やはり健康でした│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#190

やはり健康でした

2022-03-14 12:35:00

 みなさま、ごきげんよう。少しずつ暖かくなってきましたね。おかげで日課のウォーキングの足取りも軽やかになりました。ここ最近では少しでもサボろうものなら、途中にあるガソリンスタンドのおじさんが「昨日歩いてなかったね!」と容赦ないので、せっせと歩くようにしています。そのため体調はすこぶる良好。良好すぎて食欲旺盛のため痩せないのがたまにキズ。それでも健康というのは、何物にも代えがたいと感じるのは、この数週間、私が休日のたびに大学病院へと通う日々だったからでしょう。結論から言いますと何事もなかったわけですが、それでも万が一ということは考えました。まずはお墓を探して、住居を解約して、荷物を処分して、バーキンは姉に、いや、やっぱりむかつくから母に、そしておさるのジョージのぬいぐるみは甥っ子に等々。ちょうど江國香織さんの『ひとりでカラカサさしてゆく』を読んでいたので、人生の終え方について色々と考えていたところでした。44歳、人生の折り返し地点ですからね、準備を早くするに越したことはありません。
 疑いのあった病気は乳がんでした。現在、日本で乳がんになる女性の割合は9人に1人という多さで、30人に1人とだった30年前から急激に欧米諸国の罹患率に近づいているとのことでした。驚きの事実。これまで病気と縁遠い日々を送っていた私は、食生活や生活習慣の変化が乳がんの発症につながるとは、まったく知りませんでした。そろそろ病に関する知識を増やしていかなくてはいけませんね。実際に私のまわりでも今現在乳がんと闘っている人もいますし、数年前には同級生を亡くしました。だからこそ検査はきちんとしなければいけないと。私が暮らしている自治体では40歳以上の女性は2年に1度、無料で乳がんの検診を受けられます。今年度がその年であったため、年明け早々にいつもお世話になっている婦人科にマンモグラフィ検査を受けに行きました。マンモはこれまでに何度も受けていますが、お煎餅のように平べったくなったオッパイを見るたびに、オッパイの変幻自在っぷりに感心します。その時の検査結果が高濃度乳腺というものでした。これ自体は異常ではないのですが、マンモグラフィで白っぽく写ってしまうために病の早期発見が難しくなるとのこと。そこで念のためエコー検査を受けることにしました。「西山さん、お胸のエコー検査は初めてですか?」「はい」即答で返事をする私。すると、先生がカルテを診ながら「あれ?以前にうちでやっていますよ」と言いました。「え?本当ですか?やってないと思いますけど」「いや、カルテに書いてありますから」「本当に?」「本当に」記憶が飛んでいる自分が恐ろしかったです。そしていざ検査です。私は生まれつき心室中隔欠損症という心臓の病気を持っており、エコー検査は小さい頃から馴染みのあるものなので、何とも懐かしい感触。しかし、その時とは違ってジェルが人肌に温められていることに感動しました。そしてエコー検査の結果は、少し心配な嚢胞(のうほう)があるとのことでした。「深刻なものではないんですけど、念のため大きな病院で調べた方が良いので紹介状を書きますね」人生二度目の紹介状。以前は散々な目に遭いました。(第63回『パンパン』参照)今回、紹介された大学病院は電車とバスを乗り継いで行かなくてはいけません。往復で約1000円の交通費は、通うとなると少々痛いので、少し頑張って自転車で行くことにしました。メニエール病の薬をもらうたびに「うう、薬代ツラい」と嘆いていましたが、頻繁に病院に通わなければいけない人は医療費のみならず交通費も負担だろうなあと思いました。また大学病院はシステムがよくできているとはいえ、如何せん規模が大きくて勝手がわかりづらい。私でさえ戸惑うのだから、高齢者の方は付き添いがいないと大変。大学病院で改めて気づいたのは、日本はもの凄い高齢者社会なのだということ。大学病院は、もう見渡す限りお年寄りフィーバーです。私がその仲間入りをする頃には、拍車がかかっていること間違いなしなので日本の未来がすこぶる不安になりました。私の担当をして下さったのはとても感じの良い女医さんで「何もないと思いますが、念のため検査をしておきましょう」とのことでした。2回目にさらに精密なエコー検査、3回目にオッパイに針を刺して行う穿刺吸引細胞診、4回目に診断結果、と休みのたびに半日は病院へ。冒頭にも書いたように何事もなかったのですが、正直「どちらでもいい」と思っている自分がいました。今の私は、この先の人生にさほど希望を持っていないので病気なら病気で仕方がないと。この言葉はネガティブに捉えられそうですが、動じない心というのはある意味最強なのではないかと思います。しかし今回は予想通り健康の太鼓判を押されましたので、つべこべ言わずにしっかり生きなくてはいけません。ということで、これからもしばらくはコラムにお付き合い下さい。写真は自転車通院の強い味方、目出し帽です。今のところ警察にとめられたことはありません。

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2022.3.14 配信

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website