あけました│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#186

あけました

2022-01-10 12:11:00

 2022年になりました。寅年です。私にはインドの森で野生のベンガルトラと遭遇したいという夢があるのですが、噂によると、野生のトラに遭遇した場合「あ!トラだ!」と思った次の瞬間には襲われて死んでいるそうです。真偽のほどはわかりませんが、人生の最期に思うことが「あ!トラだ!」の喜びなのであれば、それはそれで悪くないように思います。まあ、その夢を叶えられるのもコロナ禍が終息して再び自由に旅ができるようになってからではありますが。この年末年始も前回に引き続き、全力で寝正月。元旦こそ母と姉の家をまわり新年の挨拶をしましたが、そのあとの3日間は家から1歩も出ませんでした。ただただ本を読み、映画を見て、そして寝るという至福の時間。ノンストレスな上に、年末にコスメデコルテのカウンターでいただいた美容液のサンプルが功を奏してお肌はピカピカ。そしてここ最近、定期的にやっている酸熱トリートメントで髪はツヤツヤ。連載開始8年目にして、ようやく女子力が高まってきました。良い兆しであります。こんな好調なスタートが切れたのは全力で寝正月をしたおかげもありますが、2021年に最高の大晦日を過ごせたことも起因しているのではないかと思います。
 大掃除なども全て終わらせた大晦日の午後、寒風吹きすさぶなか私は自転車を走らせていました。行先は東京オペラシティ。こちらで行われる年末ジャンボ抽せん会へと向かっていたのです。毎年年末ジャンボはバラで10枚だけ買っているのですが、今回の購入時にこの抽せん会の応募用紙が売り場に置いてあるのを見かけました。へえー、コンサートも見られるんだあ。と、ダメ元で応募してみたら見事当選。宝くじの運をこちらで使ってしまったのではと複雑な気持ちにもなりましたが、これまで毎年ニュースで見てきたクルクル回るルーレットを実際に拝んでみようではないかと、宝くじを握りしめ向かったのであります。私が到着したのは抽せんも佳境に差し掛かった時分でした。すでに発表になっていた抽選番号を照らし合わせたところ「ひゃ!1万円当たっている!」と大興奮。しかし喜んだのも束の間、それは年末ジャンボミニの当選番号でした。ちっ。気を取り直して3等100万円の抽せんです。「さあ女神。いよいよ3等ですね。女神だったら100万円が当選したらどんなことに使いたいですか?」ステージの上で司会者の男性が、隣にいる美しい女性に問いかけます。なぬ?女神?この時初めて知ったのですが、彼女たちは『幸運の女神』。あとにも先にも私は、これほどまでに堂々と女神という呼称が使われている状況を見たことがありません。ああ!私も女神と呼ばれたい!のちに調べたところ、幸運の女神は毎年募集しているようで残念ながら令和4年度の女神募集はすでに〆きられていました。ホームページを見ると若いお嬢さんしか並んでいませんが、年齢制限は20歳以上なので私も大丈夫のようです。令和5年、日本に45歳の女神が降臨するやもしれません。ステージ上では女神が見守るなか、次々と矢が放たれます。これがごく稀に1と2の間といった際どい刺さり方をするのですが、その時に出てくるのが立会人と呼ばれる方々。この日は財務局から派遣されていました。会場内は平和的な雰囲気なのですが、10億円がかかっているのですから場合によっては、立会人は命を狙われかねないのではと思いました。そしていよいよ1等の抽せんが始まります。ここでステージに現れたのが、カイロ大学を首席で卒業した小池百合子さんといつも印象の薄い金子恭之総務大臣でした。ずいぶん偉い人が出てきたもんだなあと思いつつも、まあ金のある場所に政治家ありと妙に納得したのであります。今回も7等の300円のみという結果に終わりましたが、なかなか楽しい抽せん会でありました。そして私が何よりも感動したのが、このあとの特別コンサートでした。指揮は大友直人さん、管弦楽は読売日本交響楽団、ピアノ仲道郁代さん、そして日本を代表する歌い手の方々による至福のコンサート。歌劇『カルメン』の前奏曲が始まった瞬間、その迫力に胸が震えました。美しい音色、一体感、心に語りかける旋律。音楽ってこんなにも素晴らしいものだったのですね。何よりもオーケストラの皆さんが本当に嬉しそうに楽器を奏でていることがとても印象的でした。そんな彼らが演奏しているのですから、もう会場内には幸せが充満。宝くじのことなんていつの間にか忘れてしまいました。そして最後に演奏されたのはラデツキー行進曲。あまりにも有名なこの曲は、数年前アウシュビッツに行った際、クラクフの教会で行われたミニコンサートでも演奏されていました。音楽に合わせて教会にいた全員が笑顔で手を叩きました。そこには世界中からの観光客がおり、帰りがけに「ハッピーニューイヤー」と挨拶を交わした老夫婦はドイツ人でした。音楽のある場所に幸せあり。2022年も自分の足でどんどん幸せを見つけに行きたいと思います。

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2022.1.10 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website