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ドーナツ
2023-11-12 21:01:00
クリスピー・クリーム・ドーナツ渋谷店が好きです。朝8時からやっていること、比較的静かなこと、そして店員の皆さんがとても感じが良いこと。TOHOシネマ渋谷で映画を観る時は、だいたいセットになります。頻繁に利用しているため、会員ランクがいつの間にかゴールドになっていました。今でもたくさんのクーポンを貰えますが、せっかくなので是非とも最高ランクのプラチナを目指したい。そこからの景色を見てみたい。しかしながら、そのためにはあと20個ぐらいドーナツを食べなくてはいけないので、カロリーとの闘いになります。そんな私の憩いの場所、クリスピー・クリーム・ドーナツ渋谷店に、その日も出勤前の時間を過ごそうと向かいました。しかし店に入った瞬間、目に飛び込んできたのは平和な店内に似つかわしくない輩。泥酔をした60代男性が、ファスナー全開でふらつきながらブツブツと独り言をつぶやいていました。完全なる危険人物。私は、やや距離を置きながらも、それでもドーナツは食べたいので平然とカウンターに並びます。ややすると、その酔っ払いはそのままヨレヨレとドーナツが並んだショーケースの前に寝そべってしまいました。店員さんは別の客の対応をしっかりしつつも困り顔。可愛い女の子がワンオペ勤務。おばさんは心配であります。私の番になり「いらっしゃいませ!おはようございます!」と笑顔で対応してくれた彼女に「警察呼んだ方が良いですよ。私、呼びましょうか?」と声をかけました。彼女は「ありがとうございます。申し訳ございません。ちょっと失礼いたします」と言って、どこかに電話。しばらくしてから来たのはビルの警備員のおじさんでした。ああ、そういうマニュアルなのね。しかしながら、明らかにやる気のない警備員のおじさんも酔っ払いを遠巻きに見て「いやー、困ったなあ」と大声で言うだけという始末。そのあとも店員の女の子に「お客さんが並ぶ動線を変えたら?」という的外れな提案をしてワンオペの彼女の仕事増やしたり、待てど暮らせど解決の気配なし。そのうちビルの警備員がもう1人増え、2人で「いやー、困ったなあ」とポリポリ。まったくもう!しびれを切らした私は、警備員さんにつかつかと歩み寄りました。そして「あの、警察呼んだ方が良いと思いますよ」とやや不満気に言うと「もう呼んでますよ!」と向こうも必死。「本当に?私、もうこの状態を30分以上見ていますよ」「呼んだのに来ないんですよ!」なぁーーにぃーー!?その瞬間、私の怒りの矛先は警察に。夏の思い出がフラッシュバック(第227回『感謝状』参照)。結局1時間近くしてからやっと警察が来て、寝転がっていたおじさんを起こし、外に出してくれました。あーあ、せっかく早く家を出て、ゆっくり過ごそうと思っていたのに、朝から気分台無し。そう思いながら冷めたコーヒーをすすっていると、店員の女の子が私のところに来て「ご迷惑おかけして大変申し訳ございませんでした!」と頭を下げたのです。なんということでしょう!「そんなそんな!お姉さんが一番迷惑をかけられたのに!」「いえ!とんでもないです!本当に、ご迷惑おかけいたしました!」深々と頭を下げるお姉さんの姿に、私は、胸を打たれて泣きそうになりました。ああ、なんて良い子なのでしょう。彼女の親御さんにお会いしたい。本当に立派なお嬢さんですね!と伝えたい。こんな素敵な店員さんがいるクリスピー・クリーム・ドーナツ渋谷店、これからもぜひ通い続けたいと思います。そういえばこの前、福岡に行った際にものすごい行列ができていたお店があり、気になって並んでいた子に尋ねたところ『I’m donut?』というドーナツ屋さんでした。中目黒のお店だと思いきや、福岡発祥とのこと。知らんやったバイ。そういえば、数年前に見た『ドーナツキング』というドキュメンタリーも面白かったなあ。難民としてカンボジアからアメリカにやってきた男が大富豪となり、そして彼に続くカンボジア系アメリカ人たちがカリフォルニアの90%のドーナツ屋を経営しているという興味深い物語でした。アメリカでは警察官はドーナツを無料で食べられるとも聞いたことがありますし、きってもきれない関係ですよね。ああ、書いていたらまた食べたくなってきちゃいました。あれ?私、今回こそは「ぜひヒースロー空港に到着したい」と言っていたのに、ドーナツの話でほぼほぼ原稿を使ってしまいました。次回こそは絶対にロンドン旅行記を!写真はクリスピー・クリーム・ドーナツがセサミストリートとコラボしていた時に食べたエルモです。
2023.11.13 配信
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。
オフィシャルサイト→FLaMme official website