甘やかし│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#212

甘やかし

2023-02-13 12:34:00

 今朝は目覚めた瞬間から「ああ、やっぱり」と後悔の念。本来であれば、朝はおなかがすいている状態がベストなのですが、胃がどんよりと重い。「ああ、やっぱり」と後悔の念アゲイン。それもそのはず、昨夜の21時過ぎに町中華でラーメン、餃子、生ビールをやってしまったのですから。もちろんそれが身体に悪いことはわかっていたのですが、どうにも抑えることができませんでした。昨日は本当に働きすぎたのであります。いつも通り4時に起床してから、まずは原稿を書きました。依頼されている旅のコラムです。コロナ禍でもう随分とまともな旅をしていないので、毎度苦労してしまいます。それを書き終えたら、慌ただしく会社へ出勤。会社勤めもすでに5年目になりました。一緒に働いている同僚たちとの出逢いをはじめ、芸能界の仕事だけではわからなかったであろう社会的通念など、会社員になったことで得たものは非常に大きいです。もちろん仕事は大変です。まあ、仕事が大変じゃない会社なんてないのだろうけど。会社に勤める前は、いつも「仕事が終わらない」と言っている友人を「デキない奴」と思っていたのですが、仕事が終わっちゃったら、会社ってつぶれちゃいますよね。だから仕事というのは永遠に終わらないのです。それを承知の上でいかに効率的にやっていくかということが大切。そこには手腕も必要になってくるわけで。その点に関しては、自分で言うのも何ですが上手くやれている方かと思います。上手くやれているというか、まずは準備ですね。日課である早朝のウォーキング中、私は常に段取りを考えています。仕事の段取り、スーパーでの買い物の段取り、人と会う日程の段取り。時間がない中で、少しでもスムーズにことを運べるように。心と身体に無理がないように。そうして仕事に勤しみ、昨日も通常の8時間労働。タイムカードを押し、まだ残っている同僚たちに「お先に失礼しまっす!」と軽やかに挨拶。切り上げるのがとにかく早い西山さん。以前、20代の同僚に「ここの人たちってみんな仲良しですよね。ごはんとかよく一緒に行きますし」と言われ「え!私、ぜんぜん誘われたことないんだけど!」と驚いたことがあります。「あ、えっと!なんかみんな、西山さんを誘うなんて恐れ多いっていうか!ほら、すぐに帰っちゃうし!」としどろもどろな彼女。「んもう!今度誘ってよ~。絶対に行かないけど、誘うだけ誘って。だって私だけ誘われてないとかイヤじゃん。よろしくね。んじゃ、お先に失礼しまーす」「は、はい…」そう頼んだというのに、今もお誘いはありません。どういうこと?まあ、別にいいけど。この日も誰にも引き留められることなく、会社をあとにしました。しかし、すぐに帰宅したいところ、次は父の事務所の仕事です。某所で父から頼まれていた物の受け渡しを済ませたあとは、白い息を吐きながら早足で誰もいない事務所へと急ぎます。郵便物の開封、メールの返信、お礼状の作成、請求書の支払い、ハイヤーの手配、奥様の領収書の整理。仕事は多岐に渡ります。先ほど段取りのことを書きましたが、もちろん仕事というのは、段取り通りに運ばないことがあります。私が勤めている会社もたくさんの人が関わっている業務なので、イレギュラーなことが多いです。そこでの振り回され度合いが10のうち3だとしますと、オフィス伊集院は7万ぐらいです。10になんて収まりません。もうイレギュラーしかないと言っても過言ではありません。慣れたとはいえ、やはり疲れてしまうことがあります。シンデレラみたいな気分になってしまうのです。外反母趾でしもやけだからガラスの靴なんて絶対に履けないけど。朝の4時に仕事を始めてから21時過ぎまで働いて、おなかもペコペコ。かぼちゃの馬車ではなく電車で家へ向かいながら、頭の中はラーメンでいっぱい。ここ数年は、身体のことを考えてラーメンを食べるのは年に数回。それも昼間限定です。ああ、それなのに!疲れって人間を狂わすのですね。最寄り駅にある町中華に駆け込むと、席に着くなり「五目ラーメンください!」と前のめりで頼む私。そして両サイドのおじさんのテーブルに感化され「あと生ビールと半餃子もお願いします!」と、後は野となれ山となれ。ひとたび口にすると、幸せすぎて涙が出そうでした。いけないことだとはわかっているけれど、たまには自分を甘やかしたい。こういうことを書くと、私のことを一番よく知っている母と姉は「おたく、いつも甘やかしっぱなしですよ」と口を揃えます。まったく!何を言っているんだか!写真は百貨店の催事場で買ったバレンタインチョコレートの数々。もちろんすべて私が食べる用です。だって、たまには自分を甘やかしたいじゃないですか。

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2023.2.13 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website