ケール祭り開催
2017-11-27 09:39:00
まずはPCもしくはスマホをスクロールしていただき、写真を見てください。この鬱蒼としたジャングルのような物体は観葉植物ではありません。よく見ると取っ手が二つ。そう、これは冬将軍に打ち勝つための素晴らしきメニュー、鍋であります。し、し、し、しかも!上に山盛りのっているのは、ケール!あのかの有名なマリー・アントワネットが「パンがなければケールを食べればいいじゃない」と言ったケール。マリリン・モンローが「夜はケールの5番を着て寝ているわ」と言ったケール。谷亮子議員が「田村でも金、谷でも金、ケールでも金」と言ったケール。いつの時代も、その時代を動かしてきた女のそばにはケールがありました。女子力を野菜化したもの、それがケールであります。以前、表参道にあるスーパーマーケット紀伊国屋へ偵察に行った時のことです。私がこよなく愛するスーパーオオゼキとどれだけ値段が違うのだろうとチェックしてみると、お値段倍以上のぶなしめじに震え上がりました。その時、ぶなしめじの前でブルっている私の目の前を颯爽と通り過ぎる美女が一人。明らかに一般人とは違うオーラを纏ったその美女は、高級感溢れる真っ白なコート、手にはバーキン、左手薬指にはたいそう大きなダイヤが輝いていました。やっぱり紀伊国屋は客層も違うな~、ほえ~と眺めていると彼女が野菜売り場で見慣れないものを手にしました。何やら茎が長くて大きな葉っぱ。あれは、カエルが雨の日に傘代わりにしている葉っぱではなかろうか。意識が高いエコな人たちの間では、もはや傘さえもオーガニックになったのだろうか。そんなことを考えながら彼女が手にとった野菜におそるおそる近づく私。袋には『ケール』の文字が。ああ!聞いたことある!意識高い人がスームージーとかにしているやつ!初めて見たことに感動しつつも、そのお値段に目玉が飛び出しました。ああ、私には無縁の野菜だわ。
しかしそんな私に、つい先日ケールチャンスが到来したのです。帰宅後、家のポストを開けると一枚のチラシがひらり。私が住んでいるマンションは親切なことに、ポストの前にチラシ専用のゴミ箱が置いてあります。普段であればチラシの類はそこに捨ててしまうのですが、私の目に『ケール火鍋』という文字が飛び込んできました。チラシは野菜が美味しいと評判のレストラン。その存在は知っていましたが、わざわざ外で金払って野菜食わねーよ!肉だ!肉持ってこーい!な私としては、死ぬまで行くことはないだろうなと思っていました。チラシにはデトックス効果抜群、消化促進、美肌効果、脂肪燃焼といった女子が胸キュンなフレーズが並んでいます。しかし言葉を生業にする作家・西山繭子は、そんなものには踊らされません。さあ、このチラシもゴミ箱行きかと思ったその時、隅の方に書かれた言葉に私の手が止まりました。『このチラシをご持参いただいた方は50%オフ!』作家・西山繭子、チラシを大切に家に持ち帰りました。そして早速、友人のRちゃんにメール。Rちゃんは私よりも年上の女友達。私がこの春にマンチェスターに行ったきっかけには、このRちゃんの存在がありました。彼女はロンドンで暮らしていた経験があり、その話を聞いているうちに「私もきちんと自分から動かなきゃいけない!」と一念発起したのであります。大人になってからこんなに仲良しの女友達ができるなんて思ってもいませんでした。ちなみにRちゃんは独身で、これまた独身の妹と暮らしているというツワモノです。だから仲良しなのかもね。そんなRちゃんと連れ立って、いざお店へ。まずは乾杯しようかとドリンクメニューを見るとオーガニックビール、有機栽培ビール、スムージーカクテルといったお洒落なものが並んでいます。女子力のない私たちも「今日はオーガニック祭りでいきますか」とオーガニックビールを注文。そして店員さんの「お食事の方はお決まりですか?」という言葉にすかさず「電話で予約した時にも伝えたんですけど、50%オフのチラシがあるので、ケール火鍋をお願いします。あ、これって1枚で2人とも50%オフになります?一応、チラシ2枚持ってきましたけど」と完全におばさんモードで答えました。なぜチラシを2枚持っているかと言うと、念のためポストの前に置いてあるゴミ箱から1枚拾ったからです。(チラシしか入れちゃいけないゴミ箱だから汚くないよ!)ちなみに1枚で2人分OKでした。恥ずかぴい。初めて食べるケールは、ほんのり苦味があって美味しいんだか美味しくないんだかよくわからないけど、身体に良さそうな気がしました。火鍋はトッピングのお野菜が食べ放題だったので、ケール以外にもたくさんの珍しいお野菜を食べることができました。「女子力上がりまくりだね」と私たちは身も心も温かくなりました。店を出てからも話は尽きず「もう一軒行こうか」と近くにあった安い居酒屋へピットイン。そして、そこでホッピーを片手にアジフライを食べ、せっかくのオーガニックを帳消しにしてしまう私たちなのでありました。
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。
オフィシャルサイト→FLaMme official website