ドンキホーテ
2020-01-27 14:03:00
誕生日をむかえ42歳になりました。以前、平子理沙さんが「年齢はただのナンバー」と言っていました。その時はよくわからなかったのですが、今ならわかります。うん、確かにナンバー。だって41も42も何も変わらない。もはやどうでもいい。43でもいい。しかし誕生日の朝、母から電話があり「お誕生日おめでとう。大きくなったねえ」とわけのわからないことを言われ困惑。もう確実にそんな次元ではないし、むしろ身長に関しては小さくなっていると思います。そして甥っ子は姉に「え?今日、まーたんの誕生日なの?もう40歳とかになるの?」と訊いてきたそうで、姉が「えっとね、40歳にはとっくのとうになってるよ」と答えると「えー!まーたん、すごいおばさんじゃん!」と驚いていたそうです。そうですよ。まーたんは立派なおばさんなのですよ。でもね、おばさんだけどまだまだ女子力向上をあきらめていないのですよ。今年は年明け早々にその女子力向上の極みともいえるビックイベントがありました。ここでも告知をしましたが、バレエの発表会があったのです。
大人からバレエを始めて7年、これまでも一人で踊る『お金を払えば誰でも出られるコンクール』などには出場してきましたが大規模な発表会は初めてでした。何事も挑戦だという向上心、そしてこれをネタに何か物語が書けるかもという邪な気持ちがはたらき、参加者を募る先生に「西山、出まーす!」と即答しました。しかし、これが間違いであったと気づくのにそう時間はかかりませんでした。今回はバレエの古典名作『ドンキホーテ』を全幕やるということになりましたが、もちろん教室のメンバーだけでは成立しません。主演は東京バレエ団の秋山瑛さん、池本祥真さん、そしてNBAバレエ団の阪本絵利奈さん、ワシントンバレエ団の滝口勝巧くん、劇団ショーGEKIの皆さんなどが参加して下さいました。それに加えて、幼稚園生からOL、はたまた60代のマダムまでと、とにかく幅広い。バレエですからね、もちろん踊りは大変なのですがそれ以前にみんなのスケジュールがまったく合わない!初めて全員が揃ったのは当日のゲネというありさまでした。これまで自分が出た舞台というのは、本番までみっちり稽古をして、そしてお客様の前に立つというものでした。今回、発表会とはいえチケット代を1000円いただくわけですから、こんなんで良いのだろうかという思いがずっとありました。とはいえ幕は開いてしまうのだから精一杯やるしかない。そんなこんなで向かえた本番1月5日。晴れ渡る青空のもと、いざ調布グリーホールへと向かいました。この会場の大ホール、なんと収容人数は1307名。ガラガラを阻止すべく、一人10枚のチケットノルマは何とかさばきましたが、それにしても大きすぎる。しかも今回はバレエの合間に芝居が入るというスタイル。プロの役者でもこの大きさの会場で地声というのは厳しいのに、ドンキホーテ役は教室の代表である西優一先生。稽古中から無理があるなと思っていたのですが、案の定当日見に来てくれた友人からは「何を言っているのかまったくわからなかった」と言われました。そりゃそうだ。しかしながら大切なのは、やはりバレエ!プロの皆様はもちろん素晴らしい演技をしてくださいましたが、何しろまわりはほとんどが素人。プロの素晴らしい演技に本番中にもかかわらず見とれて棒立ちになってしまうということもしばしば。そして稽古中から先生に「かたまって立たないで!舞台上に隙間を作らないで!」と何度も言われていたので、隙間を埋めるべく立ち位置を気にしていたら今度は池本さんの出の動線をふさぐというありさま。舞台そでから池本さんが「出まーす。そこ出まーす」と声をかけてくださいました。普通ないだろ、そんな舞台。池本さん、ごめんなさい。でも今回で大ファンになりました。3時間という上演時間をお客様は長く感じたと思いますが、こちらはもう怒涛の嵐のように過ぎ去っていきました。終演後、ヘトヘトのベトベトのままご挨拶のためロビーに行くとそこには事務所の社長の姿が!絶対に来ないだろうと思っていたので、すごく嬉しかったです。私は背が高い方なので、群舞となるととにかく後ろ、端っこに追いやられるのですが、社長はそれが納得いかなかったようでぶつぶつ文句を言っておりました。ビバ親心!そして驚いたことに、ロビーで「いつもコラムを楽しんでいます」と女性が声をかけてくださりました。しかも「早めのお誕生日プレゼントです」とシャネルの口紅まで!普段、原稿を書いていると「私の文章なんて、きっと誰も読んでないよ。ふん」となることがあります。なので、こんな風に実際に声をかけていただくと本当に嬉しいのです。しかしその女性が一番楽しみにしているのは『Untrue Life』という私のブログだそうで、少しだけ申し訳ない気持ちになりました。だって数カ月に一度しか更新していないんだもの。なぜ更新しないかといえば、コメントがあまりにも誹謗中傷ばかりで傷つくというのもあるけれど(うふふ)、一番の大きな理由は「一銭にもならない」からです。せこっ!西山繭子、せこっ!でも今回の件で、もう少しだけ頑張ってみようかなと思いました。写真は、いただいた花束で開店祝いのようになった我が家の玄関です。
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。
オフィシャルサイト→FLaMme official website