プチ終活│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#134

プチ終活

2019-11-07 15:44:00

ここ最近『プチ終活』に励んでおります。何をしているのかといえば、家の中にある不用品の整理整頓ですね。断捨離と何が違うのかと言われれば、まあやっていることは一緒なのですが、作業をしているうちに「これはもはや終活だな」と思うようになりました。でも41歳で本格的な終活というのはちょっと早いかな、ということで『プチ終活』という可愛らしい呼び名にしてみました。プチというフランス語がついただけで女子力が高そうな行動に聞こえますね。
 今回の整理整頓はCD、洋服、思い出の品の3つに重点を置くことにしました。小さな家に住んでいますから、そんなに物が多いわけではありません。しかしこれは『プチ終活』であります。自分が死んだことを想定した場合、遺品を処分する人の負担を最小限にしたい。それってつまり優しさなのですよ。ああ、私って本当に良い子だなあ。どうして結婚できないんだろう。そんなことをぶつぶつ言いながら、まずはCDから始めることにしました。昭和生まれの私は音楽を「モノ」で持つ世代です。カセットから始まり、途中MDなるものもはさみましたが、やはりCDがメイン。中学高校の帰り道は毎日のようにタワレコに寄り、試聴を重ねたりポップを読んだりしながら洋楽の知識を養っていました。そして限られた予算で懇親の1枚を買うのです。ただ私の場合、それがピンクフロイドとかレディオヘッドとか、かっこいい感じではなく、クリスクロスとかマーキーマーク&ザ・ファンキーバンチといったものばかり。DJをやる時はこれらを普通にかけるのですが、大御所DJの須永辰雄さんは「すごい!1周回ってもカッコよくない!」と言っていました。でもそれらは私にとっては大切な宝物なので、今回のプチ終活でも手元に残しておくことに。深く考えずに感覚でより分けていった結果、150枚ほどあったCDが23枚になりました。BLONDIEの横に男闘呼組のCDが並ぶというFBIでもプロファイリングが難しいラインナップ。そしてお次は洋服です。これは本当にね、たいして買っていないと思っていても増えているんだなあ。しかしお片付けのプロであるこんまりさんの言う「ときめく、ときめかない」で捨てると、裸にマックスマーラのコートを着てバーキンを持つというスタイルになってしまう。それでは逮捕されてしまうので、ここは少しでもときめけばOKにしよう。40代に突入してからは似合わない服が急激に増えてきました。ポロシャツは体操着にしか見えないし、ジャージは刑務所みたいになっちゃう。ここ最近ではロゴTシャツも厳しくなってきました。要はカジュアルなものが難しくなってきたのですね。心を鬼にしてどんどん分別していきます。『プチ終活』ですから「いつか着るかも」はご法度です。だって死ぬんだから。不用品のほとんどは捨ててしまうのですが、Tシャツやジャージなどは小学6年生の甥っ子にあげています。何もわからずにビースティ・ボーイズのTシャツを着て小学校に行く甥っ子が可愛いことこの上ない。今回の作業でクローゼットの中がかなりスッキリしました。そして最後は思い出の品。私には実家というものがないので、子どもの頃からのアルバム、卒業文集、手紙といった思い出の品は全て自分の手元に置いてあります。小さな段ボール3箱に40年間の思い出が収められているのは多いのか少ないのかわかりません。でも間違いなく言えるのは、私の死後、これらはゴミにしかならないということ。その中には日記もあります。12歳の時に書き始めて毎年1冊綴ったものが約30冊。処分する前に一応、父親に相談したところ「あなたが今後ノーベル文学賞でもとったら何かに使えるんだろうけど、まあその可能性は低いわな」という答えでしたので、迷いなく処分することに。一応捨てる前に中身をぱらぱらめくったのですが、例えノーベル文学賞をとってもこの日記が表に出たら確実に賞剥奪だなというほどくだらない内容でありました。どうしてこんなものをずっと大切にとっていたのだろう。そして今回、日記と共に大量に処分したのは思い出の写真たち。構図が半端なく悪い家族写真やピンボケ写真、はたまた来日時に追っかけをしていたニューキッズオンザブロックやテイクザットといった外国人アイドルの写真、そしてこの先まったく役に立つことはないであろう元カレとの写真。ああ、これは初めて一緒に旅行に行った時だなあ。ぽいっ。ああ、この時のクリスマスには横浜の観覧車に乗ったんだっけ。ぽいっ。幸せだったなあ、私。ぽいっ。ぽいっ。ぽいっ…ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー!と出るわ出るわのゴミの山。美しい思い出は全てこの胸にしまっておきましょうということで、3箱あった思い出の品は1箱にまとめられることになりました。まさか婚活もせずに終活に突入するとは思いませんでしたが、身の回りは片付くのは気分の良いものですね。

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website