うるうる運動会
2017-10-21 19:58:00
先日、甥っ子2号(年長)と甥っ子3号(年少)が通う幼稚園の運動会に行ってきました。甥っ子1号も同じ幼稚園に通っていたので、この園での運動会にはもう6度目の参加になります。6年もあったら結婚して子どもを産んで、園児を持つママになっていてもおかしくないのですが、叔母さんは今年も独身貴族を満喫中であります。あー、しば漬け食べたい。
毎年のことながら運動会の前日には「じゃあ繭ちゃん、朝6時から並んでおいてね」と場所とりを頼まれますが、それは義兄の大切なお仕事。出張が多くなかなか父親の威厳を見せられない義兄の活躍の場を奪うわけにはいけません。優しい妹がいて幸せな義兄であります。そういえば10年ほど前に劇団キャラメルボックスの『きみがいた時間ぼくのいく時間』に客演させていただいた時、可愛らしく健気なヒロインを演じる私を観た義兄は「あーあ、繭ちゃんがあんな子だったら良かったのになあ」と言っていたのを憶えています。ふん!私だって、江口洋介みたいな義兄が欲しかったわよ!どうしてここで江口洋介さんが出てきたのかわからないけどさ!ちなみに義兄は、TBSの安住伸一郎アナウンサーから生真面目さと髪の毛をとった感じの人です。この夏、某女性議員が元秘書を「このハゲーーーー!」と怒鳴りつける音声がニュースで流れるたび、義兄は動悸がしたそうです。そんな義兄がとってくれた父兄席に叔母さんは朝8時半にピットインして、すでに来ていた姉と母に「おはよう」とさわやかにご挨拶。二人とも5時起きでお弁当を作っていたので、少し眠そうです。私はもちろん食べる専門なので作りません。私、一人でいる時はぬか漬けを作ったりお部屋に花を飾ったりと女子力高めの行動をするのですが、母姉と一緒になった途端に女子力がゼロになるんですよね。この日も「ほら、まーたんチョコレート食べなさい」と母にもらってはもぐもぐ。「まーたん、これNYのお土産だよ」と姉にもらってはわーいわーい。ちなみにお土産はリクエストしていたビゲローの紅茶。高級でも何でもないアメリカ産の紅茶ですが、ここのアールグレイが大好きなのです。デカフェもあるので眠れない夜もこれを飲んで温まって、ジェラートピケのモコモコパジャマに包まれてぐっすりです。(無理矢理女子力高めの発言をしてみる)そんなこんなでモコモコしているうちに運動会の開会です。毎年のことではありますが、運動会で私はとにかくうるうるしっぱなしです。自分の甥っ子だけではなく、「ああ、あんなに小さな身体で頑張っている」と知らない子どもにもうるうる。娘を抱きしめる父親を見ては「ああ、私もあの頃にお父さんが欲しかった」とうるうる。もう完全に情緒不安定おばさんなのであります。これ、もし我が子の運動会だったらどうなってしまうのだろうと自分が怖いです。まずは年長さんのかけっこが始まりました。入場の時から「Kちゃ~ん!Kちゃ~ん!」と叔母さんは手をふりまくります。まだ幼稚園児の甥っ子2号は普通に手をふって応えてくれますが、これが小学校四年生の甥っ子1号だったらガン無視です。この日もお昼前に一人でやってきた1号に「ねえ、ぎゅっとしていい?」と言ったら即答で「無理」と言われました。運動会では義兄がビデオで、私がカメラという役割分担なのですが、毎年この日だけは一眼レフカメラ的な良いやつが欲しいなと思ってしまいます。しかし、西山繭子の理念「一眼レフとムートンブーツは買わない」を崩すわけにはいきません。年少さんである甥っ子3号のかけっこでは、三月生まれというほぼほぼ赤ちゃんの彼が真っすぐ走っているだけで感泣してしまいました。しかも1等賞!「S太はウサイン・ボルトの生まれ変わりかもしれない」と母に言うと「ボルトはまだ生きてるからカール・ルイスじゃない?」と言われました。お母さん、カール・ルイスも生きとります。大玉ころがし、組体操、ダンスとプログラムが進む中、「綱引きに参加されるお父様は、入場門前へお越しください」のアナウンスが流れました。すくっと立ち上がる義兄。冒頭に私がこの幼稚園の運動会に参加するのが6度目だと書きましたが、もちろん兄も同様です。PL黄金期の清原、桑田のKKコンビだって物理的に甲子園には5回連続でしか出られなかったところ、義兄は6回連続での出場です。もうベテランの域です。この綱引き大会、毎年思うのは「男の人っていつまでたっても少年なんだなあ」ということ。入場の時は、ハチマキを巻いたお父さまたちはどこか恥ずかしそうなのですが、綱を持った途端に目の色が変わるのです。家族にいいところを見せたいとか、そんなんではなく、ただただ目の前の勝負に負けたくないという思いがひしひしと伝わってきます。女子力ならぬ男子力とでもいいましょうか。必死に頑張る義兄を見ながら、園には来年こそ叔母さん参加の競技を企画して欲しいなあと思うのでした。
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。
オフィシャルサイト→FLaMme official website