街中に出没する屋台│中島さなえの「四方八方ゆーわくぶつ」

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中島さなえの「四方八方ゆーわくぶつ」

#004

街中に出没する屋台

2015-09-28 11:23:00

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 夏祭りや花火大会、秋の酉の市、初詣に花見。年中を通して日本国内あらゆる場所に出ている屋台だが、これも我々の気をひきつけてやまないゆーわくぶつとして要要要チェックだ。
 関西で生まれ育った身としては、祭りや商店街で、たこせん(せんべいでたこ焼きをはさんだもの)や、いか焼きなどを買い食いするのが楽しみのひとつだった。その名残もあって、出かけた先でたまたま縁日に出くわしたりすると、気分が高揚してついふらふらっと寄ってしまう。そして買い食いをした挙げ句、オモチャやキャラクターグッズなど、“あとで冷静になってみると日常では絶対に使わん要らんもん”を買い求めてしまったりもする。これも楽しげな非日常感でテンションが上がり、脳が判断不能になってしまっているせいだ。

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 そして時には、売る側が妙なテンションになってしまうこともあるようで、江東区の縁日の出店では写真のようなものも売られていた。
「殺人ナイフ!! 今や1人1本の時代です」
 完全にアウトぉっ!このポップの製作者はきっと、親御さんたちから苦情が来てコッテリと絞られたことだろう。
 まあとにかくお客をあおって繁盛させないと元が取れないわけだから、なるべく派手で目立つ宣伝文句をつけたいのはわかるが。
 そういえば子供のころ兵庫県のとある祭りに行った際、金魚すくいコーナー前に、金魚をすくうポイを持った少年が「さあっ!いまこそ大海原へ冒険だ!!」と叫んでいる絵がハイテンションで描かれていて、子供心に、(う〜ん、大海原って言われてもなあ……)と、淡水魚である金魚と小ちゃい小ちゃいビニールプールを前にして、妙にもの悲しくなってしまったのを覚えている。哀しい温度差よ。

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 温度といえば、バンコク市街で見かけた屋台ではなんと、灼熱の太陽の下こんな感じで寿司が売られていた。どうやら日本食ブームだったみたいなんだけど、腐ってますよねこれ。他にはおやつのサソリやタガメなんかも。屋台買い食い大好きのわたしでも、さすがに手を出す勇気はなかった。

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中島さなえさんのINFORMATION

Writer

中島さなえ

作家。1978年、兵庫県宝塚市に作家・中島らもの長女として生まれる。2009年エッセイ集『かんぼつちゃんのきおく』、2010年初小説『いちにち8ミリの。』でデビュー。他に小説『ルシッド・ドリーム』『放課後にシスター』、エッセイ集『お変わり、もういっぱい!』がある。サックスプレイヤーとしてバンド活動もしている。
研究施設から逃げ出したうさぎをめぐる連作短編集『わるいうさぎ』が双葉社より、「いじめ」をテーマにした短編を収めた競作アンソロジー『「いじめ」をめぐる物語』が朝日新聞出版より発売中。

中島さなえさんの公式ブログ
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