https: バイバイ2022年│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#209

バイバイ2022年

2022-12-26 01:05:00

 年の瀬、大荷物を抱えて渋谷でタクシーに乗った時のことです。交差点で信号待ちをしていると、運転手さんが「お客さん!見て!井上順がいるよ!」と興奮したようにフロントガラスの向こうを指差しました。そこにはトレンチコートを纏い、颯爽と歩く井上順さんの姿が。「うわー!本当だ!かっこいいですねー!」「私はグループ・サウンズの頃から知ってますからねえ」「私は井上順さんといえば、新春かくし芸のインディ・ジョーンズですね」ひとしきり盛り上がる私たち。その夜、ご本人のSNSを覗いてみると更新毎に繰り広げられるダジャレにほっこり。私もあんな風にみんなを笑顔にできる人間でありたい。今年は無理だったけれど、来年こそは。というわけで、新年を迎えるその前に「女子力って何ですか?」年末の風物詩となりました2022年の振り返りをしてみたいと思います。
 1月、2022年初のイベントは『志の輔らくご』。生まれて初めての落語が立川志の輔さん、しかも前から2列目という良席で、ずいぶんと恵まれた初体験。こんなに面白い世界を知らなかったなんて!と衝撃を受ける。2023年の『志の輔らくご』も無事にチケットを手に入れることができ、今からすこぶる楽しみ。しかし今回の席は後ろから2列目。世の中、よくできている。2月、乳がん検診にひっかかり、しばし通院。結果的に何事もなかったけれど改めて人生について考える良い機会になった。そこでわかったのは、私はこれまでの人生にわりかし満足しているということ。もちろんまだまだやりたいことはあるけれど、これで終わりと言われれば、それはそれで良し。そんな感じ。3月、やたらと洋服を買う。ちょっと素敵だなと思う男性が現れた時の私の悪癖。1回目のデートはこれで、次のデートはこれで。と、タガが外れたように買う。しかし連絡先さえ知らない彼とデートなどできるはずもなく、いまだ値札がついたままの服がクローゼットに眠っている。4月、ちよだ文学賞に応募する小説をせっせと書く。苦しい。苦しいけど楽しい。その昔、先輩作家さんに「小説は毎日書かないと、あっという間に書き方を忘れる」と言われたことを思い出す。まさにその通り。ゼロからのスタート。5月、久しぶりに髪の毛を短くする。私が髪の毛を切る時は、何かうまくいかないなあという時。心機一転、気持ちが晴れやかになった途端、ドラマ『元彼の遺言状』のお仕事をいただく。スピリチュアルには興味がないけれど、運気を呼び込む流れというものは確実にある。そして綾瀬はるかさんの美しさを目の当たりにして、「あたしも綺麗になりたい!」とPAOを買う。口に咥えてぶんぶん振る。6月、仕事でアメリカに行く姉に、レシピ本『スヌープドッグのお料理教室』で紹介されていた調味料を買って来てもらうものの、まったく使いこなせない。そもそもスヌープのレシピは一人暮らしをする日本人女性には向かない。仕事では『石子と羽男』の撮影。現場でエレベーターに乗る際、有村架純ちゃんが「西山さん、お先にどうぞ」と笑顔で気を遣ってくれる。日本アカデミー最優秀主演女優賞もとっているあの有村架純が気を遣ってくれるって、すごいな私!と誇らしい気持ちになる。いや、架純ちゃんが良い子なだけか。7月、何はともあれコロナ。病院で「本当にどこで感染したのか…」と首を傾げてみたものの、心当たりありまくり。手洗い、消毒、パーテーション。どんなに気をつけていても会食で一発アウト。そして日常生活に支障をきたすほどではないけれど、いわゆる記憶障害という後遺症を今なお感じていて、ちょっとツラい。8月、父の事務所の仕事の手伝いを始めてからというもの働きづめ。『推しが武道館いってくれたら死ぬ』の撮影の時も、昼休中にはパソコンで請求書を作る。貧乏暇なしとは、まさにこのこと。9月、横浜スタジアムで見たTUBEのコンサートが素晴らしすぎて、前田さんのことしか考えられなくなる。父が前田さんの曲を作詞していたことを知り、激しく嫉妬。10月、夏は終わったけれど耳に流れる音楽はいつだってTUBE。『クロサギ』の撮影現場に向かう時もTUBE。『ガラスのメモリーズ』を聴きすぎて切なさに包まれる秋。11月、ヘビロテが『ツキヨミ』に変わる。サビのダンスを私も踊ってみたいと思いYouTubeショートの平野紫耀さんの動画を繰り返し見る。しかし「愛はいらない♪」のところを覚えるだけで1日かかる。これではすべてを覚える頃には還暦を迎えてしまう。12月、相変わらずの働きづめ。そんな中、ヘアメイクさんの誘いで味噌作りに挑戦。今、原稿を書いている傍らでも容器の中では味噌が発酵中。完成するのは1年後とのこと。ここ最近、働いてばかりで何のために生きているのか自問自答の日々だったけれど、今は違う。自分の味噌を食べるという新たな目標が、私に生きる希望を与えてくれた。ありがとう、手前味噌!
 皆さんはどんな2022年でしたか?「女子力って何ですか?」来年も、どうぞよろしくお願いいたします!

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2022.12.26 配信

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website