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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#207

2022-11-28 11:19:00

 いつの間にかW杯が始まっていました。そして日本がドイツに勝利。個人的にはその勝利よりも、5年以上連絡をとっていなかったドイツ人の友だちからWhat’s App に一言「おめでとう」というメッセージが届いたことに驚きました。ダンケシェーン、ニコラス。その後のコスタリカ戦には敗北。何が起こるかわからないのがW杯であります。日本代表が初出場した98年フランス大会を現地で応援してから、ほぼ四半世紀。時代はものすごいスピードで変わっています。当時、20歳の私がバゲットを買うために握りしめていたフランはユーロになり、リコンファームが必要な数枚綴りの航空券はeチケットになり、寂しさのあまり何度も使って「高いからもうかけないで」と母に言われたコレクトコールは今ではありません。その変わりゆくものの最たるものといえば、やはり己の容姿で、24年という歳月はあまりにも大きい。先日、出演中のドラマ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』の番宣で、主演の松村沙友里ちゃんと並んでコメントをしている動画を見たところ、自分の顔の大きさに卒倒しそうになりました。もともと小顔な方ではないけれど、ここ数年輪郭がどんどんごつくなっている私、さゆりんと並んだ姿はもはやドラクエのばくだん岩でした。撮影中も、彼女を眺めながら「こんなに可愛ければ生きているだけで楽しいだろうなあ」と母親役を演じていました。ちなみに彼女との実年齢差は14なのですが、しっかり親子に見えていたのは、さゆりんがピチピチだからでしょうか。こういった芝居上での実年齢差の話になると、いつも思い出すのは『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』で12歳差にも関わらず親子を演じたショーン・コネリーとハリソン・フォード。撮影現場で「干支、一緒だね」なんて話はしなかったと思いますが、ともに午年の二人。そういえば先日、ショーン・コネリーが66歳の時に出演した『ザ・ロック』を観ましたが、格好良すぎて悶絶しました。さすが初代ジェームス・ボンド。一度、パリで見かけたことがありますが、めちゃめちゃ大きかったです。話は戻って、可愛いさゆりんとばくだん岩の私。乃木坂ファンの20代男子に「いいなー!羨ましいっす!さゆりん、可愛かったですか?」と訊かれ「私の方が可愛かった」と答えても、まったく信じてもらえませんでした。今月は出演したドラマが何本か放送されていたので、こんな風にまわりから声をかけられることが多かったのですが『クロサギ』に関しては、自分の想像以上に知人が興奮しており、改めてKing&Prince、そして平野紫耀さんの人気の凄さを知るところとなりました。実際に一緒に仕事をしてみて、彼の礼儀正しさと芝居に対する真摯な姿には、感心するばかりでした。撮影現場では20年ぶりに一緒に仕事をするスタッフの方がいたりと、私にとって、とても糧となる仕事だったなと思います。
 糧になる。ああ、素敵な言葉。ここ最近、きちんと糧になることが出来ているかなと考えることがあります。いわゆる『生活の糧』というものは、仕事を4つしているぶん間に合っているのですが、その代償として『心の糧』を得る時間がないのが悩みの種。週1回通っているフランス語の授業にしても、予習復習をする時間がなくて授業に出ているだけという状態。先日なんて授業中にお気に入りのカレー屋の話をしていた際に「その店のカレーは4種類あります。チキン、ビーフ、ポーク、ネクタイです」と言って、先生に「ネクタイ?」と怪訝な顔をされました。「crevette海老」と「cravateネクタイ」を間違えたのですが、ネクタイが入っているカレーなんて考えただけでツラい。もちろん寝る間を惜しんで勉強すれば良いのでしょうが、今現在何よりも大切にしたいのは睡眠。ここ最近、メニエール病で眩暈くらくら、耳鳴りぐわんぐわんが続いています。なので倒れないためにも、せめて睡眠時間は確保したい。それなのに深夜に何度も着信があって、何事かと電話に出てみれば父に「経理が電話に出ないなんて、どういうことだ!お前はまったく仕事をしていない!」と怒鳴られる始末。世の中では、経理が深夜の電話に出るのは当然のことなのだろうかと疑問に思いながら、まあこんなことが続くのであれば父からは身を引こうと胸に誓う今日この頃であります。大切にするべきは自分なのだから。あと少しで2022年も終わり。穏やかにいられるよう「そまらない」「うけとめない」「まきこまれない」を心がけて忙しい師走を過ごしたいと思います。写真は『健康の糧』です。この冬も手が黄色くなるまで食べまくって風邪知らずの身体でいられたらと思います。

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2022.11.28 配信

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website