真面目に生きるんだ
2023-01-07 19:05:00
皆さま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。4日が仕事はじめだったため、あっという間にいつも通りの日々となりました。今年はとにかく真面目に生きよう。そう胸に誓う私です。まあ毎年三が日はいつもそんな風に思うものですが、今年こそは本当の本当。今、この原稿を書いているのは8日でありますが、まだ真面目モードが続いています。あと357日、頑張ろう。なぜ、そこまで頑なになっているのかといえば、年末のわたくしがあまりにも酷かったからでございます。25日、時はクリスマス。その日は勤めている会社の仕事納めだったので、自分へのご褒美とばかりに一人で飲みに行きました。そこは20年近く通う馴染みのバー。行く前に、いつもお世話になっている店主に何かクリスマスプレゼントをと思いスーパーに寄りましたが、驚くことに店内はもうお正月一色。前日のイブはマライアキャリーが流れていたというのに。恐るべし季節商戦。本当はクリスマスなお菓子を買いたかったのですが、色が赤ということでガセリ菌が入ったヨーグルトドリンクを購入。当然ながら「メリークリスマス!」と渡された店主も微妙な反応でした。そのお店は、私の人生になくてはならない大切な場所なのですが、大切なわりにはいつも海賊のような飲み方をしてしまいます。一杯目を飲む時にはいつも「今日こそは飲み過ぎないぞ」と思うのですが、気づいたらディズニーランドの『カリブの海賊』みたいな状態になっているのです。その日もやはり他のお客さんとお喋りに興じていたら、わいわいとお酒がすすみ、最終的には、お会計をした数分後に「お会計してくらさーい」と声高らかにお願いするというダメっぷりでした。とはいえ22時頃には家に帰ったのですが、満腹中枢が完全に麻痺していた私は「小腹減ったー。そして今日はクリスマス♪」ということで緑のたぬきを食べることに。ガセリ菌に続いてのクリスマスカラー。録画してあった『素晴らしき哉、人生!』を観ながらずるずる。もうこの時点で女子力マイナス100万点なのですが、このあと二日酔いにならないよう大量の水を飲んで横になったところ、夜中に気持ち悪さに目が覚めて、吐くという始末。44歳のクリスマスに一人で飲み過ぎてゲロを吐いたなんて、誰にも言えません。この話は墓場まで持って行きます。しかしおかげで翌日は二日酔いもなくすっきり。クリアな頭で税理士さんとの打ち合わせにのぞみました。それは父の事務所の仕事だったのですが、多くの会社と同じようにこちらは28日が仕事納めでした。最終日はさほど業務もなかったので、せっせと大掃除。すると引き出しの奥に大量の外貨を発見!ずっしりとした重みの袋を手に、ひゃっはー!金だ、金だー!と、ここでもカリブの海賊になった私ですが、中身を確認したところ、今では使えないフランやペソ、香港ドルの旧紙幣などがほとんどで「ちっ」となりました。そしてこの夜は、本当の仕事納めということで20代の頃に一緒に仕事をしていた編集者さんと新宿二丁目へ。昔はよく遊びに行っていたのですが、もう10年以上ご無沙汰していた二丁目界隈。当時はLGBTなんて言葉もなかったけれど、自由で煌びやかで20代の私にとってはすこぶる楽しい場所でした。今は観光地化しているところも多く、昔とは少し様相が変わってきているそうです。よく飲みに行っていた店に行くと、久しぶりに会うママが「繭子さん、全然変わらないじゃな~い」と歓迎してくれました。その昔、誕生日パーティーでドラァグクイーンになったママが安室ちゃんの曲にのせて宙づりで登場するという、意味不明な演出に腹を抱えて笑ったことを思い出します。「繭子さん、本も出されたのよね?作家先生じゃな~い」「最近、小説はとんと書けていないんだけどね」「そんなこと言わないで、田辺聖子先生にみたいになってちょうだい!」その時、私のバッグにはちょうど田辺聖子さんの『鏡をみてはいけません』が入っていたのは、何とも素敵な偶然。「久しぶりに会えたし、年末だし、シャンパンお願いしまーす!」「あら繭子さん、素敵!」みんなで思い出話に花が咲きます。この日はクリスマスのようなことにはならず、わりかしおしとやかに飲むことができました。そしてそろそろ電車の時間がということになり、「お会計を」とカードを出したのですが「そんなもの、使えるはずないじゃない」とママに一蹴され、結局、年末の最後の最後にツケをつくるというダメっぷり。こんな年末だったので、今年は真面目に生きようと胸に誓ったのであります。写真は、大量の外貨の中に混ざっていたカジノのコインです。ケニアにもカジノがあるのですね。可愛かったので、父には内緒で頂戴いたしました。
2023.1.9 配信
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。
オフィシャルサイト→FLaMme official website