パリオリンピック│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#248

パリオリンピック

2024-08-12 10:27:00

 パリオリンピックが幕を閉じました。トム・クルーズが出ることは噂されていましたが、それでも彼がスタジアムに降り立った瞬間にはテレビの前で「ヒュー!」と歓声をあげてしまう。さすがだぜ、おトム。オリンピック好きというわけではありませんが、今回は大好きなパリということもあり、いつもより楽しんだなと思います。開会式にいたっては絶対にリアルタイムで見たい!ということで生中継が始まる午前2時半に起床するために、前日はウォーキング、ストレッチ、風呂掃除、炎天下でのベランダ掃除、そして再度ウォーキングと、朝から身体を動かし続けて夜7時にはバタンキュー。おかげで最初から最後までしっかりと見ることができました。賛否両論ありましたが、個人的にはパリの街全体を使ってあそこまでまとめあげたのは素直にすごいと思います。ただレディ・ガガやナダルなど、フランス人ではないセレブが全面に出ていたのを見ると、東京オリンピックで世界一かっこいい棟梁をやっていた真矢ミキさんを見習えよと思いました。コンシエルジュリー、ポンデザール、チュイルリー公園。ああ、パリ。どしゃぶりのセーヌ川を入場してくる選手たちを眺めながら心は完全にパリ。「来年こそは憧れのパリ祭に!」と航空券を調べたりしていました。相変わらず高いなあ。頑張って働かないと。と言いつつその日の仕事は、当然ながら午後には早くも睡魔に襲われ、瀕死の状態で定時まで乗り切りました。そしてその夜も再びバタンキューからの3時起床。これまではテレビをつけた時にたまたまやっているものがあれば見るといった感じだったのですが、今回は目覚まし時計をセットしてまで見たいものがありました。それはサーフィンです。ルールはまったくわかりませんがカノアが見たい。心身ともに健やかなカノアから元気をもらいたい。あいにくテレビ中継はなかったのでTVerでの観戦となりました。サーフィンは波がくるかどうか運に大きく左右されるスポーツ。第1ラウンドでのカノア選手は1本しか乗ることができず、第2ラウンドでは勝ち進んだものの、第3ラウンドで惜しくもブラジルの選手に敗れました。カノア選手目当てで見たサーフィンでしたが、タヒチの海と山と空が本当に綺麗で、そのあとも試合がやっている日はぼんやりと眺めたりしていました。ちなみにサーフィンは、その昔、ワイキキビーチで体験したことがあります。インストラクターに「Are you ready?」と訊かれ「Not yet」と答えたのにボードを押されて波に乗せられ「I said Not yet !!」と激怒した思い出。またいつの日か、今度は穏やかに挑戦してみたいものです。その他には男子100m決勝を見ながら、よーいドンで私が1歩出た瞬間にこの人たちは30mぐらい進んでいるんだろうなとか、棒高跳びの王者デュプランティスが失敗した時はママのもとに駆け寄り、成功した時は彼女のもとに一目散ってどうなのよとか、あまり競技とは関係のないことを考えていました。そしてパリで世界一のアスリートたちが競い合っているなか、私もせっせと運動!ということで、近所の小学校で行われているラジオ体操に参加していました。6時半から始まるラジオに合わせて第1と第2をやるのですが、まわりを見渡すとやはり第1の方が多くの人に馴染みがあるようです。しかし、私はがぜん第2派。なぜなら中学生時代、体育の授業で第2をみっちりと叩き込まれたからです。学期末には教師の前で数人ずつテストを行うのですが、「腕がのびていない!」「膝を曲げるのが早い!」「音に合っていない!」と、たかがラジオ体操でしょとナメてかかっていた生徒が容赦なく不合格の烙印を押されて追試となります。ラジオ体操で追試って。それでも女学生たちは黙々と居残り練習に励みます。そして再び挑戦。ぐるぐる。ぴたっ。しゃきーん。ぴたっ。「よし!合格!」それは30年以上経った今でも身体に刻み込まれているため、第2のイントロが流れた瞬間にパブロフの犬のごとく西山繭子は覚醒します。ラジオ体操に飽きて校庭で追いかけっこを始める子どもたちの傍らで、寸分のくるいも見せぬ完璧なラジオ体操第2を披露する女。どこかの街で『第2の女』の噂を耳にしたら、それはきっと私です。たとえ記憶喪失になっても、これだけは忘れない自信があります。いつかオリンピック種目になったら良いのに。写真はそのラジオ体操第2、現役時代の私です。

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2024.8.12 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website