英国展│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#154

英国展

2020-09-07 11:55:00

 久しぶりに映画の試写会に行きました。コロナ対策で座席数を減らしているために事前予約というスタイルになりました。これまでは行ったものの満席で入れませんということが幾度もあったので、予約制は個人的にはありがたかったりもします。ポストからこの映画の試写状を取り出した瞬間、「絶対に行く!」と私は沸き立ちました。なぜなら、タイトルが『ノッティングヒルの洋菓子店』なんだもの。なんと女子力をくすぐるタイトルなんでしょう!その名の通りノッティングヒルにある洋菓子店の物語なのですが、原題は『Love Sarah』。ノッティングヒルのノの字もない!しかし、この邦題にした配給会社は大正解。だって『ノッティングヒル』という言葉に食いついてくる私のような女子が日本にはごまんといるのです。『ノッティングヒルの蕎麦屋』でも『ノッティングヒルの座敷わらし』でも観に行く女子たちが。それだけ『ノッティングヒルの恋人』という映画は偉大だということですね。映画は総本山のようなラブストーリーではありませんが、素敵な女性たちが奮闘する前向きになれる物語。そしてそれに加えて観ている人たちの心を鷲掴みにするのは映画に出てくるスイーツの数々。甘いもの好きにはもうたまらん映画です。それもそのはず、ロンドンの大人気デリ『オットレンギ』が全面協力しているのです。映画は、私のスイーツ欲を極限まで揺さぶります。外出自粛生活に入った4月から今日までずっとダイエットを続けている私ですが、ここ最近は誘惑に負けることも多くなりました。しかし早朝の筋トレとウォーキングはかかしていないので、一時的に増えた体重もあっという間に戻ります。ビバ体質改善。ということで、この日は試写会が京橋ということもあり、その足で日本橋の三越(また日本橋!)で行われている英国展に行くことにしました。うひひ。スイーツがいっぱいだぞ。それにしても英国気分に浸ったまま英国展に行けるなんて、私はなんて幸せものなのでしょう!これで隣にヒュー・グラントがいたら文句なし!もう還暦だけど!
 しかし私のそのウキウキ気分も、英国展が行われている7階催事場に着いた途端、打ち砕かれることとなります。混んでいるとは聞いていましたが、これほどまでかと驚く人出。英国好きのご婦人方がこれほどまでに多かったとは!私が着いたのは15時ぐらいでしたが、人気店はどこも売り切れのオンパレードで、残っている商品にも長蛇の列。特にスコーンとクロテッドクリームは、ぐるりと階段まで列がのびていました。いつもだったら「じゃあ、いいや」となる私なのですが、この日は「意地でも買ってやる!」というモードに。これも全部コロナのせい。だって大好きな外国旅行に行けないんだもの!ロンドンに行きたくても行けないんだもの!だから、意地でもスコーンとクロテッドクリームとジャムを買って、家で英国気分を味わってやる!それぞれお店が違うので、並んだ時間は総計1時間といったところでしょうか。本を読んでいたので、あっという間ではありましたが、せっかく並んだのだからと賞味期限が3日だというのに大容量のクロテッドクリームを買い、せっかく並んだのだからと一人暮らしなのにスコーンを15個も買い、せっかく並んだのだからとストロベリーだけと思っていたのにマーマレードとブルーベリーのジャムを買い、まさに三越の思うつぼ!しかし、こういうお客さんが日本の消費を支えているのです。私、グッジョブ!そして翌朝、この日も西山繭子は4時に起きて筋トレとウォーキングに精を出します。このあとに待っているスコーンのことを考えると、スクワットの回数も自然と増えてきます。そして汗だくになった身体をシャワーで洗い流し、1日で最も幸せを感じる朝食の始まりです。いつもはコーヒー党の私ですが、この日は紅茶。だって英国だもの。以前ヨークという中世の面影を残すイギリスの街で買ったアンティークの茶匙で、茶葉をポットに投入。お湯を一気に注いで茶葉が踊る様子をしばし眺めます。香り立つ優雅さにうっとり。そしてお皿にはオーブン(うちの場合、魚焼きグリルだが)で温め直したスコーンを。もう気分はエリザベス女王であります。「We will be with our friends again.We will be with our families again.We will meet agein」いやはや、最高のスピーチです。またいつかロンドンに行ける日を夢見て、今はしばしの辛抱。私はスコーンにたっぷりのクロテッドクリームとジャムをのせました。その美味しさに朝からにんまり。しかし、ここで一つ問題が。たっぷりのせても、賞味期限3日のクロテッドクリームを消費するにはまだ足りない。ということで、さらにたっぷり。そして、さらにさらにたっぷり。あ、もうひとつたっぷり。こうして仕事に行く頃には、少し気分が悪くなっていました。やはり人間、欲張ってはいけませんね。42歳にもなってまだまだ学ぶことの多い人生だなと思う英国展なのでありました。

image2

2020.9.7 配信

最近のコラム

西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website