タイムイズマネー│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#261

タイムイズマネー

2025-02-24 10:10:00

 少し前にMaroon5のLIVEに行きました。2月の東京ドーム、会場のまわりはビュービューと冷たい北風が吹いています。そんなことはものともせずに、嬉々として入場ゲートに並んでいるショートパンツの女の子たち。こんなに寒いのにショートパンツ!意味不明!と思っていたのですが、記憶の糸をたどると1994年2月、16歳の私もショートパンツを履いてレニー・クラビッツのLIVEに行ったことを思い出しました。その時、一緒に行くはずだった友人が当日になって風邪をひいてしまい「私のチケット、もったいないからダフ屋に売ってくれ」ということで、今では見なくなった「チケットあるよ~、アリーナあるよ~」とダミ声でつぶやくおじさんの一人に話しかけたところ、そのおじさんにまで「お姉ちゃん、寒くねえのか?風邪ひくぞ」と心配されたのは良い思い出です。30年の時を経て、今ではショートパンツどころかヒートテックレギンスにヒートテックスラックスの重ね履きです。おかげで寒さを気にせずLIVEに集中することができました。時間ぴったりに始まり、ひたすらノンストップでヒット曲を披露。そして予定通り90分で終了というLIVE。腕時計までしてステージに立っているアダムからは「絶対に定時で帰りたい」という強い意志を感じました。耳なし芳一のようなタトゥーや、ヴィクシーモデルと結婚したことや、そのヴィクシーモデルの嫁が妊娠中に浮気をしたことや、またその時の弁明がめちゃくちゃダサかったことなど、アダムに共感できることはほとんどありませんが、「定時に帰りたい」この気持ちには激しく同意です。
 時は金なり。光陰矢のごとし。歳月人を待たず。時間に関する言葉がこれだけたくさんあるように、時間というのは人間にとって非常に大切なものであります。しかし残念なことに、多くの人が若い時には気がつきません。私も3日前にやっと気づいたぐらいですから。それでも思い立ったが吉日、今からでも時間を有効に使うにはと『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』という読者の9割は横着な人間であろう本を手にとってふむふむ読んでみたりと意識を高めます。残された時間は限られている。明日死んでも後悔のない時間の過ごし方をしたい。ということで、ここ最近は予定を入れることを控えるようになりました。仕事以外は、ぜーんぶ自分の時間。おかげですこぶる健やか。時間に余裕があるって最高ですな。あまりにも余裕があるものだから、ホットヨガにも入会しちゃいましたよ。これまで様々なホットヨガスタジオに入会しては退会してを7万回ぐらい繰り返している私ですが、懲りずに入会したのは少し前に眠れぬ夜を経験したからでした。私は非常に寝つきが良いです。昨年、母と一緒に香港旅行をした際「おやすみなさい」と言った5秒後には寝息を立てている私を見て、母は毎晩驚愕していたそうです。そんなのび太くん級の寝つきの良さを誇る私が、不安に苛まれて朝まで眠れないなんて、それはとんでもない大事件だったのです。睡眠不足は心も身体も蝕みます。焦った私は「身体を疲労させれば、いやでも寝るであろう」と思い立ち、すぐさまスタジオの門を叩いたのであります。これまでホットヨガが長続きしなかった理由の一つに、スピリチュアル的な要素が苦手というものがあります。ただ汗を流したいだけなのに「昨日の自分と比べて云々」「今の心と向き合うことでなんちゃら」「頭の中に宇宙が広がるイメージでぱやぱや」などと言われ、最後には「ナマステ」と全員で合掌。20年前、ヨガの聖地であるインドのリシュケシュの道場で真面目に瞑想をしていたところ、遅れてやって来たインド人のおじさんが私の隣に寝転がるなり、爆音のおならをするという経験をしたことがあります。ある意味、無の境地ではありますが、それ以来ヨガに対して崇高なイメージがなくなりました。私にとっては、あくまでもエクササイズ。もちろん今回入会したスタジオでも、インストラクターはレッスン中に精神面に言及するようなことを言いますが、ビバ年の功、昔と違って気にならなくなりました。また「足があげられる人はあげて下さい」といった場面で、昔の私であれば無理をしてでも挑戦をしていたところ、まったく頑張らなくなりました「疲れた方はシャバーサナのポーズをとって下さい」お言葉に甘えて、すぐにシャバーサナ。これはサンスクリット語で屍を意味する床に大の字で横たわるポーズです。それでも高い室温なので、汗はとめどなく出てきます。こうして心地良く汗をかく日を作ったことも奏して、ふたたび眠れぬ夜を迎えることはなくなりました。写真はヨガのあと。痩せることはなさそうです。

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2025.2.24 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website