
いろんな秋
2025-11-21 13:37:00
外でランチをする際「ごはん、少なめでお願いします」と言うことが多いです。食べものを残すことが苦手な私は、多くても頑張って食べてしまうので最初から量を減らしてもらいます。先日も『ねぎし』で、そのように伝えたのですが、あそこの麦めしって本当に美味しいんですよね。牛たんはもちろんのこと、添えられた味噌なんばんでパクパクいけちゃう。私は恥を忍んで店員さんを呼びました。「すみません、ごはんのおかわりを下さい」。ああ、店員さんの心の声が聞こえるよう。「え?あなた、ごはん少なめって言いましたよね?」私の心が答えます。「はい。言いました。本当にごめんなさい。イイ女ぶってごめんなさい。もう二度といたしません」ここでまた少なめと言うのもなと思い、普通盛りでおかわりをお願いしました。実のところ、このあともう1回おかわりをしたので、少なめと言わずに本当に良かったなと思います。食欲の秋ですね。
食欲の秋で摂取したカロリーは、せっせと運動で消費しなくてはいけません。いつもは週1回、決まった日時に行くヨガですが、都合の良い時間に『究極の癒し』と名打った特別クラスがあったので参加することにしました。普段やっている強度の高いヨガポーズとは違い、このクラスではヨガブロックなどを使い、とにかく自分が心地良いと感じる態勢に調整していきます。「いつもよりポーズの時間を長めにとりますね」先生の声を耳にしながら、心地良さに身を委ねます。心も頭もすべてをからっぽにして、ああ、気持ち良い。さすが究極の癒しだわ。そうして気づけばポーズのたびに寝てしまうおばさん。そのたびに起こしてくれる先生。もうほぼお母さんです。寝ぼけて「あと5分」などと言わなくて良かったです。スポーツの秋ですね。
スポーツの秋で磨いた心身、きっと感覚も研ぎ澄まされているはず!と向かったのは東京都美術館で開催中の『ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢』。主催者がXで発信しているこれまでの混雑状況を鑑みて平日の午後に行ったのですが、それでもやはり入場まで20分ほど並びました。ゴッホ大人気。私はコロナ禍の際、ここの入り口で入場券のQRコードの読み取り機械におでこを近づけて体温を計っていたことがありますが、今回は1発で入場券をかざすことができました。成長してるね、私。美術展は久しぶりだったこともあり、黒山の人だかりの一員となってじっくりと鑑賞してきました。途中、修学旅行生らしき男の子が「ゴッホって、ただ絵がうまかっただけのおじさんだろ」とつまらなそうにつぶやいていました。うん、わかるよ。私も修学旅行の時に寺とか仏像とか見ても何も面白くなかったもの。その、ただ絵がうまかっただけのおじさんの作品がどうしてこうも人々を魅了しているのか、もちろん絵の力もあるのでしょうが今展のテーマである『家族』というものの大切さについて改めて考えました。ゴッホの甥がそうしたように、私の死後、僅かな著作権を私の甥っ子たちは守ってくれるのだろうか。毎度手土産に持って行くクリスピークリームドーナツを前に、誰が何を食べるかで喧嘩している3人を見ると到底無理であろうと叔母さんはうなだれてしまいます。芸術の秋ですね。
そうした秋が続けば、やはり読書の秋も。私が暮らす渋谷区の図書館では、秋の図書館フェアとして『図書館ビンゴ』というものが開催中。これは「映像化された本」「食がテーマの本」といったキーワードの本を借りてビンゴを揃えていくものです。1列完成のたびに、しおりが貰えます。しおりは全部で6種類あるので、フェアが終わるまでにコンプリートしようとせっせとキーワードの本を読んでいます。おかげで普段は手にとらないパンダの赤ちゃんの写真集を借り、ページをめくるたびに「きゃわええ」と心が癒されました。そうして残るは「風流を感じることができる本」と「体を動かすエクササイズ本」のみ。後者は更年期向けピラティスの本を借りようと思っているので良しとして、悩むのは風流です。はて風流とは?改めて調べてみると「みやびやか」と出てきました。そこで咄嗟に頭に浮かんだのは美輪明宏さんでした。ただ、美輪明宏さんの本を借りて図書館司書が「風流ですね」とスタンプを押してくれるのかという懸念があります。フェアが終わるまでに誰もが認める風流な本に出逢いたいものです。ビンゴのキーワードにはないものなのですが『1日3時間×365日で弁護士になる!』という本を読みました。法学の勉強をしていない私からすると内容はちんぷんかんぷんだったのですが「こんなちんぷんかんぷんな私でも1日3時間×365日で弁護士になれるのかあ」と自己肯定感が爆上がりでした。読書というのは素晴らしいですね。皆さんはどんな秋をお過ごしですか?もうあっという間に冬になってしまいますけれど。
2025.11.24 配信
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。
オフィシャルサイト→FLaMme official website