エンジェル・ナンバー│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#111

エンジェル・ナンバー

2018-11-26 01:25:00

 連載111回目であります。前回と始まりのくだりが同じということには目をつぶってください。女子力の低い私などが、この数字を見ると「お、ぞろ目だねぇ」と江戸っ子風情になりますが、世間では『エンジェル・ナンバー』などと言うそうです。40歳にして初めて耳にする言葉だわ。何でもこの『エンジェル・ナンバー』というのは、天使からのアドバイスだそうです。ふーん・・・、天使からのねえ・・・。え?どういうこと!?と眉間に皺を寄せてしまうのは、やはり女子力のない証であります。こういう場合、「わーい、天使様!どうもありがとう!」と笑顔で仏壇に手を合わせるぐらいの鈍感さが必要なのでしょう。ネット検索でトップに出てきたページを読んだところ、まず『あなたの理想を高く持ちましょう。理想が現実化します』と書いてあります。自分の理想を素直に受け入れることによって、理想の自分の姿を現実化できるとな。うーん。例えば、今これを書いているのは出勤前の朝7時です。私の理想の姿を描くと、日の当たるダイニングで夫と会話を楽しみながら美味しい朝食をいただいています。テーブルの上にはベルナルドのギャラリーロワイヤルのお皿が並び、その上には焼きたてのバゲットや、みずみずしいサラダ。クリストフルのポットからは紅茶の良い香りが漂っています。しかし私は浮かぬ顔で「今日の午前中はお友だちとフラワーアレンジメントのお教室に行って、その後はアフリカの貧困を救うためのチャリティーイベントの打ち合わせがてら銀座でランチなのよね。はあ~、ジムに行く時間あるかしら?」とハリー・ウィストンの指輪をいじりながら溜息。その様子を見て、ディーン・フジオカ似の旦那は微笑みます。「いつも頑張ってるね。そんな君が大好きだよ。今日の夜は久しぶりにロブションにでも行こうか。美味しいワインを飲んでゆっくりしよう」「やめてよ、フレンチなんて。これ以上太ったらどうするのよ(笑)さくっとお寿司にしてちょうだい」「さくっとねえ(笑)」そして、夫を送り出した私は重い腰をあげてウォークイン・クローゼットへ。何百着とある洋服を目の前に「ああ、着るものが全然ないわ。ランチの後、お買い物に行かないと」とボヤきながら1週間前に買ったシャネルのニットに袖を通し、何十個も並んだバーキンの中からクロコを手に取ります。「あら、そういえば担当さんから新しいバーキンが入ったって連絡があったのを忘れていたわ」最近、気づけば独り言が多くなっている。私は苦笑いを浮かべて、イメルダ級シューインクローゼットからルブタンの新作をチョイス。おろしたての靴に思わずにんまり。「よし、今日も頑張ろう!」というのが私の理想。ここまで描いたんだからエンジェル・ナンバーは、きっとこれを現実化してくれるはず。ちなみにどれだけ理想と現実が違うかを比較してみましょう。まずは朝起きたら、お湯を沸かします。白湯を飲むためです。ウォーターサーバーなんて贅沢なものはないので、薬缶がピーヒャラピーヒャラ鳴くまで待たねばなりません。待っている間には、この季節の朝の労働である結露拭きに精を出します。雑巾で拭いては絞り、拭いては絞り。築20年以上のマンションに暮らしていると色々大変です。そして朝食。そもそも私の家に日の当たるダイニングなんてものはありません。小さな1Kなので、ダイニングセットなどを置くスペースはなく、ちゃぶ台&座布団生活です。バゲッド?サラダ?たまにはそんな日もありますが、今朝は納豆ご飯と目玉焼きでした。ベルナルドのギャラリーロワイヤルなんて夢のまた夢、西友で買った皿と茶碗であります。もちろんクリストフルのポットから紅茶の香りが漂っているなんてこともなく、世田谷ボロ市で値切った急須で日本茶を入れます。これを急いでかきこみ、出社前にせっせと原稿を書くのです。言わずもがな、優しい夫などもちろんおりません。でも『おばけのアッチ』という相棒がいつも私のことを見守ってくれています。(写真参照)そしてカタカタとキーを打っていて気づけば、あっという間に家を出る時間に!ひゃー、着替えなきゃ!と小さなクローゼットを開けると、その中にかかっているハンガーは30本。これ以上は洋服を増やさないというルールだけど、今でも多いなあと思っています。その中から20年前に買ったラルフローレンのニットを取り出し、袖を通します。物持ち良すぎ~。どんだけ~。そしてバッグはこれまた高校生の時に買ったエルベシャプリエ。エルベ丈夫すぎ~。どんだけ~。そして備えつけの下駄箱の中から赤いコンバースを取り出します。これは28歳の誕生日の時に、プレゼントとして贈られた28足のコンバースのうちの一足です。28足って多すぎ~。どんだけ~。と、これが私の今の姿。こんなに違うのに、エンジェル・ナンバーは本当に私の理想を叶えてくれるのでしょうか?そもそも、自分がなぜ理想にディーン・フジオカ似の夫と描いたのかもよくわかりません。

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website