くんくん
2015-03-23 13:38:00
みなさん、こんにちは。だんだんと街に春の香りが漂ってきましたね。春の香りとはなんぞやと申しますと、梅や桜、そして沈丁花といった花の香りが代表的ですが、さらに挙げてみればどこかの家の台所から流れる筍を炊いた香りだったり、真新しい制服の糊の香りだったり。はたまた生足になった女の子のボディオイルの香り。イヤなところでいえば新歓コンパで街のいたるところに巻き散らかされたゲロの臭い。春夏秋冬、季節には様々な香りがあります。これらの香りを感じるか感じられないかが、私にとってはその時の精神状態のバロメーターだったりもします。敏感に感じる時は、中畑清ばりに絶好調の時。全く気づかない時はダン・ミセリばりに何もできない時。また嗅ぎとるだけではなく、女子力が高い人はみな己からも魅力的な香りを放っています。「いい女ほどいい香り。いいね、エロいね、いい女」とその昔、孔子も申しましたように女子力と香りは切っても切れない関係なのです。
女の子として香りを意識し始めたのはたぶん小学校高学年の頃。多くの女の子たちはそういったことを少女漫画で学んでいくように思います。その当時、私が読んでいたのは『りぼん』、姉が買っている『なかよし』、そして幼馴染の男の子がベッドマットの下に隠している『やるっきゃ騎士(ないと)』でした。『やるっきゃ騎士』で学んだこともかなり重要ですが、これは女子力とは関係ないので今回はスルーします。『りぼん』と『なかよし』で、女の子たちは、恋とかキュンとかを覚えて、そしてさらさらの髪の毛から漂うシャンプーの香りが魅力的なのだと知るのです。でも冷静に考えたらシャンプーの香りが漂うのってすごい至近距離だし、童貞男子が言いそうな女の子の石鹸の香りなんて風呂あがりのみですよ。だいたい臭い。思春期の女子も男子ばりに臭い。それは中高大と女子校で10年間過ごした私が言うのだから間違いない。特に最悪なのはロッカー。母校ではロッカーは二人で一つ使っていたのですが、私が中学3年間で一緒に使っていたNさんは、家に洗濯機がないのかと思うほど体操着を洗わない。しかもNさんは、パパに買ってもらったというバーバリーの傘を「盗まれたらイヤだから」と下駄箱の傘立てではなく、びっしょびしょのままロッカーに入れる始末。汗と湿気がもわっとたちこめ、ロッカーを開けるたびにいやな臭いが漂っていました。そんなくっせー女子校生たちも『りぼん』『なかよし』から『セブンティーン』『プチセブン』『おちゃっぴー』『オリーブ』にシフトしていく頃には、「あれ?あたしたち、超臭いんですけど?」と気づくのです。そこでみんながこぞって買ったのがプチ・サンボンという香水。同世代の女性は覚えている人も多いはず。ジバンシーが出しているものですが、ネーミングにあるように石鹸の爽やかな香りで、香水初心者には入りやすいものでした。それを皮切りに、たくさん香水を集めたなー。でも、香水なんてそうそう減るものじゃないから結局飽きて処分してしまうのですよね。なので今は小瓶タイプのものをいくつか所有しています。全てメンズの香水。自分でつけるものもあるけれど、多くは好きな人がつけていた香り。私はそれらを嗅いで昔を懐かしむのが好きです。女々しさ全開!でも嗅覚と記憶のつながりってものすごく強いんですよね。街を歩いていて、好きだった人と同じ香水の人とすれ違ったりすると、それだけでちょっと好きになってしまいそう。あと私には勇気が出る香りというのがあります。その昔、私に世界を旅することは面白いよと教えてくれた人がつけていた香水で、それをかぐと異国の地で不安な心を奮い立たせることができたりします。色々と単純なんですね、私は。
そして最近手に入れた香りはLINARIというドイツのメーカーのディフューザー。瓶に割り箸をぶっ刺したみたいなお洒落なやつです。今の家に引っ越して約四ヶ月。初めて内見に訪れ、玄関を開けた瞬間に気になったのは匂いでした。綺麗にクリーニングしてあるのに、何だかおっさんのポマードのような甘ったるい匂いがしていました。まあ住んでいるうちに消えるだろうと思っていたのですが、なかなか消えない。帰宅するたびに、私を出迎えるポマードおじさんの幻影。そこでディフューザーを買うことにしたのですが、これがまたなかなか選べない。あまりにも種類が多くて、嗅いでいるうちに麻痺してわからなくなるのですよ。麻痺してディフューザーを鼻に近づけすぎて棒が鼻の穴に入っちゃったりするわけですよ。六本木ヒルズで。そんなこんなで紆余曲折を経てたどり着いたのがLINARIなのですが、これ、以前に雑誌で見かけて「ええ!ディフューザーに15000円!誰が買うんだよ!」と思っていたのですが、その数日後に訪れた店のトイレに置いてありまして、それはそれは良い香りだったんですね。まあ毎日嗅ぐものだしと思い、えいや!と買ってみました。これが今我が家にある唯一の女子力の象徴ではないかと思います。
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。
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