手前味噌│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#285

手前味噌

2026-02-24 16:29:00

 毎朝4時半に起きるフラームの早起き隊長こと西山ですが、ここしばらくは起きるとミラノ・コルティナオリンピックをやっているので早起きが四文の徳ぐらいになっていて嬉しいです。この数年、りくりゅうペアが付き合っていなかったら、おばさんはもう何を信じれば良いのかわからないと思っていましたが、金メダルを獲った二人を見て、彼らには凡人が考える愛とか恋とかそんなものをはるかに超越したつながりがあるのだと思いました。「えー、絶対に付き合ってるよね?」「付き合ってなくても、りゅうくんは絶対にりくちゃんのこと好きだよね?」とドトールでおばさんの友人とお喋りに興じていた愚かな自分を猛省です。4時半に起きてから30分ほどは、選手たちの頑張りを眺めながらストレッチと筋トレ。そしてまだ暗いうちからウォーキングに出て、戻ったら朝ごはんです。ごはん、お味噌汁、目玉焼き、納豆、ぬか漬け。これが私の定番朝食メニューです。ここに株主優待でもらった明太子や佃煮が加わったりもしますが、基本的には毎朝このメニュー。ですので、イレギュラーを差し引いたとしても年間300パックは納豆を食べているはず。そんなネバネバっ子の私が、現在納豆断ちをしております。禁断症状とは言わないまでも、朝ごはんが何とも物足りない。そして1日のタンパク質摂取推奨量50gをクリアするのがますます困難に。それでも今は納豆を食べられない理由があるのです。なぜなら数日後に味噌作りを控えているからです。数年前の冬、ヘアメイクさんに誘われて味噌作りのワークショップに参加いたしました。(第209回『バイバイ2022年』参照)その際に「一度、手作り味噌の味を知るともう市販には戻れませんよ」と言われ「えー、本当ですかあ?」と半信半疑だったのですが、1年後に味噌樽を開けた時のその感動たるや!何しろ、ほったらかしにしていたにも関わらず勝手に味噌ができているのですから。私なんて、ほったらかしにしていたらお菓子を食べて本を読んで編み物をして3日に1回ぐらいお風呂に入って寝るだけで、役にたつことなんて一切しませんよ。麹というものは私よりもはるかに優秀ですな。そして樽から取り出した味噌で早速お味噌汁を作ってみたら、まあなんと香り高いこと!自分で作ったということもあって世界一美味しい味噌だと思いました。人の手には常在菌というものがあるそうで、それによって味噌の味が変わってくるという話も耳にします。だったらレディ・ガガが作った味噌とかどんな感じになるのだろう。興味津々。トランプ大統領の場合は1年後に味噌樽を開けたらケチャップになっていたりするのでは。その感動の味噌作り体験を経て、次の年もさあやるぞ!となっていたところ、その時は父が亡くなってからの壮絶バタバタ期でワークショップに参加することができませんでした。味噌は12~2月の寒仕込みが最適なので、そこを逃すと一年待たなくてはいけません。ならばと1人で挑戦してみることに。経験した方はわかると思いますが、味噌作りで一番大変なのは大豆の下準備です。ワークショップの時はすでに大豆が煮てあり、つぶすところからの作業だったので楽しいだけで済んだのですが、大豆の下準備は本当に苦行でまったく楽しくありません。大豆をたっぷりの水でよく洗って18時間以上浸水させて煮るのですが、浸水してふっくらした大豆1kgを自宅で煮るには、母の家から借りてきた鍋と合わせて2つ使ったところで容量がぎりぎりのため、数秒でも目を離したら吹きこぼれ祭りなのです。右に左に、2つの鍋を前にせわしくなく動く私は、スクラッチをかますDJのようです。圧力鍋ではないので、それを5時間。そうなると煮上がった大豆をつぶす頃にはもう疲労困憊なわけですよ。つぶす作業は丁寧にやった方が良いのでしょうが、豆の形がそのまま残っていても見て見ぬふりで「もうこんなもんでいいだろう」と早々に終わらせ、塩切り麹と混ぜ合わせて味噌玉を作ります。そして空気を抜くために味噌玉を樽の中に投げつけて仕込んでいくのですが、これはけっこう楽しい。「こんちくしょう!」と言いながら投げつけると調子が出ます。すべての味噌を入れたら、あとはカビ防止のためにふり塩をして重しを乗せて、1年ほったらかし。天地返しなどしなくてもそれなりの味噌が出来ます。ただ、納豆菌だけはダメ。少しでも混入したらアウトです。本来は前日から控えれば良いとのことですが、慎重な私は3日以上断っています。何しろ納豆菌が入り込んでしまったら、その味噌はもう豆板醤にするしかないそうです。いつも小さなチューブでさえ賞味期限内に使いきれないのに、4kgの豆板醤なんて死ぬまで使いきれませんよ。甥っ子たちに「ほら、まーたん。残りの豆板醤だよ」って棺桶に入れられちゃう。ですので、大好きな納豆ですが今はぐっと我慢の時です。そうして迎えた味噌作り。ポストイットには『煮汁を捨てない‼』と書いてあります。どこまでも慎重な私であります。

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2026.2.24 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website