さよなら2020年│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#161

さよなら2020年

2020-12-21 12:51:00

 2020年は世界中が予測もできない事態に陥り、これまでの生活が一変しました。いつかこのパンデミックを振り返って「あの時は、大変だったね」と言える日がくるのでしょうか。ここ最近は、常にマスクをする息苦しい生活に叫びたくなることがあります。検温、消毒の連続に家から出るのが億劫になります。このまま二度と外国に行けないのだろうかと悲しくなります。このコラムにも何度も登場している中高大の仲良したちと集まれないことがもどかしくてなりません。こんな風にたくさんの人が我慢をしているのに、それなのに8人でステーキとか食べちゃう我が国のトップ。スリッパで頭をはたかれても文句は言えまい。そのことを姉と話していて「あのお会計って誰が払ってるんだろうね?」と訊くと「みのさんじゃない?」とのこと。真偽のほどはわかりませんが、国民の血税でないことを願います。さてさて今年最後の『女子力って何ですか?』は、流行語大賞、今年の一文字、レコ大と並ぶほどに年末の風物詩をなりました一年の振り返りでしめくくってみたいと思います。
 1月、年明け早々にバレエの発表会。誰にも告げぬまま、すでに引退を心に決めていた私。終演後、わざわざ観に来てくれた事務所の社長に駆け寄りました。「これで心おきなく引退できます」「え?」「あわわ!バレエの話です!今年もフラームで頑張りまっす!」そして42歳の誕生日、これまた事務所の社長、スタッフにお祝いをしてもらっていると一本の電話が。「伊集院先生が倒れました!」この日を境に闘いの日々が始まる。2月、予約していたオーストラリア旅行はもちろんキャンセル。ひたすら病院に通う毎日。少しずつ回復していくことに安堵しながらも、入院のストレスが爆発した父の心ない行動、言葉に心身共に傷だらけになる。父が回復した時に、今回のことを書くことがあったら参考になればと綴り始めた闘病日記はいつの間にかデスノートに。生活に困窮したら出版しようと思います。タイトルはもちろん『ダディ』です。3月、撮影で岡山県にある温泉旅館『季譜の里』へ。ここの若旦那とは学生時代からの付き合いで、もう10年ほどメルマガで旅のコラムを書かせてもらっています。そして今年からホームページにも登場。美しい光に包まれた私の入浴姿が見られます。撮影とはいえ心身ともにリフレッシュ。帰りの飛行機では、翌週にリハビリテーション病院を退院する父への手紙の文面をぼんやり考える。言葉がうまく出てこない。父と娘とはいえ、作家が作家にあてる手紙というのは難しいものだ。4月、緊急事態宣言が発令される。事務所の社長からも、所属女優全員に不要不急の外出を控えるようにとのメール。そこに「公人としても自覚を持って行動してください」との文字。私なんかがなあとは思いつつも、長年お世話になっている社長のことを裏切るようなことはいかんざき!ということで、働いている会社の方はお休みをさせてもらうことに。最初は「働くって幸せなことだったんだな」と思っていたが、1週間も経てば「もう働ける気がしない」となる。朝から晩まで全ての時間を自分のためだけに使えるって何て幸せなんでしょう。ひゃっほー!自粛生活万歳!5月、巷で言われる自粛疲れなんてどこ吹く風。誰とも会わず、毎日同じルーティーンが繰り返される生活が心地良い。そして、これを機にダイエットに励む。生まれて初めての本格的なダイエットでしたが、己のストイックさに感動すら憶えました。6月、緊急事態宣言が解除されて、しぶしぶ働き始める。これまでより減ったとはいえ朝の通勤電車は他人との密着は避けられない。感染対策をしながらも色んなことがあっという間に日常に戻っていく。パオロ・ジョルダーノ『コロナの時代の僕ら』を読みながら漠然とした不安が募る。7月、コロナ禍でのドラマ撮影。感染対策ガイドラインにそって気を遣いながらの撮影は、負担を要することも多いが、それでもお茶の間で楽しみにしている視聴者の皆様に良い作品を届けるために、みんなが一心になって頑張っている。改めて私はこの仕事が好きだなと思う。8月、ダイエットで落とした5kgの体重が戻りつつある。昔、友人が言っていた「私、高校生の時からずっとダイエットしているの。もう死ぬまでダイエットしながら生きていくんだと思うと絶望する」という言葉が身に染みる。9月、久しぶりに派手な作品が観たいと思い『TENET』鑑賞。時間軸の複雑さにギブアップして早々に寝る。ロバート・パティンソンの魅力を知れたことが唯一の収穫。10月、コロナ禍とはいえ個人的には穏やかな日々。あまりにも穏やかで「こんな人生で良いのだろうか」と自問することが多くなる。新国立劇場バレエ団『ドンキホーテ』のカーテンコールに吉田都さんの姿。こんな華奢な身体で世界を舞台に闘っていたのかと感泣。11月、引き続き穏やかな日々。穏やかというか何もない日々。つまらない日々。唯一の楽しみはhuluで字幕つきが見られるようになった『サタデーナイトライブ』。アメリカって、なんだかんだ言ってもすごいなあ。12月、コロナ第3波に襲われているが働かざる者食うべからず。勤勉に会社で仕事をする日々。毎年思うが、来年こそは良い年にしたい。何しろ2021年は、私のラッキーナンバー21の記念すべき年だから。今年もご拝読ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。写真は24年前の丑年の際に仕事仲間と作った年賀状です。

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2020.12.21 配信

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website