国旗マニア その1
2014-07-02 18:26:00
今年の元旦だったと思うのだが、ひとつの試みにチャレンジすることに決めた。
世界の全ての国の国旗と首都と地理を覚えること。
なぜそんな手間のかかることをしようと思いたったのか?
ボケ防止? それもちょっとあるかもしれない。ぼくは毎月、4人の映画好きの仲間とともに『アレ★アレ★シネマトーク』という、映画の話を2時間ぶっ通しで喋りまくるというUstreamの番組をやっているのだが、なぜ番組のタイトルをアレ★アレにしたかというと、ぼくを含むメンバーのみんなが常に映画のタイトルや俳優の名前を忘れてしまい「ほら、あのアレに出ていたあの背の高いアレアレ. . .」とやってしまうからだ。
国旗とか首都を覚えるという、ピュアな暗記作業に取り組めば、老朽化した記憶力もいくぶん回復し、これが将来、ボケ防止へとつながるかもしれない。そういう思いはたしかにある。
でも、これをやろうと思った本当の理由は10年ほど前のとある出来事に由来する。
東京のJ-WAVEのラウンジルームでくつろいでいたある日、レコード会社があるアルバムのプロモーションのギミックとして国旗の国を当てるクイズを持ってきたのだ。たしか、20問ぐらいあったと思うのだが、旅人を売りにしていたぼくが答えられたのはたったの8問。ぼくの後、夜のニュース番組を担当していたジャーナリストのナビゲーターが挑戦したのだが、彼はなんと18問正解。完敗だった。
この敗北がよほどエゴにこたえたのだろう。ぼくはそれからずっと、心のどこかで、彼を破る夢を見続けてきた。そして今年になってやっと、何故か、その夢を叶えてやろうと真剣に思ったのだ。
そんはわけでぼくは正月休みが明けるとすぐに書店へ行き、吹浦正忠さん著、学研の『世界の国旗 ビジュアル大事典』という本を購入。翌日から世界の国旗と首都と地理の勉強を始めた。
ぼくは普段、朝の仕事がない限り、9時から10時の間に起きるのだが、紅茶を飲みながら朝刊に目を通した後、30分から1時間、2杯目の紅茶を啜りながらこの本の勉強に取り組んだ。
毎日、驚きの連続だった。目から鱗がどんどん落ちていった。
著者の吹浦さんは難民を助ける会の特別顧問などを勤める国際情勢に詳しい方で、彼の解説を読んでいくと国旗にはその国の歴史、民族、宗教、政治、産業、位置、形、独立までの苦しみや未来への希望などが込められていることがよく分かる。
例えばアフリカの国々には赤、黄、緑の色を使っている国旗が多く、これを「アフリカの色」と呼んでいるのだが、この中の赤は植民地支配からの独立闘争で流された国民の血を象徴しているものが多い。これってかなりヘビーですよね。モザンビークの旗には解放戦線のゲリラが使ったAK47の銃の紋章が載っているほどだ。
未来への希望が込められた旗といえば、ボツワナのライトブルーがベースの国旗にはちょっと泣かされる。南部にはカラハリ砂漠が広がるボツワナは全体的に水の少ない地域。青を基調にした旗は国民の水への憧れと渇望を表している。つまり、旗に「雨よ降れ」という希望を托しているのだ。
心を和ませてくれる国旗のナンバーワンは何といってもキリバス共和国の旗だ。マンガチックにうねる波の中からこれまたマンガチックな太陽が昇っているのだが、その太陽の上をこれまたかなりマンガチックなグンカンドリが飛んでいるという図柄。グンカンドリはこの地域では希望の象徴ということだが、こいつの顔がどことなく笑っているように見えて和むのだ。
つづく
ロバートハリス(Robert Alan Harris, 1948年9月20日 - )は、横浜市生まれのDJ、作家。血液型AB型。上智大学卒業後、1971年に東南アジアを放浪。延べ16年間滞在。オーストラリア国営テレビ局で日本映画の英語字幕を担当した後、テレビ映画製作に参加、帰国後FMステーションJ-WAVEのナビゲーター(DJ)や、作家としても活躍中。 自らの体験談は、若い世代を中心に共感を呼んでいる。
2013年6月10日に新刊『WOMEN ぼくが愛した女性たちの話』が発売されました。
ハリスさんの軽妙でウィットに富んだ語り口から紡ぎ出される恋愛遍歴・恋愛論・家族愛が女性にまつわるアフォリズムとともに織り成された53編の物語。前作より6年振りの書き下ろしエッセイです! ぜひ書店にて!