https: 広島じゃけん│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#218

広島じゃけん

2023-05-08 11:23:00

 ごきげんよう。みなさま、楽しい連休を過ごされましたか?今年は3年ぶりとなる行動制限なしの大型連休ということで、その解放感からか多くの人が羽を伸ばしていたのではないでしょうか。私はといえば、勤めている会社が土日祝日もフル稼働なので、ひたすら仕事をしておりました。若い子などは「みんなが休んでいる時に働きたくなーい」と愚痴ったりしていましたが、私はむしろ有難い。家族12人のハワイ旅行の旅費が1200万円だったなどというニュースを見ると、つくづく仕事があって良かったなと思いました。休みはオフシーズンに限ります。ということでGWに突入する前に、片道6600円のJALスマイルキャンペーンを使ってびゅんと日帰り国内旅行をしてきました。
 昨年札幌へ行き(第196回『どこかのマイル』参照)、日帰り旅行の魅力を知った私。今回はずっと行ってみたかった広島に行くことにしました。朝いちばんの飛行機は、なんと『JAL DREAM EXPRESS Disney100』という特別塗装機。ディズニーにさして興味のない私ですが、何だか得した気分です。座席のヘッドレストはミニーちゃんで、頼んだコーヒーはアリエルの紙コップ。何とも女子力高めなフライトであります。広島空港はアクセスが悪いと聞きますが、片道6600円で行くことができるのならば何のその。到着後はリムジンバスに乗って市内を目指します。どこの街でも空港から市内への道というのは「はじめまして」のワクワク感が強く大好きです。ひたすら車窓を眺めます。雨に濡れた新緑がとても美しい。そして、そろそろ目的地の広島バスセンターに着く頃かという時、窓の向こうにちらりとあの丸い屋根が見えました。一瞬にして胸がざわつきます。ずっと見たかった、いや、見に来なければいけないと思っていたもの。これまでアウシュビッツやオラドゥール・シュル・グラヌを見てきたのに、ヒロシマを訪れていないなんてとずっと胸にひっかかっていました。バスを降り、雨の中を足早に向かいます。ああ、あった。原爆ドームは1945年8月6日午前8時15分から時をとめたまま静かにたたずんでいました。一瞬にして街を焼け野原にし、多くの人の希望を奪ったあの瞬間から、原爆ドームはずっと世界を見てきました。街の復興も、人々が取り戻した笑顔も。そしていまだ核を廃絶することができない世界も。これほどまでに邪悪なものをいまだ廃絶できないことが私には不思議で仕方ありません。みんなで持たない。ただそれだけなのに。きっと世界中のほとんどの人がそう思っているはず。それなのにいまだ1万発以上の核兵器が地球上に存在するのは、一部の偉い人たちが愚かな選択をしてしまうから。原爆ドームのある元安川沿いの歩道には、つつじが色鮮やかに咲いていました。そこを行き交う観光客はみな記念写真を撮りながらも神妙な面持ちをしています。今回、ここを訪れて驚いたのは外国人観光客の多さです。インバウンドが復活しつつあるとはいえ、平和記念資料館などは8割が外国人といった様子で、その人種も様々。寄港地になっているのか、クルーズ船の団体客も目にしました。原爆の悲惨さを伝える展示物の前で、たくさんの人が厳しい表情を浮かべていました。焼けただれた子どもの洋服の前で、涙をぬぐう外国人女性もいました。ここを訪れた人は皆、核兵器の恐ろしさについて、そして平和について考えます。大切なのは無関心にならないこと。行動に起こせなくてもいい。まずは知って考えること。平和資料記念館で改めてそんなことを思いました。今後行く機会がある方は、ここから近い袋町小学校平和資料館もぜひ行ってみて下さい。小さいながらも、当時の空気をさらに感じることができる心に響く資料館でした。
 『広島アンデルセン』で一休みしたあとはひろしま美術館へ。ここの所蔵作品の豪華さはずっと気になっていたのですが、実際に目にするとまあすごいのなんのって。ドラクロワ、ゴッホ、シャガールがぽんぽんとあるのですから。東京で見逃した『ピカソ 青の時代を超えて』が観られたのもラッキーでした。そのあとは路面電車に乗って広島駅へと向かいます。一度乗ってみたかった市電に揺られながら「胡町…こちょう?えびすまち!読めん!銀山町…、ぎんざんちょう?かなやままち!これも読めん!」と唸ります。地元民じゃない人間にとって、地名はとても難しい。そして東京に戻る前に、広島駅に隣接されたekieという商業ビルに行こうと考えていたのですが、着いてみると何か様子がおかしい。閉館中?でも館内で人が慌ただしく動いているなあ。「あのー」入り口の方に尋ねます。すると「施設内で不審物が見つかったため、現在全員退避しております!」という答えが。「え?訓練ですか?」「違います!」ひえー。G7サミットに向けて厳戒態勢の広島、仕方がないとは言えekieでお好み焼きを食べて、もみじ饅頭を買おうと思っていた私はガッカリです。次回の旅でリベンジですかね。写真は袋町小学校でボランティアの方にいただいた折り鶴です。

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2023.5.7 配信

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website