途中経過はウォーズマン│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#086

途中経過はウォーズマン

2017-11-13 12:26:00

 久しぶりに気合を入れて美容院に行きました。なぜ気合が必要だったかといえば、今回はカット、パーマ、カラーのフルコースでオーダーしていたからです。ここ最近の私といえば、十年以上お世話になっているヘアメイクMさんから「繭子ちゃん、そろそろおいで~」と催促のメールをもらってから重い腰をあげて表参道のシャレオツなサロンへGOといった感じ。「今回は、どんな風にしようか?」とMさんが色々と提案してくれても、普段自分でセットするのが面倒という理由で一束に結べる程度の長さでカット。パーマは時間がかかるからなし。カラーは根元のリタッチで頻繁に通わなきゃいけないからなし。サロンを出るたびに、もう私は千円カットでもいいんじゃないかと思ってしまいます。しかし、自分のプロフィールを見ると驚くことに『女優』と書いてあるので、さすがに千円カットはまずいかと自制。どこかの調査によると女性が美容院に行く平均頻度は三ヵ月に一度で、そこで使う費用は七千円ほどだそうです。年間で二万八千円の出費。女子力が高い人はもっと行くのでしょうね。ああ、女子って大変。って今、私がお願いしているサロンの値段を調べたらカット、パーマ、カラーで三万円近くしました。ひえー。三ヵ月に一度通ったら十二万円じゃないかー。海外旅行に行けちゃう。ただ私の場合は、美容院の費用はありがたいことに事務所がもってくれるので、とても助かっています。だったら、もっと行けばいいのにねえ(他人事)。

 そんな私が今回、一念発起した理由は、気づけば30代も残り三ヵ月をきってしまい、これはそろそろ本気で終活に取り組まなくてはいけないぞと思ったからです。髪の毛を整えることがなぜ終活なのかとお思いでしょうが、私的には『残りの人生、きちんとしよう』みたいな感じなのです。あとはさきほども言及したプロフィールに書いてある『女優』にいまいちど向き合い直したいという気持ちもあったりします。先日、ここ数年私の担当をしてくれたマネージャーY子の送別会があったのですが、その時にY子がこれまでに担当していた吉瀬美智子、紺野まひる、福田真由子も来ていたんですね。その時、みんなは女優然りとしていてとても美しく、それに比べて私ってその辺にいるおばさんと変わらないよなあと、何だかその場にいることが恥ずかしくなってしまいました。まあ、生まれ持ったものが違うのでヘアスタイルを変えることで全てが解決するわけじゃないけれど、自ずから足を運ばない私がフルコースに挑んだのは女子力的にも大きな前進であることは間違いないでしょう。実際、ヘアメイクのMさんも「繭子ちゃんが変わってくれて、本当に嬉しいよ」と涙を流しそうな勢いで感動しておりました。シャンプーを終えて鏡の前に座った私とMさんはまず綿密に相談。前もってMさんには「こんなイメージがいい」という画像をいくつか送っていました。ただ、その画像に全然まとまりがなく、Mさんは困惑。「あのさ、繭子ちゃんが髪を切りたいのはわかったんだけど、これとこれはだいぶ長さが違うし、そもそもなんで小池百合子さんの画像まで入っているの?」「女性の強さと知性を出すにはいいかなと思ったんだけど…、だって辻元清美さんだと短すぎるでしょ?ああ、山尾志桜里さんぐらいがいいのかな」「議員から選ばなくていいから」「だよね」そんな会話をしながら、二人のイメージをきちんと重ねていきます。まずはカット。リズミカルな金属音が鳴るたびに床に落ちていく黒い髪。ああ、この髪の毛を売って、夫に懐中時計の鎖を…と思うのはいつものお約束。床に落ちた髪の毛は、我ながら綺麗だなと思いました。マンチェスターのフラットメイトのフランス人クララは、私の髪の毛をいつも褒めてくれました。これまでパーマやカラーをあまりしていない分、髪の毛が健康なのであります。でも今回はばっさり切っちゃうよ。20cm以上は切ったかなあ。「じゃあ次はパーマだね」Mさんの言葉に頷く私。この時点でもうじっと座っていることに疲れて帰りたくなっていたのですが、鏡に映る姿はキン肉マンに出てくるウォーズマンのよう。ボブにする場合、黒髪直毛の私にはパーマが必須なのであります。そしていざパーマに突入。この時点で2時間半が経過しておりました。持って行った戌井昭彦さんの『ゼンマイ』も読み終わり、雑誌タイムに突入。普段読まないファッション雑誌や美容雑誌に目を通します。女子力アップタイム。しかし、あまりにも『抜け感』というフレーズが多すぎて、そんなに『抜け』ちゃったら、もう隙だらけで殺されちゃうだろと心配になってしまいました。最強の『抜け感』を出しているヌケサク先生とか、若い子は知らないんだろうなあ。そしてパーマが終わり、お次はカラー。この時点で「カラー…しなくちゃダメ?」とMさんに弱音をぽつり。「あと少しだから頑張って!」と励まされ、踏ん張る私。こんなお客さん他にいないだろうなあ。全てが終わった頃には4時間が経過していました。「これからはこまめにメンテナンスしなきゃダメだから、ちゃんと来てくれるよね?」と言うMさんに笑顔で「うん!たぶん!」と手を振って私は、サロンを後にしました。次にMさんに会うのは春になる頃でしょうか。だって、4時間はやっぱり辛いもの!

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website