自己流│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#242

自己流

2024-05-13 12:07:00

 電車の中で前に座っている同年代の男性が本を読んでいました。タイトルを見ると『独身偉人伝』とありました。真剣な眼差しで読んでいる彼を見つめながら、心の声で語りかけます。その本、私も読みましたよ。少しでも心の救いになればと思ったんです。でもね、彼らは独身だから偉人になれたわけではなく、それぞれ偉人たる所以があったからなのです。独身かどうかは関係ないんです。私の熱い視線に気づいたのか、彼がふと顔をあげました。目が合ったので、口角をあげて少しだけ微笑みました。山手線内に突如として現われた女神を前に、彼がどうしたかといえば、無反応で再び本に顔を向けました。あのな!おまえが独身なの、そういうところだからな!まあ薬指に指輪をしていなかっただけで、彼が実際に独身かどうかわかりませんが、同志を見つけたと思っただけに残念です。そういえば、ここ最近は「結婚しないの?」と訊いてくる人がめっきりいなくなりました。40歳ぐらいまでは、げんなりするほど訊かれたというのに。これはもうまわりからも不可能認定をされたということなのだろうなと思います。それはそれで、私にとっては気楽で良いです。そんな気楽な繭子ちゃんが、電車を降りて向かったのは新宿ピカデリー。開催中の『ジャッキー・チェン〈4K〉映画祭』を観に行くためであります。今回の上映は『ポリス・ストーリー』『サイクロンZ』『ミラクル』というラインナップ。この日は、なかでも絶対にハズせない『ポリス・ストーリー』の上映に合わせてのお出かけでした。幼い頃、私はジャッキー・チェンと結婚したいと思っていました。ジャッキーと一緒だったら、ありとあらゆるものから守ってもらえるはず。母子家庭で育った私にとって、強い男の人がそばにいるということは大きな憧れでもありました。しかしもちろんその夢は叶わず。つまり、私はジャッキー・チェンと結婚できなかったから独身ということです。幼い頃、何度もテレビで観た『ポリス・ストーリー』を大画面4Kで堪能できる幸せよ。私は今でも、吹き抜けのショッピングモールや交差するエスカレーターなどを目にすると、脳内でジャッキーの動線を考えてしまいます。ジャッキー好きあるあるではないでしょうか。ちなみにこの映画祭は今月末公開の『ライド・オン』に合わせての企画なのですが、昨年声優業から引退された石丸博也さんがこの作品限定で復帰されるとのこと。古希を迎えたジャッキーの声を、83歳の石丸博也さんがやられることに、不安な気持ちがないといえば嘘になりますが、ぜひとも吹替え版で鑑賞したいところであります。
 こういったアクション映画を観ると、影響されやすい私はいつも「身体を鍛えなくては!」と思ってしまいます。ただ、ここ最近はボディメイクからフレイル予防の意味合いに変化しつつあります。終活にしても遺言作成にしても、まわりの人から「まだ早いでしょ」と言われるのですが、本格的に体力が衰える前に準備しておきたいのですよね。父が亡くなってから本当に大変なことが多くて、というか大変なことしかなくて、こうはなるまいと心から思いました。生前、父が『親が子どもに教えられる最後のことは、親の死で云々』みたいなこと(覚え方が雑)を書いていましたが、まさにその通り。たいへん学ばせていただきました。身体を鍛えるのは、この奮闘のさなかで心が折れないためにも必須かなと思います。現在、私がやっている運動はといえば、毎朝4時に起床して行う筋トレとウォーキング。きちんと習慣化できているものの、あくまでも自己流です。ここが問題なんですよね。性根が「できれば楽をして生きたい」なものですから、スクワット15回を3セットと決めても、3セット目の10回を越えたあたりからは、膝をカクカク動かすだけになりがちです。やはり久しぶりにジムに通うべきなのでしょうか。でもなー、ジムは長続きしないんだよなー。これまでエグザス、セントラル、ルネッサンス、ティップネスに入会し、まったく通わずにお金をドブに捨ててきました。それだけに「今度こそ!」なんて、あるはずがないとわかっているのです。それでもジャッキーのように強くなりたい。でもジムの雰囲気が苦手!マッチョなトレーナーに「こんにちは!」と笑顔で挨拶されると帰りたくなる!マシーンの使い方が間違っていたら恥ずかしい!ああ、どうする私。人生最後のジムチャレンジをするべきか迷いながら、目下、自己流筋トレに励む私なのであります。

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2024.5.13 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website