ハイパー健康体
2014-12-08 12:00:00
何かと忙しい師走。何かとは主に忘年会であります。吞んで吞んで二日酔いの日々、皆様、風邪などひいておられませんか?うがい、手洗いしてくださいね。私はどんなに大変な日々でも健康さえあれば、人生何とかなると思っているところがあります。両親にいただいたこの身体、今のところ大きな病もなく、この健康っぷりは両親に感謝いたすところであります。ただ、女子力という面から見ると、少し身体が弱いぐらいの方が何だか素敵な気もします。「ちょっと偏頭痛がするなあ。台風が近づいているからだね。今日はホットミルクを飲んで早めに眠ろう」みたいな言葉はとっても女子的ですね。もちろん体調を崩す本人は辛いのでしょうが、ハイパー健康体の私としてはちょびっとだけ憧れてしまうのです。
普段から健康体の私ですが、その実力が発揮されるのは何といっても海外ロケであります。以前、2週間ほどインドロケに行ったことがあります。インドに行くと大概の人はお腹を壊すというのですが、私には3kg太って帰国するという怪現象が起きました。だってカレーがめちゃめちゃ美味しいんだもの。このあたり、日本には独自とはいえカレー文化があるので順応しやすいですよね。以前、旅行サイトのトリップアドバイザーでインドのホテルを調べていた時、とても評価が高いホテルがあったので何故だろうとレビューを読んでみたところ、ほぼ全員が「ピザハットが近い」と書いていました。恐るべし欧米人。しかもアマンダさん(仮名)なんて「お腹を壊して寝込んでいたところ、オーナーがピザハットを買ってきてくれて涙が出そうになったわ!」と感謝の気持ちを綴っていました。私、寝込んでいる時にピザなんか出されたら「ピザって10回言って」「ピザ、ピザ、ピザ……」「じゃあこれは?」って中指立てちゃうよね。ピザだったら断然カレーがいいです。でも、一度お腹を壊してしまうと恐怖心が出てくるのでしょうね。一緒に行ったスタッフの一人は、初日の食事でやられてしまい、帰国の日までずっとぼそぼそとカロリーメイトを食べていました。ロケではガンジス河で沐浴までしたのですが、インド北部にあるリシュケシュ、11月の気温は9度でした。凍えながらガンジス河に入りじゃぶじゃぶとインド人に頭から水をかけられ、私、自分がダチョウ倶楽部かと思いましたよ。でも真面目な番組だったので川辺で唇を紫にしながら「何だか、心が洗われました」と言ってみるあたり女優!そこで風邪をひくこともなく、再びカレーをたらふく食べて、お次はヒマラヤの麓の町ガンゴドリへ。そこは標高が3048mあり、そこからさらにガンジス河の源流を求めて山を登るというロケでした。高山病については聞いていたので少し不安だったのですが、数人が頭が痛い、眩暈がすると言う中、「ここのカレーはどんなやつですか?」と私。まさにインド人もびっくり!なのでありました。この強靭な身体は本当に私の財産です。
と言いながら私、実は心室中隔欠損症という先天性疾患があるのです。右心室と左心室の壁の間に穴が空いているという疾患。心臓の病なんて少女漫画の主人公みたい!と思いがちですが、この疾患は1000人に3人の割合で出生するもので割合的には多いです。子どものうちに自然に穴が塞がる人もいますが、私の場合は塞がりませんでした。穴が空きっぱなし。風通しの良い女です。この疾患、日常生活を送るには何の問題もありません。心臓の音に雑音が入るけど、そんなの合コンではバレません。23歳までは年に一度検診に行っていたのですが、通っていた病院(国立小児病院)が統合されてから行かなくなってしまいました。ここで皆さん、不思議と思われるでしょうが23歳でも小児病院ってOKなのですよ。OKなんですが、先生もあまり慣れていません。心電図の部屋で扉の中から先生に「じゃあ、つぎは~、にしやま~、まゆこちゃ~ん!」と教育番組のお兄さんのような口ぶりで呼ばれ、何だか申し訳ない気分で「こんにちは……」と扉を開ける23歳の私がいました。先生も気まずそうに「あ、ど、どうも」とカルテの生年月日を確認。心電図のベッドに寝そべりながら見上げた天井にはたくさんのアンパンマンと仲間たちが貼られていました。病気の子どもたちに愛と勇気を与えているのだなあ。23歳の乙女は乳をぼよよんと出しながら、それらを眺めていました。
そんな何てことない疾患ぐらいしかない私ですが、先日、生まれて初めて39度を超す熱を出しました。普段、よっぽどのことがないと熱を計りません。数字で顕著にわかっちゃうとさらに具合が悪くなってしまう性格なので。しかしその日はあまりにも頭がぐるぐるとするので、計ってみたら39.7度!ほぼ40度ですね。この時、人間には39度の壁というのがあると思いました。その壁を越えるとハイテンションになるのです。「今、私、40度近く熱があるんですよー!」とわざわざ編集者さんに電話して「早く寝てください」と言われてみたり、体温計を写メで撮って友だちに送ったり、一人で「すごーい!頭があつーい!」と散々騒ぎ立てて、電池が切れたようにパタリと倒れました。そして翌日目覚めると、熱は幻だったように平熱でケロリ。これはもしかしたらスパイダーマンになっているかもしれないと思いましたが、普通のおばさんでした。皆様も体調管理には充分お気をつけください!
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。
西山繭子さんの新刊
【バンクーバーの朝日】
~フジテレビ開局55周年記念映画 公式ノベライズ~
戦前のカナダ・バンクーバーで生き抜く
青年たちの葛藤・奮闘・友情を描いた最高傑作!
バンクーバーの朝日
西山繭子
マガジンハウス文庫
320p 620円(税別)
オフィシャルサイト→FLaMme official website