https: 函館の女│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#238

函館の女

2024-03-11 09:45:00

 大谷くん結婚のニュースを観て、甥っ子3号(小4)がつぶやきました。「結婚したの、まーたんだったりして…」すると甥っ子2号(小6)が言いました。「でも、まーたんは一般女性じゃないからなあ」そこに甥っ子1号(高1)がやって来ました。「お前ら、バカじゃねえの?まーたん、すげえおばさんだぞ。あるわけないだろ」独り身の私、もし自分が死んだら、遺産は甥っ子たちにと思っています。そして3人が揉めないように、分けるパーセンテージをきちんと遺言に書き残そうと思っています。今現在、その割合は3号に49%、2号に49%、1号に2%です。おい1号、頑張って挽回しろよ。それにひきかえ、3号の私に対する評価の高さよ!愛おしくてたまりません。でもごめんね。大谷くんの相手、まーたんじゃないのよ。大谷くんは、昨年のWBCで東京ドームの二階内野席から見ただけ。あの時、大谷くんが投げるたびに気合の声をあげていて、一緒に行った友人に「ねえ、目つぶって大谷くんの声を聞いてみて。ちょっといやらしい妄想ができるから」と言って呆れられました。まったくもう、スーパースターの大谷くんに失礼極まりない。そんな人が大谷くんと結婚できるはずがないのです。
 そんな失礼な人は先日、ぷらりと函館へ遊びに行って来ました。函館と耳にしただけで「は~るばるきたぜ、函館へ~」と瞬時に歌が浮かぶのは昭和の証。北島三郎先生は偉大であります。函館を訪れるのは、約20年ぶり。その時はドラマの撮影だったため、観光をする余裕もなく、思い出といえば共演の東幹久と旅館で卓球をしたことぐらいでしょうか。ということで、朝いちばんの飛行機で到着すると、まずは五稜郭へ。私のなかでの五稜郭といえば、1988年の年末時代劇スペシャルです。五稜郭が何であるかは知らないけれど、延々と繰り返されるドラマの宣伝と、その響きの強さも相まって、すごいものなのであろうと子どもながらに思っていました。死角を作らないためにその形となった星形の要塞。ここは、やはり上から見るべしと五稜郭タワーに登りました。わくわくしながら地上90mに位置する展望室から真下を見下ろすと…、真っ白でほとんど見えない。そうなのです。この日は、あいにくの雪。雪というか、東京っ子の私からすると猛吹雪です。北海道の雪を侮って、ローカットスニーカーで来てしまった自分を呪いました。上から見る五稜郭を楽しむことはできませんでしたが、展示スペース五稜郭歴史回廊はとても勉強になりました。「え!土方歳三って函館で死んだの!?」己の日本史知識の低さは自負しております。興味があるのは弥生時代までと明治維新以降で、小学館版漫画『日本の歴史』でいうと2~12巻はすっ飛ばしており、それってもう日本の歴史のほとんどなわけですよ。どうしたら好きになれるのかな。これは今後の課題でもあります。お昼はタワー目の前にある『あじさい』本店へ。当初は『ラッキーピエロ』の予定だったのですが、この寒さで心は完全にラーメンに傾きました。特製塩拉麺がくるまでは生ビールと、ここは餃子ではなくザンギです。実は、ザンギを食べるのもこれが初めて。桜木紫乃さんの小説『起終点駅』で初めてその名を知り、いつか食べたいと思っていました。昼ビール、揚げたてのザンギ。そして窓の外は雪。ああ、幸せだあ。このあとは、雪のなかを歩いて六花亭へ。ここは喫茶室が併設されているので、北海道でしか食べることのできないマルセイアイスサンドをいただきました。壁一面の大きなガラス張りの向こうには、雪の五稜郭公園が広がっており、美しい日本画のよう。JALのタイムセールで航空券を手に入れて本当に良かった。心もおなかもいっぱいで、いったんホテルにチェックイン。そして昼寝。夕方ぐらいになって「もうこのままホテルでごろごろしようかなあ」という自堕落な自分に喝を入れて、夜景を観に函館山へ。日の入りの時間に合わせて行ったのですが、山頂展望台は極寒な上にものすごい混雑だったため、ほんのり夜景になったぐらいで下山しました。それからお寿司を食べに行き、イカの美味しさに悶絶。ただ、ここではお酒は控えました。なぜなら道が本当に滑るから。これまでの人生で酔って転んだこと数知れず。もし私が函館で暮らしていたら、この歳まで生きていなかったのではと思います。スケートリンクのように凍った雪道を、何度も「ひゃっ!」となりながらペンギン歩きでホテルに戻りました。そして15階にある天空露天風呂へ。温かい湯につかりながら夜空を見上げれば、はらはらと雪が舞い落ちてきます。それがほてった頬を撫でる気持ち良さ。ああ、本当に幸せ。「幸せすぎて大谷くんと結婚したみたいだなあ!」まわりに誰もいなかったので、声に出して言ってみました。すると愉快な気分になり、さらに幸せになりました。生きていると色んなことがありますが、自分で自分を幸せにできるって無敵だなあと思います。そんなことを思った函館の夜でした。

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2024.3.11 配信

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西山繭子さんのINFORMATION

Writer

西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website