バイバイ2016│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#065

バイバイ2016

2016-12-26 14:28:00

 残すところ今年もわずか。みなさんにとって2016年はどんな年でしたか? 私はもうここ数年、時間軸が歪んで同じ年を繰り返しているんじゃないかってぐらい何もない一年です。女子力もめっぽう上がらないというか、むしろぐんぐん下がっているような気もするし。前回も書きましたが、大晦日は今年の悪行が全て帳消しになる日であります。このまま残り数日をしれーっとやり過ごして2016年の悪行や失敗を葬りたいのは山々ですが、ここはひとつ女子力向上のため、今年を振り返ってみようと思います。

1月、母にパリ旅行をプレゼント。親孝行な娘っぽいけれど、到着した翌日から日記には「一人になりたい」と書いてある。もう私、家族とすら一緒にいるのが無理なのだなあ。そう考えたら結婚なんて、完全に夢のまた夢だわよ。パリから帰国した翌日にはどえらい寒い生田スタジオの裏山で、恋人役の萩原聖人さんに首を絞められて死亡。2月、年始に立てた「ファストファッション不買の誓い」にすでに苦しめられる。今の日本で、私のような低所得者がユニクロを買わないってそうとう不便。月末には仕事で行った福井県で蕎麦を食べたい編集長とソースカツ丼を食べたい私でちょっと険悪なムードになるが、結局、還暦間近の編集長がアラフォー作家に折れソースカツ丼を食らう。しかしそのあまりの普通さに蕎麦にすれば良かったと後悔。3月、ひたすらバレエのレッスン。初めて男性にリフトしてもらい興奮の日々。しかし男性と言っても相手は14歳の男の子。アラフォーのおばさんを何度も何度も持ち上げてくれたことに感謝して、事務所の後輩である有村架純ちゃんの写真とサインをあげる。いきなり「よろしくね!」と先輩風を吹かされた架純ちゃんも大迷惑。4月、NYへ行く。予約した短期滞在アパートでは23歳の可愛い女の子Aちゃんと同居。上の階には若い男の子二人組が宿泊していて、私たちの部屋に何度か洗濯機を借りにきていた。とある朝、Aちゃんが「繭子さん、私の部屋のドアにこれが貼ってあったんですけど」とポストイットを見せられる。『笑顔がとっても素敵だなと思いました。今度、ごはんにでも行きませんか?』と上の男の子たちからのお誘い。私は自分の部屋のドアをくまなく調べたが、ポストイットは見当たらない。「あの子たち、バカっぽいからやめた方がいいよ」とAちゃんにアドバイス。5月、ルート66の旅に出る。これまでの旅で間違いなくベスト3に入る素晴らしき時間。UCLA大学で購入したパーカーを着ては「ほぼ母校」とショーンK氏のような嘘をつく。6月、仕事で青森へ。早朝、東京駅でマネージャーから渡されていた新幹線のチケットを改札に通すとピンコン!とエラー。ん?何だろうと思いチケットを見ると日付が翌日。日にちを間違えるという痛恨のミス。せっかくなので駅弁を買って、家で食べる。7月、またしてもひたすらバレエのレッスン。トウシューズを履いてコンクールで黒鳥を踊る。それはそれは見るも無残な姿だったが、見に来てくれた事務所の社長に20年間のつきあいの中で一番褒められる。なぜ?8月、ドラマ『ダウントン・アビー』と麻婆豆腐にはまる。イギリス貴族に思いを馳せながら、来る日も来る日もフライパンをふる。何度も作り続けた結果、美味しい山椒さえ投入すれば味が決まることに気づく。茨城で撮影した映画では、女子高生のお母さんを演じる。撮影の合間、女子高生というのは膝の裏にまで若さがほとばしっているのだなと眩しさに目を細める。9月、尊敬している三上博史さんと15年ぶりの共演。元奥さんという光栄な役柄だったが、三上さんが抱きしめてくれるシーンでは完全に素の西山繭子に戻る。ドラマでは三上さんと離婚ののち、自殺により死亡。10月、来年放送のドラマ『女の中にいる他人』の撮影でまたしても死亡。今年三度目。11月、ひたすら小説を書く。今年はいくつか公募の新人賞にも作品を送ったが「どうしてこんなものしか書けないのか」「こんなものを誰が読みたいと思うのか」「自分の抱えているものはゴミくずのようなものだ」と頭を過ぎるのは絶望ばかり。しかし書かねば、前には進めぬ。もしかしたらもう進めないのかもしれないけれど、諦めることが恐ろしい。希望を失うことが恐ろしい。家にひきこもって原稿を書くばかりなのに、なぜか靴を4足買う。バカ。12月、舟木一夫のコンサートに行く。おばさまたちの目の輝きと高揚した頬に、女子力を感じる。歌いながら次々とおばさま方から花束やプレゼントをもらう舟木センパイは、とてもクールで『高校三年生』しか知らなかった私でもファンになってしまう。歌謡ショーと共に行われた時代劇では、金子市之丞演じる舟木センパイが、スーパーソフトタッチでばたばたと悪人を倒していく様がまるでエスパーのようだった。

と、ざっと振り返ってみましたが、やはり女子力が上がる要素が見当たらないですね。もはや誰も期待していないのでしょうけど。いやはや、そんな私ではありますが、2017年もどうぞよろしくお願いいたします!写真は会場でもらった舟木センパイのマグネットです。謎のラフ感と、アルファベット『U』フューチャー。

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website