし、シャレオツだし、ビームスだし、近寄りがたいと思っていたのですが、『お嫁サンバ』の前奏ですくっと立ち上がった青野さんは、似せてんだかどうだかわからない微妙な声色で、たまに微妙な踊りを織り交ぜながら『お嫁サンバ』を完璧に歌いこなしました。この『お嫁サンバ』ならぬ『青野サンバ』は私的重要無形文化財であります。いっぽう私はマイクを薦められても「歌うの苦手なんですよねー」と一曲も歌わずに聴いていたのですが、本当は歌うのちょっと好きです。てへ。
カラオケというと昔はおじさんのためのものといった感じでしたが、私が小学生の時にカラオケボックスなるものが出来始め、それはあっという間に一大レジャー産業となり、人々に浸透しました。誰もが平気で人前で歌うようになったのだから、奥ゆかしい日本人の大変換期のような気もします。私が初めてカラオケボックスに行ったのは、夏休みに滞在していた祖母のいる山形でした。親戚一同10人ほどで、だだっぴろい土地に建てられたカラオケボックスに行き、三世代でやんややんや。その時に私が歌ったのは小柳ルミ子さんの『今さらジロー』でした。小学生の私はどんな気持ちで『今さらジロー』を歌っていたのだろう。そして中高生になると、よく友だちとカラオケボックスに行くようになりました。まずは女の子同士で行ってがんがん練習。そして他校の男子生徒と行って「えー、あんまり歌ったことないからなあ」と言いながら練習しまくった曲を歌う。ああ、今思えばなんて女子力が高かったんだ!男の子に好かれるための努力をおしまなかったあの頃!あの当時、男子生徒の前でみせる笑顔とは裏腹に、水面下で女子は歌う曲を奪い合っていました。一番人気があったのは小泉今日子さんの『あなたに会えて良かった』でした。相手の男の子に野球部がいたりすると森高千里さんの『ファイト!』を歌ったり。なんてあざとい中学生なんだ!そんな中、私が好んでよく歌っていたのは杏里さんの『悲しみがとまらない』。うーん、『今さらジロー』と言い、何かズレてるんだよなあ。女子力の無さはこの頃から垣間見えていたんだな。高校3年から大学1年にかけてはカラオケボックスでアルバイトをしていました。部屋数10ほどの小さなカラオケボックスは自由学園TV&smile並みの緩さをもつ職場で、仕事終わりに部屋が空いていれば何時間でも歌わせてくれました。当時は小室ファミリー全盛期で、歌いたい曲が山のようにありました。安室奈美恵、globe、華原朋美、hitomi。部屋で一人だから、どんなに下手でも心おきなくがんがん歌う。そのうち歌う曲がなくなってマイケル・ジャクソンの『Billie Jean』なんて入れちゃって、サビの「びりじーん」しか歌えないじゃないかよって時もありました。その時が私のカラオケ黄金期。今では男子の心を掴むのに何を歌えばいいのかなんてわからない。たぶんジュジュとかテルマとかミリヤとかなんだと思うけど、わからない。ちなみに私の姉は、その中にハルヒというのもいると思っているが、それが違うことぐらいはわかる。私はもっぱら洋楽を聴くことが多いので、そちらを練習しようかなとも思うけど、洋楽の曲はカラオケで歌ってもまわりが戸惑うし、むしろ迷惑みたいな感じになる。それはTV&smileの会で大橋慶三さんが『Welcome to the jungle』を熱唱して体現してくれました。でも大好きなAdeleを上手に歌えたら気持ち良いだろうな。『Someone like you』とか情感たっぷりに歌ってモテたい。ライアン・ゴスリングみたいなハンサムに「昔の男なんて忘れろよ。俺がいるだろ」って言われたい。そしてお嫁にいくんだ。もちろんBGMは青野サンバだ。
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。
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