44歳ですって│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#187

44歳ですって

2022-01-24 10:36:00

 ああ、憎きオミクロン!許さぬオミクロン!南の空に赤い星が輝いた時、墓場の亡霊たちが目覚め、お前に剣を向けるであろう!その時にお前がどれほど必死に許しを乞うたところで、赤子ですら慈悲の目を向けぬであろう!ああ、オミクロンよ!憎きオミクロンよ!
 みなさま、ごきげんよう。西山繭子です。オミクロンに対する怒りを言葉にした途端、シェイクスピアが降臨しました。大学時代は英文学科だったので、曲りなりにもシェイクスピアはひと通り読んでいます。卒業論文は『ハムレット』について書き、ゼミの先生に「西山さんの論文は、何と言うか…すごく自分勝手だね」という褒め言葉をいただきました。よく卒業できたな、私。当時はいつかオフィーリアの役をと思っていましたが44歳になった今、それももう儚き夢と消えました。しかし、それにしても本当にオミクロンが憎い。この2年間、コロナ禍に耐えてきましたが今回ばかりは許せない。なぜならば、とても楽しみしていたミュージカル『SINGIN' IN THE RAIN 雨に唄えば』が公演中止になってしまったからです。2020年秋に続いての中止。せっかく良席がとれていたのに!アダム・クーパーを目の前で観られるはずだったのに!本当に残念で仕方がありません。観客はもちろんのこと、スタッフ、キャストの皆さんも悲しい思いをしておられるはず。これほどの大規模公演が中止になるというのは想像以上に大変なことだと思いますが、三度目の正直を信じていつの日か公演を実現させて欲しいです。待ってるよ、アダム。さてさて、先ほど「44歳になった今」と書きましたが、そうなのです。つい先日、1月21日の誕生日でわたくし44歳になりました。精神が実年齢にまったく追いついていないのが少し苦しいところでありますが、それでも44歳です。今も朝の4時だというのにコアラのマーチを食べながらこの原稿を書いています。それでも44歳です。頑張ります。誕生日当日はまん防がスタートということもあり、昼間に母の家でお祝いをしてもらうことにしました。「母が揚げ物をしている横でビール片手に姉とひたすら揚げたてを食べる会」です。考えてみれば、こうして家族で誕生日を祝うというのは随分と久しぶり。せっかくなので記念に私の体重のテディベアや、足型を送ろうと思ったのですが「まーたん、それは赤ちゃんだから可愛いのであって50kg近いテディベアとか外反母趾気味の足型とか、気持ち悪いからいらないよ」と姉に諭されて却下。ならば一升餅でも背負うかと思ったのですが、私の場合、44升背負わねばならず、計算したところ何と約60kg。腰を痛めてしまいそうなので断念しました。みんな、どんな方法で誕生日をお祝いしているのですかね。当日は太陽も私の生誕祭を祝っているようで美しい快晴。事務所の社長から届いた温かい誕生日のメッセージを電車内で繰り返し読みながら母の家へと向かいます。途中、最寄り駅にあるお花屋さんで母にアレンジ花を買いました。44年前、私を産んでくれてありがとうのお花です。まだ『ワンオペ』なんて言葉がない時代に、母は女手一つで私たちを必死に育ててくれました。まさか44年後、その2人が「シャンパン買って来てって言ったじゃん。なんでプロセッコなの?あーあ!シャンパン飲みたかったなー!」「うるさいなー。じゃあ、お金出すからオオゼキで買って来なさいよ!」「は?外、超寒いんですけど!てか、私の誕生日なんですけど!」と喧嘩を始めるとは思いもしなかったことでしょう。最終的にはプロセッコを美味しくいただいたのですが、来年からは自分で用意しようと思います。写真のケーキのように。そうなのです。昨年に引き続き(第163回『誕生日』)、誕生日の主役だというのにやっぱりケーキは自前でありました。子どもの頃から馴染みのある洋菓子店に、電話で事前に予約をしたのですが「メッセージプレートは、まーたん、お誕生日おめでとう。平仮名で、ま、のばして、たんです」「まーたん…ちゃん?」「いえ、まーたんで」「ろうそくは何本おつけしますか?」「4本お願いします」などというやり取りがありました。そして当日、お店に取りに伺ったところ、お店のおばさんが「こちらでよろしいですか?まーたん、4歳かな?うふふ」と優しい笑顔でケーキを包んでくれました。ニコニコ顔のおばさんを前に、まさか目の前の44歳のおばさんのお祝いだとは口が裂けても言えませんでした。何はともあれ、たくさんの友人からもお祝いのメッセージをいただき、自宅にはたくさんのお花が届いたりと幸せな誕生日を迎えることができました。西山繭子、これからも健やかに楽しい人生を。そして来年の誕生日には、コロナ禍が終息していると良いですね。

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2022.1.24 配信

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website