怪しさ光るステキな箱で
2019-12-18 16:30:00
今年は父が亡くなって15年ということで、7月に大阪にて「中島らも没後15年ライヴ~うたっておどってさわいでくれ~」というライヴイベントが開催された。出演は大阪と東京から、司会に松尾貴史さん、あふりらんぽのオニちゃんがボーカルをとってのマザーズボーイズ(父が晩年にやっていたバンド)、ガンジー石原とモスキート、鮫肌文殊さんの捕虜収容所、焼肉の「ヨーデル食べ放題」でおなじみの桂雀三郎withまんぷくブラザーズ、アフリカの伝統弦楽器ニャティティを操るAnyangoさんとパーカッショニストの辻コースケさんのデュオに、山内圭哉さんとコング桑田さんがボーカルをとってのPISS(これも父がやっていたバンド)に、ゲストで大槻ケンヂさんと町田康さん。
豪華でバラエティに富んだ出演陣に加えてみんなが喜んだのが今回の箱(会場)で、大阪のミナミは難波にある味園ユニバースというライブハウスだった。なんとこの箱、元キャバレーなのだ。1955年から営業している「レジャーシティ味園ビル」には500人が入る大宴会場やサウナ、スナックにダンスホール、そして地下にあったキャバレー、当時「食事のデパート」「美人マッサージ&ラウンジ」などのCMが流され、高度経済成長期のナイトスポットとして名を馳せていた。
その地下一階のキャバレーが2011年に営業終了し(けっこう最近までやっていたのね!)、ライブハウスになった。中に入ると、エントランスの天井にはシャンデリアのようなアートランプが吊るされ、フロアには、キャバレー時代から受け継がれた六人掛けの布張りのソファが並んでいる。ステージ前にはダンスフロアとして使われていたスペースもそのままで、まさに昭和にタイムスリップしたよう。
楽屋は、なんと元ピンサロなんだとか。壁にはキャバレー時代のチラシや写真が貼られていて、演奏の合間の待ち時間もみんな見て回っていた。
レトロで不思議で、怪しさも漂う味園ユニバースで行った没後15年ライヴ。イベント自体は500人ものお客さんが来てくださり、もちろん大盛り上がりで、「次は没後20年にやろうね」と誓い合ったわけだが、死んで15年経ってもこうやって集まって盛り上がっていることに、松尾貴史さんが「カルト集団のよう」と言って全員大ウケしたのだった。たしかに。
味園ビルは今でも宴会場が利用できるし、二階のスナック街にはバーも入っている。裏なんばのディープスポットとして遠方から訪れる人も多い。とても魅力あふれるビルなので、大阪に行った際はぜひ足を運ばれてはと思う。
作家。1978年、兵庫県宝塚市に作家・中島らもの長女として生まれる。2009年エッセイ集『かんぼつちゃんのきおく』、2010年初小説『いちにち8ミリの。』でデビュー。他に小説『ルシッド・ドリーム』『放課後にシスター』、エッセイ集『お変わり、もういっぱい!』がある。サックスプレイヤーとしてバンド活動もしている。
研究施設から逃げ出したうさぎをめぐる連作短編集『わるいうさぎ』が双葉社より、「いじめ」をテーマにした短編を収めた競作アンソロジー『「いじめ」をめぐる物語』が朝日新聞出版より発売中。
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