良い人│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#241

良い人

2024-04-22 01:01:00

 少し前のことですが、吉岡里帆さんがフラームに所属することになりました。フラームにいて良いなと思うことの1つに、事務所にとって何か大きなこと、例えば誰々が結婚するよとか、辞めるよとか、そういったことを事前に伝えてくれるところです。吉岡さんの時も然りでした。どんな風に報じられているのだろうと、ネットニュースを眺めたところ、「有村架純、戸田恵梨香ら有名女優が所属する―」「戸田、有村のほかにも吉瀬美智子、田中みな実、松本穂香ら人気者が多数所属し―」「同事務所は山口紗弥加や徳永えりといった名バイプレーヤーも所属しており―」とありました。当然のごとく、西山のにの字もありません。みんな、わかってないなあ。フラームといえば、西山繭子ということを。とうとうフラームで1番の古株になってしまった私、今年で所属26年目であります。これって前向きに捉えると、期待され続けて26年ということですからね。いやはや、ものすごい期待値。毎年、元旦と誕生日にいただく社長からのメッセージに「いつか恩返しを」と返信し続けて26年、もはやコピペと疑われていても仕方ないのですが、気持ちは本物であります。先日、父のお別れの会の時も「色々と不安だから一緒に行って欲しいです」とお願いしたところ、忙しいなか時間を割いて来てくれました。社長が隣にいるだけで、本当に心強かったです。ちなみに吉岡里帆さん、まだお会いしたことはないのですが、2021年のベストドレッサー賞の授賞式の時に、同じく受賞した父が吉岡さんにとても親切にしていただいたと言っていたので、いつか直接お礼を言えたらなと思っています。
 そんなフラームの古株さんのここ最近の心配事は、4月にして2024年の運を使い果たしてしまったのではないかということ。というのも先日、ビックカメラのキャンペーンでクオカードPay5万円分が当選したのです。これまでも、おかめちゃんエコバッグやアメリカンポークエプロンなど、クローズド懸賞で色んなものをいただいてきましたが、これほどの高額な景品が当たるのは初めてのこと。うーん、何を買おうかしら。美顔器、iPad、ヘッドフォン。でも、どれも今のもので間に合っているなあ。あ、ビックカメラはお酒も売っているから、シャンパンをまとめて買うというのも良いかもしれない。おめでたいしね。でも、置いておく場所がなあ。うーん、うーん。そうしてしばらく迷った私、結局のところすごーく欲しいものというものが思いつかなかったので、姉にダイソンのドライヤーをプレゼントしました。使ったことがある方はわかると思うのですが、あの大風量。一度味わってしまうともう他社製品には戻れません。私も自分のものを一度修理に出して5年ほど使い続けています。姉も「こんなに早く髪の毛が乾くなんて!」と大喜びでありました。よかった、よかった。10年ほど前、父の海外取材に同行した時のことです。帰国を翌日に控えた朝、父が「今回の取材であなたは本当によくやってくれたから、何か欲しいものがあればプレゼントしますよ」と言いました。少し考えてから「私は、こうしてお父さんと一緒にパリに来られただけでじゅうぶんなので、お姉ちゃんへのプレゼントでも良いですか?」と姉が欲しがっていたリモワのスーツケースを買ってもらいました。取材旅行で父が買った本や靴などが増えていたので、帰路にちょうど良かったこともあります。この話をすると、私がとても良い人みたいな感じなのですが、実は私のもくろみでは、父が「あなたはなんて良い子なんだ!そんな良い子にはバーキンを買ってあげよう!」となるのではという淡い期待がありました。しかし実際は「あっそう。あなた、変わってるね」とひとこと。クソ!言うんじゃなかった!マルジェラのワンピースを買ってもらえば良かった!サントノーレ通りにあるリモワから、姉のために買ったスーツケースをガラガラひきながら激しく後悔した私です。今回、ダイソンのドライヤーを前に、姉は「繭ちゃん、本当にありがとう!」と喜んでおりました。「どういたしまして。お姉ちゃんの喜びは、私の喜びですから」この言葉に嘘はないのですが、心のどこかでは、少しずつ恩を売って、老後は姉の家に居候するという企みがあります。ただの良い人では終わらないのが西山繭子です。居候ではありますが、一番日当たりの良い部屋にして欲しいなと思っています。写真は、図書館で借りている本です。これは、私のことでしょうか?

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2024.4.22 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website