アニョハセヨ│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#195

アニョハセヨ

2022-05-23 11:31:00

 最後に海外に行ってから、はや三年。2020年夏に更新したパスポートも、まっさらなままであります。発給申請料は10年16000円、年割にすると1600円。すでに3200円の大損です。ここ最近はコロナに関する制限が緩くなったので、このGWには海外旅行を楽しんだという人も多いようですが、如何せんいつ何時状況が一変するかわからないことを考えると、なかなか予約に踏み出せません。しかもここにきて、このウクライナ情勢です。ロシア上空を飛行できないこともあり、航空券の価格は高騰。パリ祭こと7月14日の革命記念日に合わせてパリに行くには、と調べたところ何とエコノミーで48万円でした。ああ、いつになったらまた海外に行けるのだろう。コロナ禍になってからというもの「お家で海外旅行」や「東京で楽しむ異国情緒」といった色んな企画を目にしました。旅好きの私としては「そんなわけあるかい!」と、まったく食指が動かなかったのですが、先日、友人と会うために新大久保に行ったところ、自分でも意外なほどに興奮。「ほぼ韓国やんけ!」と久々に海外旅行気分を味わったのであります。
 新大久保がコリアンタウンとして広く知れ渡るようになったのは、かれこれ20年ほど前でしょうか。2002年の日韓ワールドカップや『冬のソナタ』といった韓流ブームがきっかけだったようです。過去に書いたコラムをひっくり返してみたところ、私自身も2002年の夏に、今はなき『TOKYO1週間』で連載していた『西山繭子の東京an-kin-tan』で新大久保のディープなネットカフェを訪れていました。当時、24歳。他のコラムでは同年代の女優さんがお気に入りスイーツや雑貨を紹介しているなか、私は編集者さんと毎月東京のあらゆる辺鄙な場所を回っていました。もう当時から今の人生の片鱗が見えていたのですね。ちなみに初めての連載コラムは1999年にアイドル雑誌『B.L.T』でスタートした『二段ベッドの女王』です。コラムを書いて23年。継続は力なりをこれほど感じないとは自分でも驚きです。さ、気を取り直して話を戻します。当日は、待ち合わせの時間よりも1時間ほど早く新大久保駅に到着。すると駅前は、これから巨人戦が行われるのかと見まごうほどの人出。楽し気な若者で溢れ返っていました。ここ最近のK-POP旋風は、流行に疎い私でも知ってはいるのですが、如何せんNiziUが全員日本人だと知って驚いたぐらいのレベルなのでほぼわかっていないと言っても過言ではありません。そしてBTSに片岡愛之助さんが1人まざっていると信じてやみません。そのK-POP人気は、音楽のみならずカルチャーにまで。特に男の子たちへの浸透がすごいなあと思います。以前友人に「最近のK-POP風メイクをしている男の子たちってどう思う?」と訊かれて「うーん…おかま?」と答えたところ「それは差別用語だし、多様性の時代に何を言っているのか!」とこっぴどく叱られました。物を書く人間として気をつけなければいけませんね。メイクに関しては、私も一時期、韓国コスメを使っていた時代があります。BBクリームとかシートパックとか。韓国の女性は肌が綺麗ということで、これらは大人気でありますが、実際のところ、それは概ねキムチの力なのではと私は思っています。毎年冬になると自分でキムチを漬けたいなと思うのですが、我が家には白菜をまるごと漬けるほどのスペースがありません。いつか田舎暮しをしたら、ぜひともキムチ作りに挑戦したい。それまでは市販のもので我慢ということで、この日もソウル市場でキムチ、そしてエゴマの葉の醤油漬けを購入しました。とは言いつつも気になる韓国コスメ。最近のものはどんな感じなのかと店を覗いてみたところ、あまりの種類の多さと横文字にちんぷんかんぷん。どこにどうやって使うものなのかもわかりません。メイク落としといえば母の鏡台にあったPOND’Sコールドクリームしかないと思っていた幼き時代が懐かしいです。その日は、ちょうど口紅をつけ忘れて家を出てしまったので、サンプルを少しばかり試させてもらいました。あら、可愛い色。いいじゃない。と鏡を見ていたところ、そのあとにやって来た女の子たちが「あーこれ、この前インスタで見たやつぅ」と言って、それを頬につけていました。チークだったのか…。でも、もう何でもいいです。色がつけば何でも。そんなチークを唇につけた私が向かった先は、韓国式合鴨専門店『サムスンネ』。これまで韓国料理に鴨というイメージがまったくなかったので、その新鮮さと美味しさに感動。まだまだ知らない美味があることに大きな喜びを憶えました。写真は2003年に訪れたソウルでの1枚。汗蒸幕終わりで、どすっぴんだというのに見られないこともない。しかし隣にいるアジュンマの肌艶を見ると、やはりキムチの力は偉大であります。

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website