カウントダウン│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#147

カウントダウン

2020-05-25 13:35:00

 もともと休日でも6時には起きていた私ですが、外出自粛生活になってからというもの、それが5時になり、いつの間にか4時になり、このままいくと3時、2時となって昼夜逆転生活になってしまうのではと心配しています。ひとまずこの1週間ほどは4時で安定しているのですが、この時間に起きると1日が長いのなんのって。しかもずっと家にいるわけですからね、もう自分のやりたいことが全部できるという幸せな日々ですよ。相変わらず朝夕2回のウォーキング&筋トレ、語学の勉強、執筆、読書の繰り返しなのではありますが、まったく飽きません。ここ最近はネットに繋ぐのも数日おきで、外界とのつながりをほぼシャットアウトしているため、ますます心地良い。早寝早起きに加えて、きちんと運動をしていたり勉強をしていたりで一見まともな生活のように見えますが、実際のところは、怠惰、怠慢、無精、懈惰、懶慢、曠廃といった字面を見るだけで「ダメ」を連想させるものたちに身体の隅々まで侵食されています。だって明日も明後日も今日でいいと本気で思っているのですから。もう働きたくないニャア。誰とも会いたくないニャア。お金も減らないで歳もとらないで、ずっーーとこのままだったら良いのにニャア。生きる意味とか目標とかゼロですよ、今の私。これで昼から酒でも飲んでいたら完璧なのですが、残念ながら4/7の緊急事態宣言以降、1滴も呑んでいないのです。もともと家で飲む習慣がないのと、この時期にお酒を飲んだら後戻りできないまでの廃人になりそうなので、そこは理性が働いております。いやでもね、天気が良くて洗濯物がパリっと乾けば、ずっと同じ日の繰り返しでいいです。映画『恋のデジャ・ブ』で私は構わない。その旨を数少ない会話の相手である姉に話したところ「うん、うん。そうだね。でもまーたん、貯金は減るし、どんどんおばさんになっていくから、ちゃんとしようね」と窘められました。ふー、そうだよね。6月には職場での仕事も再開予定だし、そろそろ社会復帰するための準備をしなくてはいけませんね。下がりきってしまった女子力も上げていかねば。そのための第一歩としては、まずは洋服を着る。ここからです。この2ヵ月、パジャマと家着にしか袖を通していない私。しかも家着は5月だというのに、いまだにヒートテック。黒の長袖ハイネックに黒のレギンスという冷え性のキャッツアイみたいな感じになっています。これを3枚ずつ持っているので、ずっとこれ。天気の良い日に同じ格好で同じ洗濯物を干す女。そんな怪しい女に階下からいつも笑顔で挨拶をしてくれる、はす向かいの工務店のおじさんは本当に優しいなと思います。ここ最近じゃ、働いている若い衆も「おはようございますっ!」と声をかけてくれて、もう気分は岩下志麻さんですよ。ヒートテック姐さんどすえ。しかし、これらはそもそもインナーなので、これだけで過ごしてはいけないやつなのかもしれません。まずはヒートテックからの脱皮が急務ですね。洋服を着たら、次はお化粧でしょうか。先日のコラムで紹介した動画を撮る際に久々にメイクをしましたが、アイラインを引くのが確実に下手になっていました。動画の中で徳永えりちゃんが「お化粧をしてメイクの勉強をしたり」と言っているのを見て、すごいなあと思いつつ、でも職場ではマスクをしなきゃいけないからメイクしなくてもいっか、とどこまでも怠惰な私です。あ、ちなみに外出自粛期間に入る時にチャレンジした「鼻の下のうぶ毛をのばす」は、動画撮影のために泣く泣くシェービングしたわけですが、途中経過を見ていた感じでは、目指していたフレディ・マーキュリーになりそうな気配はまったくなく、ラーメンマンみたいになりそうでした。残念。こうして洋服、お化粧と外面を整えたら、次は人とのコミュニケーションを復活させることですね。外出自粛になってからというもの、私は本当に独りが好きなんだなということがよくわかりました。「友だちに会えないのがつらい」という声が聞こえるたびに、会いたい人なんていないよあー。しいて言えば、竹野内豊さんだけど、そもそもコロナ以前にも会ってないしなあと、どうでもいいことを考えていました。私自身は友だちが少ないとも思っていませんが、オンライン飲み会などに誘われることは一度もありませんでした。てか、そもそもそんな気持ちの悪いものを開催する人と友達にならないし。ああ、こういうところがいつまでたってもお一人様の理由なのだろうな。来たる社会復帰までのカウントダウンが始まった今、女子力と共にセロトニンも増やしていかなくてはいけません。ちなみに、この本の著書であるフランス人作家ミシェル・ウェルベックいわく「コロナ後の世界は何も変わらない。少し悪化するだけ」だそうです。

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2020.5.25 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website