https: 祝200回│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#200

祝200回

2022-08-08 22:24:00

 2014年4月に始めたこの連載、今回でなんと200回目です。ここまで一度も原稿を落とすことなくやって来られたのは、ひとえに私の気の小ささのおかげでありましょう。担当の方に怒られたくないという、もうその一心。200回のうち、半分ぐらいは「今回こそ何も書くことがない!」と頭を抱えていましたが、結局のところ書けてしまう。なぜなら、そこに〆切があるから。ありがとう、〆切。あなたは普段、敵のように見えるけれど、あなたがいなければ私は何も書かない人になってしまう。ありがとう、〆切。そして、これからもよろしく。
 それにしても女子力を向上させようという目的で始めたこのコラム、最初こそ、その目的に沿った文章を書いていたのですが、そのうち「女子力って言葉を1回でも入れれば良いか」となり、気づけば今ではそれすら無くなりました。まさに『女子力って何ですか?』です。連載を始めた当初は36歳。まだまだ女子力向上の余地もありましたし、恋愛も結婚も諦めてはいませんでした。いや、今でも諦めてはいないのだけど、かなり奇跡に近い。私がミュージカル『アニー』でウォーバックスをやるぐらい奇跡に近い。アニーはいけるかもしれない。今は女子力を高めることよりも忍び寄る更年期障害にどう立ち向かうかの方が気になって仕方がありません。実際になってみなくてはわからないことばかりでしょうが、心の準備をしておきたいので色んな文献を読んで勉強しています。早いと思われそうですが、私は老人ホームのパンフレットまで眺めていますから。何と言っても独り身。優しい甥っ子が3人もいるけれど、絶対に迷惑はかけたくないなと思います。あ、こんなことを書いたら、このコラムを読んでいる母が誤解しそうだわ。お母さんは、私に迷惑をかけて大丈夫です。女手一つで一生懸命育てていただきましたから。しかし、この8年間という歳月、多くの女性が結婚、出産、育児という大きな変化を経験したこの時間に、私は何をやっていたのかと言えば、本当に何もしていない。今、自分で書いて震えています。女優として大きな仕事をしたわけでもなく、作家として大作を書いたわけでもなく、人間として社会に貢献できたわけでもない。ナイナイシックスティーンにもほどがある。探すのが面倒だからという理由でずっと同じ部屋に住んでいるし、今着ている家着は2008年の斎藤和義さんのツアTだし、ほうじ茶が入ったマグカップは小4の時に買ってもらったものだし、本当に何をしているんだ私は。このままいくとツアTもマグカップも老人ホームに持って行くことになりそうだわ。変化といえば会社で働き始めたことぐらいなのですが、それによってもちろん生活は変わりましたが、私自身は変わっていないように思います。それどころか会社というシステムの中で色んな人と出逢い、様々な事象を見ることで、もともとあった西山繭子の核みたいなものがさらにブレなくなりました。自分が大切にしているものが明確になったというか、人の振り見て我が振り直せではないけれど、みっともない人間にはなりたくないなと。何だか格闘家のインタビュー記事みたいになってきちゃった。200回目だから、皆さんに喜んでもらえるような何か特別なことを書きたいのだけどなあ。うーん、何かあるかしら。あ、先週ブラジリアンワックスをしたばかりなので、今、ツルツルです。いや、これは誰も得をしないネタだな。むしろセクハラで訴えられる。うん、やはりいつも通りが一番ね。このコラム、自分では大層なことを書いているつもりはありませんが、いただくお手紙に「励みになりました」とか「考えさせられました」などと綴ってあると「日高屋でごちそうしてあげる」という友人の誘いを断ってまで直帰し原稿を書いて良かったなと思います。このコロナ禍は、なかなか遊びに行くことできずネタに苦労した2年半でしたが、おかげで日常を注意深く見つめるようになった時間でもありました。ドラマはいつだって日常の中にある。いや、嘘。そんなにない。そんなにないけれど、ドラマとして捉えられるかが大切。これからも皆さんに楽しんでいただけるよう、職質を受けるぐらいキョロキョロと日常を眺めて面白いドラマを探していきたいと思います。写真はできもしないサーフィンに挑戦して、むりやり夏を満喫している私です。

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2022.8.8 配信

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website