私の神様│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#112

私の神様

2018-12-10 13:37:00

 先日、美容院でファッション雑誌『JJ』をふむふむ眺めていました。デートに着ていくコートは年下彼氏の場合は甘めで、年上彼氏の場合はクール系が良いらしい。私の場合、コートはトレンチとダウンとライダースの3着しか持っていないので、年下彼氏ができたら甘めのコートを買わなきゃいけないということか。そもそも甘めのコートって何だろう?砂糖がまぶしてあるのか?そんなことを考えながら楽しく読んでいたのですが、ページも残り僅かになり女性誌にマストの占いページにさしかかった時のことでした。JJの占いは星座ではなく、生年月日を何かの表にあてはめてといったものでした。いざ占うべし、と指定された表で自分の生年月日を探し始めた私。「1978年の1月生まれは…」と目で追っていくと、ガーン…。な、ない。1981年までしか載っていない。そりゃそうか。10代の子が見る雑誌だものね。そう自分に言い聞かせながらも、初めての経験だったので少なからずショックを受けました。もう甘めのコートとか着なくていいのよ、私。ちーん。

 そのショックのせいかはわかりませんが、昨日身体の痛みに耐えられず、久しぶりに鍼に行きました。人と比べると圧倒的に健康な私でありますが、年に数回、ぎっくり首になることがあります。ぎっくり腰ではなく、ぎっくり首。メジャーではないところが、何とも私らしいですね。ここ最近では「ああ、なりそうだな」というのがわかるようになったので、症状が悪化する前に対策をとるようにしています。入念にストレッチをするとか、シャワーではなくお湯にゆっくりつかるとか。しかし今回は外食が続いたり、会いたくない人に会わなきゃいけなかったり、仕事が終わらなくてバレエに行けなかったり、心身ともにバランスが崩れて発症してしまいました。これね、本当に辛いんですよ。まったく首を動かせない。横になっていても痛い。それでも原稿を書かねばという時は、むち打ちの人がしている首のサポーターをつけて何とか頑張ります。己で治すには時間の経過しかないのですが、あまりに辛い時は鍼に頼るようになりました。今から10年ほど前のことでありましょうか。ぎっくり首の激痛で死にそうになっている私に、事務所の社長が行きつけの鍼の先生を紹介してくれました。それが私の神様、カトちゃんことK先生(あだ名で名前が完全にバレている)との出会いです。カトちゃんは、死にそうな顔で院にやって来る私をいつも笑顔で迎え入れてくれ、施術前に「さあ、楽にしてあげるからね~」と声をかけてくれます。そして実際、ものすごく楽にして私を帰してくれるのです。何だかここ最近では、パブロフの犬よろしく、カトちゃんの顔を見ただけで痛みが軽減されるような気さえしてきます。完全に神様レベル。サイババかカトちゃんかって感じです。この経験をしてからというものの、その昔、整体師に洗脳されていたといわれる貴乃花の気持ちがわからなくもない。自分が辛い時に、助けてくれる人って神様に思えるんだよね。私はここ最近、何人かにカトちゃんの院を紹介しました。鍼をやってみたいけど知らないところに行くのは怖いと言うので、喜んで紹介しました。そして施術後に感想を尋ねると、みんながカトちゃんを絶賛し「うん。わかる、あの神様感」と言うのです。まあ、もちろん実際には指先から灰を出すとか、そんな怪しげなことは一切なく、ひたすらマッサージと鍼で痛みを取り除いてくれます。あ、ちなみにカトちゃんは50歳前後の優しいひょろりとしたおじさんです。私は腰痛が酷い時もあるので、その場合は臀部に鍼をさします。そのためにまずカトちゃんはうつ伏せになっている私のパンツをずり下げなくてはいけません。そして鍼をビリビリとツボに響かせてから、パンツを直してくれます。いやはや、女のパンツをずり下げる男というのは、星の数ほどいますが、ずり下げたパンツを上げてくれるのはカトちゃんだけ!やっぱり神様!パンツとともに私の女子力も上がりそう!ただ、さすがにTバックとかだとカトちゃんも気まずいだろなと思うので、施術に行く時はいつも綿のおばさんパンツです。いつもそれをはいているから、もしかしたらカトちゃん、私がパンツを1枚しか持っていないと思っているかもしれない。そんなこんなで施術後は顔がバラ色になるほど血行が良くなり、身体もぽかぽか。昨夜はいつも以上にぐっすり眠れました。本来であれば頻繁にかけこみたいところですが、あまり施術を受けすぎると身体が慣れて鍼が効かなくなってしまうのでは?と思い、本当に辛い時だけお世話になるようにしています。昨日も「きっと、良いお年を、ですね」と言ったので、年内はいつも以上に摂生に努めようと思います。しかし正月に不摂生して、初詣がカトちゃん。うん、このパターンはあり得るな。写真は、ぎっくり腰を予防するためのテニスボールです。

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website